8 / 64
7《レイの思惑》
獣人族の長 ラウの弟、Ω性のレイ。
ラウとは二歳差の18才。
ラウの小屋のすぐ近くに専用の小屋を建てて暮らしている。
産まれた時から傍には兄様がいて、いつも助けてくれた。けれど、最近はあまり話も聞いてくれない…。
「兄様の毛…」
毛を弦 で束ねて作った装飾品。
それを見つめながら考える。
人間…あんなか弱い生き物…、殺すのは簡単。
でも、兄様はそれを許さない、僕は兄様に嫌われたくないから、それは我慢してる、けど、いつまでも群 に人間が居たら、群 の威厳がなくなる。
だから人間が、自ら群 を出て行く様に仕向ける、優しい兄様ができないから、僕がやらなきゃ…。
兄様のために。
「レイ?最近は人間を好きにさせているみたいだけどいいのか?」
そこへ、獣人のβが顔を覗かせる。
「うん、勝手にさせとけばいいさ、どうせ発情期になれば子を孕 んで出て行くから」
「前の時みたいに?」
「しっ、その話はするなよ、兄様の耳に入ったら…、いいからお前は夏までに、フリーのはぐれαをちゃんと見つけて恩を売っておけよ」
「あの赤毛髪に似合う不細工なやつを?」
「ふ、なんでもいいから、ちゃんと仕事しろよ」
「じゃ俺にもご褒美忘れるなよ…」
「分かってる、ちゃんとセッティングできたら、兄様の次に」
「あぁ、まかせろ、じゃな」
そう頷いて出て行く獣人。
「……」
夏までには手筈 は整う。
人間をこの村から追い出すために…
今回も上手くいく。
それにしてもアイツ、群 の一員として認めろとか、人間のくせに何を言っているんだ。
どんなにルールを守ろうと、獣人の世界で人間が獣人と対等に過ごせると思う方が間違いだ…
他の群 なら鎖に繋いで自由を束縛されている筈。
兄様は優しすぎるから…
けど、それもあと少し、夏の発情期がくれば…
せいぜい、残りの自由な生活を満喫すればいいさ。
だけど、今回の人間は、兄様に近づき過ぎてる、兄様の毛を持っていたり…許せない。
それは、はっきりさせないと、兄様は誰のものか…。
ともだちにシェアしよう!