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42《岩場の上で》

よく晴れた朝。 ラウがいつも遠吠えを行う岩場にやってくる。 今日は皆に、ラウとツガイになったことを報告して、(むれ)の行く末を決める発表をする予定。 かなり緊張する。 オレたちが受け入れられないなら、最悪ここを出る選択も用意しているから。 ラウの遠吠えに集まってきた獣人達、狩に同行するαと雄のβが主だ。 話を聞いて、周知事項があればそれぞれのコロニーの家族に伝達する決まりになっている。 いつも通り朝の伝達をしたあと、皆を待たせてオレを迎えに岩場の下に降りてくるラウ。 「ラウ…」 「大丈夫だ、堂々として」 「うん」 緊張をほぐすように抱き寄せ頬を舐める。 ラウはオレを抱き抱えたまま、岩場の一番上に駆け登る。 シィはその場で待たせておこうと思ったけど、自分でラウの後をついて岩場を登って来て、ちょこんと側に座っている。 「皆に話しておきたいことがある!」 よく通る低音の透き通った声が岩場に響き渡る。 「気づいている者もいるかと思うが、先日俺は生涯の伴侶を得た」 そっと、オレを隣に下ろして立たせながら紹介を始めるラウ。 「紹介する、俺の伴侶で数ヶ月前に保護した人間のアサトだ」 ラウの言葉に、ざわめきがおこる… 「アサトです、これからラウ様を愛し支えながら、この(むれ)のため力を尽くして行きたいと思っています」 頭を下げて挨拶するが、ざわめきは収まらない。 「皆、静かに!聞いてくれ」 ラウの言葉に、ざわめきは一瞬で静かになる。 促すようにアサトの背をさすり、頷いて肩を寄せる。 「…オレは人間だけど、ラウ様がいてみんながいる、この(むれ)が好きです。(むれ)のルールを守って、(むれ)にもみんなにも馴染めるよう努力します、どうかよろしく」 そう頭を下げてもう一度、できるだけはっきりとした声で挨拶する。 そしてラウを見ると、褒めるように瞳を重ね頷いて…

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