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56《留守番》
ラウは毎日、群 を引き連れ狩に行く。
ラウが中心となって群 を指揮しているため、行かないわけにはいかない。
オレは、妊娠が分かり、お腹が目立つようになると狩は危険だからと連れて行ってくれなくて、小屋で過ごすことが多くなった。
ラウの毛で編み物をしたり、果物を乾燥させたりできることをして過ごしている。
シィはオレが付いていないと狩には行かないので、一人で近場に木の実を採りに行ったり、水浴びしたりして過ごしている。少し心配だけど、遠くには行かない約束で自由にさせている。
オレも、もともと活発な性格なので、じっとしているのは苦痛で小屋から降りて狩に行かないβの女の子やΩ達の作業の手伝いをしたりしている。
出産経験のある獣人から情報も手に入るし…
獣人は病院や産科などはなくて、産むのは一人かパートナーや家族に手伝ってもらって自立して行うらしい。
不安は不安だけど、時が来たらやるしかない。
今日も小屋を降りて手伝いに行こうと思って…
ついでにゴミも捨てようと皮袋を肩から提げていく。
夜間、凶暴化する野獣に襲われないために、木の上にあるツリーハウス。
階段などは無く、太い木を縦に立てかけて、横に足をかける短い木をツルでぐるぐるに固定しただけの簡易梯子。
獣人は木に爪を立てて軽々登り降りするけれど、人間のオレは登り降りに時間がかかる。
最近は結構、腹がつかえて、小屋から降りるのがしんどくなってきた。
足でも滑らせたら大変だから慎重に降りないと…
そう考えながら降りていると…
「アサトッ!!大丈夫か!?そんなことをしなくていいから、小屋に戻って!」
狩の合間に様子を見に帰ってきたラウ。
小屋から降りようとしているアサトを見つけて、驚いて下から呼びかける。
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