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47《幸せと不安》
「そうか、時期を待ちたいなら孕まなくする薬もある」
「ん、でも…やっぱり欲しいかも」
少し悩むように視線を彷徨わせる。
「ん?」
「ラウの赤ちゃん」
瞳を重ね、小さく囁く。
ラウは直接は言わないけれど、仔どもを望んでいるから…叶えてあげたい。
「あぁ…アサト、今、不安に思う事があるなら話してくれ」
アサトの様子を見て、抱き寄せながら優しく促す。
「うん……、赤ちゃん出来たら、色々と変わるだろ?」
少し迷うように俯いて、想いを伝えてみる。
「色々?」
「うん、一番は…ラウの気持ちが変わらないか心配…」
「俺の気持ち?」
「うん、赤ちゃん出来たらどうしても仔ども中心になるだろ、オレはラウにとってどんな存在になるのかな?今のように愛されなくなるかも、それに仔を産む姿なんか、凄い見苦しいだろ、気持ちが冷めたり、嫌いになるかなって…」
俯いて不安に苛まれる。
「アサト、そんなこと、心配しなくていい…ツガイで仔を産み育てていくのは家族 の中では自然なことだ」
その言葉に驚いて、アサトを見つめ抱き寄せ優しく否定する。
「ラウ…」
「そんなことでアサトを嫌いになるわけないだろう、一生愛して守っていく、信じてくれ」
そして瞳を重ね、まっすぐ安心させるよう伝える。
「うん、ありがと…」
「アサトは本当に可愛い」
好かれていたい、嫌われたくない、アサトの言外に含む純粋な想いが伝わって、そんな姿が愛しくて仕方ない。
「…時々、夢に見るんだ…ラウに嫌われて、群 を追い出されて…独りで森を彷徨ってるんだ…」
俯いて緩く頭を横に振る。
ラウもシィもいない、真っ暗な森の中を野獣達に追われ逃げ惑いながら、恐怖に怯えて…独りきりで…
きゅっとラウの柔らかな毛を掴み寄り添いながら、悪夢の話を伝える。
「アサト、ただの夢だから」
優しく抱き寄せながら安心させるよう囁く。
「なんか、幸せな分だけ不安も大きくて…」
「大丈夫、俺がついてる」
「うん、」
「アサトは本当に色々考えてしまうんだな、俺には考え及ばないようなことも、だから色々話して教えてくれ、アサトの不安は俺が安心に変えてやる」
瞳を重ね、真っ直ぐ、力強く伝えるラウ。
「ん、ありがとう…ラウ、好き」
そんなラウに縋りながら、口許にキスを落とす。
「アサト…俺もアサトが大好きだ」
ぺろりと頬を舐め、不安を打ち消すように再び優しい口づけを行う…。
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