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29《ツガイに》
夕食を済ませて、小屋の寝床へ帰るラウ。
アサトは大丈夫だろうか、そろそろ発情が近いらしいから…
今日、丘に来ていないようだった、もしかしたら発情が始まったのかも知れない。今夜様子を見に行ってみるか…
頭の片隅で、常にアサトのことを考えている。
傍にいられないから…気になって…
発情を一人で乗り越えようとするアサト…
獣人のΩはαを奪い合うくらい、早々にツガイになりたがるのに…
アサトは…
そう想っていると…
後ろに気配…
バッと飛び下がり、部屋の入り口を確認する。
「兄様…」
「レイ、来るなと言っただろう!」
「どうして?兄様、以前のように僕を慰めてください、早く…」
発情で火照る身体、ラウを求め歩み寄り触れようとする。
「くっ、来るなッ!ぐぅッ…ゲホッゴホッ!」
隠し持っていた刺激草を片手で握りつぶし、鼻へ押し付けてそれを嗅ぐ。
強烈な匂いに一瞬眩暈がする程の衝撃…
身体の毛が逆立ち、激しく咽せ返る。
「兄様、何を!?」
「…っ、ふーッ、……ッレイ、もう俺はお前とは寝ない、ここから出て行け」
嗅覚を鈍らせる薬草を直接嗅いだため、発情フェロモンに惑わされずはっきり拒否する。
「なんでですか?僕は兄様とツガイになる為に…」
「俺はレイとはツガイになれない」
「どうして?僕らがツガイになれば、血も受け継げるし、群 の誰より最高の血を残せるでしょ?」
縋り付くように願うレイ。
「俺は、ツガイになる人をすでに決めてある、だからもうお前とは寝ないし、ツガイにはなれない」
引き離しながらもう一度伝える。
「それは誰!?この群 に僕より美しい獣人がいますか?」
「…獣人じゃない、」
「え?」
「俺はアサトをツガイにするつもりだ」
アサトたちを危険に晒すかも知れないが、俺が守りきればいいこと、決心してレイに真実を伝える。
「!?」
「アサトは人間だが…とても信頼できる」
「兄様、それは無理ですよ」
鼻で笑うようにゆるりと首を振る。
「レイ」
「人間なんかツガイにしたら、群 のみんなが許さない、僕だって、兄様は群 が大切じゃないんですか?」
「大切だ、だが、アサトを受け入れてもらえないなら、群 を出ていくことも考えている」
レイを説得しようと、真剣に話すが…
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