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44《レイの涙》

皆が解散したのを見届けて、アサトを抱えて岩場から降りる。 そこにはレイが居た。 「兄様…」 「レイ、お前はどうする?」 アサトを脇に下ろして、レイに声をかける。 「兄様は馬鹿だ!」 「何故?」 「人間なんか助けるから、騙されて…」 「レイ…」 レイの言葉を否定するように首を横に振る。 「僕は兄様とツガイになる為にずっと守ってきたのに…」 「アサトが居なくても、俺はお前とはツガイにはならない、お前は大切な弟だ、それ以上でもそれ以下でもない」 「兄様ッ、」 「お前は、俺と(むれ)、どちらが大切なんだ?」 「そんなの、兄様に決まってます!」 「なら、俺の元に残ってくれ、ツガイにはなれないが、お前は大切な弟だ。出来れば一緒にこの(むれ)を率いて欲しい、今までも俺の留守の間、ここを仕切り守ってくれていたのはお前だ」 「兄様…」 「だが、他の(むれ)の獣人を手引きし、アサト達を危険にさらしたお前は、本来なら(むれ)を追われても仕方がない状況だ」 「っ…」 「しかし、アサトがお前を許すと言ってくれた、その気持ちを噛み締めて、これからも俺のため、(むれ)のために、力を貸して欲しい」 「……」 レイは俯き、ラウの言葉を聞いている。 「ただ、これ以上、アサトやシィに危害を加えるのなら、俺が許さない。その時はたとえ弟でも、(むれ)を出てもらうことになる、それは覚えておいてくれ」 真剣な表情で伝える。 「……ん、」 ラウの言葉に小さく頷いたレイ。 「レイ、今まで助けてくれてありがとう、俺は愛する人を見つけた、お前も広い目で周りを見て、本当に愛すべき人をみつけるんだ」 そう囁き、優しく白銀の毛並みを撫でて頭を寄せる。 「兄様ぁ…ふぇっ、うぅぇ…っ」 ラウに触れられたことで、感情が抑えられなくなって… くしゃっと顔を歪め、ラウにすがり泣き始めるレイ。 「レイ…ありがとう」 優しく包み込み、弟へ、労いと感謝を伝えるラウ。 それを優しい瞳で見守るアサト。

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