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7《レイの思惑》

獣人族の(おさ)ラウの弟、Ω性のレイ。 ラウとは二歳差の18才。 ラウの小屋のすぐ近くに専用の小屋を建てて暮らしている。 産まれた時から傍には兄様がいて、いつも助けてくれた。けれど、最近はあまり話も聞いてくれない…。 「兄様の毛…」 毛を(つる)で束ねて作った装飾品。 それを見つめながら考える。 人間…あんなか弱い生き物…、殺すのは簡単。 でも、兄様はそれを許さない、僕は兄様に嫌われたくないから、それは我慢してる、けど、いつまでも(むれ)に人間が居たら、(むれ)の威厳がなくなる。 だから人間が、自ら(むれ)を出て行く様に仕向ける、優しい兄様ができないから、僕がやらなきゃ…。 兄様のために。 「レイ?最近は人間を好きにさせているみたいだけどいいのか?」 そこへ、獣人のβが顔を覗かせる。 「うん、勝手にさせとけばいいさ、どうせ発情期になれば子を(はら)んで出て行くから」 「前の時みたいに?」 「しっ、その話はするなよ、兄様の耳に入ったら…、いいからお前は夏までに、フリーのはぐれαをちゃんと見つけて恩を売っておけよ」 「あの赤毛髪に似合う不細工なやつを?」 「ふ、なんでもいいから、ちゃんと仕事しろよ」 「じゃ俺にもご褒美忘れるなよ…」 「分かってる、ちゃんとセッティングできたら、兄様の次に」 「あぁ、まかせろ、じゃな」 そう頷いて出て行く獣人。 「……」 夏までには手筈(てはず)は整う。 人間をこの村から追い出すために… 今回も上手くいく。 それにしてもアイツ、(むれ)の一員として認めろとか、人間のくせに何を言っているんだ。 どんなにルールを守ろうと、獣人の世界で人間が獣人と対等に過ごせると思う方が間違いだ… 他の(むれ)なら鎖に繋いで自由を束縛されている筈。 兄様は優しすぎるから… けど、それもあと少し、夏の発情期がくれば… せいぜい、残りの自由な生活を満喫すればいいさ。 だけど、今回の人間は、兄様に近づき過ぎてる、兄様の毛を持っていたり…許せない。 それは、はっきりさせないと、兄様は誰のものか…。

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