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22《オレじゃなくても》
今日は配給所には行かずラウにもらった干し肉と途中で採った木の実を二人で分けて夕飯に食べる。
食後、明るい間に刺激草を並べて干す準備をする。この茎や葉を潰すと、刺激臭がするらしい。
試しに1本茎を折ってみる。
「ゔっ!!これは、げほっごほ!!」
鼻を通り越して脳にがつんとくるような凄まじい刺激臭に、思わず咽 せてしまう。
慌てて草を投げ捨てる。
声を聞いてシィが小屋から顔を出す。
「アサト?」
「あ、シィ来るな!今、臭いから、」
「ゔっ、ゔえ、」
あまりの匂いにシィも小屋の中に逃げ帰る。
「たしかに、これは、嗅覚麻痺するわな」
下手すれば小屋に住めなくなるくらいの刺激臭、αを遠ざける前に、オレが臭いにやられそうだ。
なかなか使い勝手の悪い草だけど、発情したらこれに頼るしか…
ラウとはツガイになれないんだから…自分で予防策を…
塗るのは諦めて、茎を折って何本か周りに立てかけておくかな。
匂いの効能がどのくらい続くのか分からないけど…
「……」
レイが発情したなら…ラウ、なんで刺激草を嗅いでくれなかったんだろうって思ったけど…
確かに、これをわざわざ嗅いで嗅覚を麻痺させる気にはなれないよな。
発情中、フリーの獣人は交尾が自由…
そう言ってたから…
レイがΩでラウがα、必然だったのかも知れない。
けど、ラウとレイがそういう関係だと、知れて良かった…
知らずにラウとツガイになっていたら、レイにどれだけ恨まれるか…
「はぁ、」
ラウが、レイとツガイになって、この群を先導して、今までのように、森で迷った人間を助けてくれたら…
ラウの群も残せるし、ラウが長のまま、獣人人間差別なくな助けるっていう想いも繋がっていく。
オレじゃなくても…
むしろ、オレが出しゃばれば、ラウは全て失うかも知れない。
それでも、
ラウが好きだから…
ラウとツガイになることしか考えていなかったから…
ラウの立場を考えたら、答えは分かりきっているのに…
一人になると、嫌なことが頭を何度も過ぎって、気分が重い、臭いを落とすためにも水を頭から被り、考えないように頭を冷やすが…
気持ちは晴れることはなかった。
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