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16《甘い罠》

そして数週間が過ぎ、初夏の陽気が森に満ちる頃。 アサトとシィは少しずつ(むれ)に溶け込み始めていた。 もうすぐ二回目の発情期がくる、いつ来ても対応できるように、食料と嗅覚を狂わせるという刺激草を刈り取って集め、小屋に貯めている。 そんな時、珍しくレイに呼び止められた。 「お前にいいものを見せてやるよ」 「え?いいもの?」 「今日の夕方、気になるなら西の洞窟に来てみたらいいよ」 「わかった」 何のことか分からないけれど、レイと話せるなら… 少しでもレイとコミュニケーションをとって仲良くなりたいと思っていたアサトは迷わず頷く。 その日の夕方、レイはラウの小屋の下にいた。 狩を終え木の上の小屋の中にいるラウに向かい下から話しかける。 「兄様、ラスが狩の方法について話があるみたいです、夕方西の洞窟で待ってるって」 「そうか、わかった、行くと伝えておいてくれ」 「はい、兄様…」 ラウの言葉を聞き、応えながら不敵に笑うレイ。 それから一時、 ラウはラスがいるといわれた洞窟に入っていく。 ラスはうちの(むれ)のαの中でも若い獣人だ。 (おさ)になる前はこの洞窟でよく酒を飲みながら話し合っていた。 「ラス?」 そう呼びかけるが… 「兄様っ!」 返事をしたのはレイだった。 「レイ、ラスは?…ッ、レイ!?お前発情しているのか…ッラスは?お前嘘を?」 そこにいたのはラスではなく、レイ一人だけ。 発情期特有のふんわりと甘い香りが鼻をかすめる。 慌てて匂いを嗅がないよう鼻を抑え、顔を背けながら問いただす。 「だって、兄様、普通に誘っても最近は来てくださらないでしょ、僕は兄様に心も身体も捧げています、兄様のこと、愛しています」 「ッ、レイ…ハァ、」 「だから、好きに抱いてください、いつでも、ここに歯痕を残してください」 自分の首筋の毛を分け、誘うようにフェロモン腺を見せながら擦り寄る。 「ハァ、ハァ…来るな!もう、お前とは…ッ」 「ハァ、大丈夫です、兄様…我慢しないで」 レイもまたαの熱に充てられ、息をあげながら、誘うようにラウの顔を舐める。 「レイ…よせッ」 引き離そうと試みるが、心とは裏腹に…身体はレイを求めて熱くなる。 「兄様、僕らは求め合うようにできているんだから…お願い、兄様…」 Ωの発情フェロモンは強力… 意識とは別に本能がレイを求めて猛りを抑えられない。 「ッ!」 甘いフェロモンに惑わされ、内側から溢れる躍動に、呼吸は上がり、白銀の美しい毛並みの弟を押し倒し、本能のまま、欲を貪りはじめるのだった…。

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