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33《何より大切》
「アサトッ!!」
直ぐ近くで聞こえたラウの声…
「ッラウ!?」
瞳を開けると、目の前にラウが…
その腕からは血が滴っていた。
「ッ!!」
ラウは、黒獣人の口に腕を挟み、アサトへ牙が立たないように防ぎながら、そのままガイルを殴り倒す。
「ハァ、ラウッ!」
そのまま二体の獣人は激しくもみ合い、怒号をあげながら、小屋から転がり落ちた。
「……!」
驚きながらも、シィの無事を確認する為近づく…
シィは規則正しく呼吸していた。
「ハァ、ハァ…息してる、良かった…、ラウッ!」
慌てて小屋の外へ見に行くが、暗闇の中で激しく威嚇し鳴きながら鋭い牙と爪で攻撃し合っている。
そのうちギャンギャン!と黒獣人が鳴き、森の奥へと逃げて行った。
「アサトッ!」
急いで戻ってきたラウは傷だらけで、あちらこちらから出血して痛々しい。
「ハァ、ラウッごめん、怪我…」
「こんなもの、大したことはない、アサトが無事でよかった」
そう、ぎゅっと抱き寄せる。
「…ふっ、うぅ…っふ、ぅっ、怖かった、怖かったラウっ」
その温かさ、ラウの匂いに包まれて、急に安堵感から涙が溢れ出る。
「アサト、すまなかった。こんな目に遭わせてしまって…」
もう離さないように、しっかりと抱き寄せる。
「っ、ハァ、ううん、オレがわがまま言ってツガイにならなかったから…ごめんなさい、っ」
「アサト、ツガイになろう!」
そっと、抱きしめる腕を緩め、屈んでアサトと視線を重ねて、真剣に告白する。
「ラウ…」
「俺はもう待てない」
アサトの頬を伝う涙の雫を優しく拭う。
「…っ」
「もう二度とアサトをこんな目に遭わせたくないから」
すっ、と…ラウに触れたことで浮き出た首筋のフェロモン腺を舌でなぞり…そう願うように囁く。
「なりたい、ラウとツガイに…」
襲われた時、なんでツガイにならなかったのか後悔した…
なりたい、なれるなら今すぐにでも…
「アサト」
「でも、そうすると、ラウは…失うものが多すぎる」
ツガイになれない理由、長の地位も、この群も、弟や仲間との繋がりも…全て。
「アサト」
「オレの為に…」
ラウの人生を狂わせてしまう。
俯き、小声でほつりと零す。
「構わない」
「ラウ…」
「アサトを失うくらいなら、何もいらない」
ラウの瞳に迷いはない、そっとアサトの顎を持ち、顔を上げて瞳を重ねる。
「…ラウ」
そのまっすぐ求める言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。
瞳から再び涙の雫が零れ落ちる。
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