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新章55《森の春》
暖かく、さわやかな風が吹く森は春を迎えていた。ラウと出会って一年、ラウは21歳になり、オレは18歳になった。
群の長ラウとツガイになって初めての春。
オレは今、ラウの仔を身籠っている。
人間の妊娠期間と獣人の妊娠期間が多少違うため、いつ産まれるのかもはっきりと分からなくて不安は不安だけれど…
お腹の中で元気に動く新たな命を感じると…
今は早くラウの赤ちゃんに会いたくて、楽しみな気持ちが上回ってる。
まあ、ラウの方が相当心配して、過保護なくらい助けてくれるから…不安も幾分和らげてくれるし。
それにしても、αになってバリバリ働くつもりだったオレが、獣人の仔を産むことになるなんて…
不思議な感覚だけど、優しいラウがそばに居て、元気なシィが一緒にいて、新しい命が授かる。
それは本当に幸せな人生だ…。
そう、新たな命が宿って、大きくなった自分のお腹をさすりながら感慨深く思う。
そろそろ獣人なら産まれてもいい頃、しかしなかなか産まれる気配はない。
胸もΩの女の子みたいに目立つ程膨らんでもない…ミルクが出なかったらたちまち困るけど…
ラウは困ったら群のママさんが助けてくれるから心配は要らないって言ってくれたから気にしないことにした。
赤ちゃんの名前も一応何個か候補は考えているけど、産まれた仔を見てから決めようかなって思いつつ。
とにかく元気に産まれてきてくれることだけを願って、日々を過ごしている。
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