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28《強制番い》
ドサッと床に落ちたまま、シィは動かない。
「シィ!!」
「フン、気を失っただけだ、アイツは後回し、まずは食べ頃のお前だ…」
「っ、なんでオレ達を?人間だぞッ」
「人間だからだ、獣人のΩとツガイになれば保護して一生養わなきゃならない、けど人間には誓約はない、人間なら何をしてもいいだろ?」
「な、…」
「美味しい時期だけいただいて、あとは捨てても咎められない、どんな扱いをしても自由だ」
「ッ、嫌だ、お前なんかと、ツガイに…あ、嫌ッ」
アサトの拒否など無視して、獣人は毛のない肌を、なぞるように繰り返し舌で舐めながら反応を楽しんでいる。
「ほら、欲しいんだろ?遠慮せずに俺とツガイになれ」
「…ッお前とツガイにはならない!たとえ無理矢理されたとしても、フェロモン腺はお前じゃ浮き出ない、ツガイになれるわけない!」
「…?人間ではそうなのか?獣人族はΩの了承なんか必要ない、フェロモン腺はここだろ?少し深く牙を立てれば届く、それでツガイ成立だ」
そう匂いを嗅いだ後、鋭い牙を覗かせる。
「ッ、そんな…嫌だ、ラウが許さない、オレはラウのものなんだ!」
「ん?確かに匂いはついているが、ツガイになっていなければヤツのものじゃない、発情期にほっておかれているんだ、それはお前の独りよがりだ」
「っ、違う、ラウは…」
無理やりツガイになろうとせず、待ってくれていて…
「今頃ラウはレイとよろしくやってるだろ、こっちはこっちで楽しもう、群 の奴に売られたんだ、どの道、お前はここでは生きていけない」
「ぅ、いや、嫌だッ」
どうにか逃れようと身体をよじるが…
「暴れるな!人間は脆い、上手くやらんとフェロモン腺を貫通して殺してしまうかもしれん」
鋭い牙を剥き、そう脅すガイル。アサトは恐怖に震え上がる。
「ッ…嫌、ラウ…」
こんなことになるなら…
なんでオレはラウとツガイにならなかったんだろ、みんなに、レイに認めてもらおうと…
必死になって…
間違いだったのか…オレのやってたこと…
嫌だ、ラウ助けて…
ラウ以外とツガイになるなんか、絶対、嫌だ……!
ラウ!!
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