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60《ラウと》

そうしてしばらくして木を駆け登ってくる大きな獣人。 「アサトッ!!大丈夫か!?」 すぐ様アサトの元へ駆け寄る。 「ラウ、よかった…帰って、痛たッ、ぅうッ」 安心しつつもお腹の痛みに顔をしかめる。 「アサト、」 「ふー、お腹と腰と、ッ凄く痛くて…ッハァ、」 「こっちへ、俺にもたれたらいいから」 「んっ、…ふー、痛ッ」 ゆっくりと身体を起こし、その逞ましい身体へすがりつく。 「んーッ!ハァ、ハァ…」 両膝をついて、股を広げた体勢で、本格的にいきみ始める。 「は、ハァ、んっ、」 若干痛みが和らいだように感じた次の瞬間… ズキンッと、より強い痛みの波がくる。 「ラウ…ッ、アァっ、痛いッ!ふ、ラウ助けてッ、ハ、ハッ!」 今までに感じたことのない強烈な痛みに、軽くパニックになりかけるアサト、無意識に呼吸が短く速くなる。 「アサト、大丈夫だから…ゆっくり息をするんだ」 「ハァ、ハァ…あァっ、でも痛いッ」 「大丈夫、もうすぐ逢えるから、俺たちの仔に」 「ッ、ん、うん、頑張るッからオレ…ラウ、見てて、っふー、ふーっ!」 「あぁ、アサト…」 「ふー、ハァ、ハァ」 「楽な体勢になったらいいから」 「ん、ハァ、ふぅ、…赤ちゃん、降りてきてる気がする…っ」 「あぁ、頭の先が見えて…ぁ!」 後ろを覗きこむと、仔どもの鼻先が見えていたが、羊膜がすでに破れていた…。 獣人の仔はだいたい羊膜に包まれてつるりと産まれてくるけれど、破れている場合は仔の足が引っかかったり、通常より出てきにくい状態になる場合があるため、お産には時間がかかる傾向があった。 「え、ハァ、なに?」 「いや、そのまま…力を入れて、大丈夫っ!もうすぐだ」 ラウは心配しつつも、片手で抱き寄せ腰をさすりながら、アサトには不安を与えないよう優しく励ます。 「ん、ぁッまた、凄い痛ッぅう!いたぃッラウ、腰押して!」 「あぁ、頑張れ」 アサトを抱き寄せたまま、ぐっと腰を押し込むように片手で撫でる。 「うーッ!ハァ、ハァ…ラウっ」 アサトはラウの毛を握りしめ、産み落とそうといきむ。

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