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61《産ぶ声…?》
しかし、鼻の先が見えた状態からなかなか進まず、かなりの時間が経つ、その間も激痛に苦しむアサトを励ましながら、見守り続けるラウ。
なかなか産まれず、内心ではかなり焦り不安になっているが、アサトに悟られないよう優しく語りかけながら寄り添う。
真夜中を過ぎ、朝方にさしかかろうとしていた。シィは心配して夜中まで起きていたが、睡魔に勝てずついに眠ってしまった。
「ハァ、ラウ…ァ、赤ちゃん、っ大丈夫?ハァ、ッ」
長時間の激痛に、だいぶ疲労感が滲み出ているアサト…
助けてやりたいが、途中でやめるわけにはいかないから、ある程度までは自然に出てくるのを待つ事しか出来ない。
「アサト…大丈夫だ、だいぶ出てきてる、ちゃんと受け止めるから、もう一息!頑張れ」
「うぅー!!あぁッ、痛いッ…もうッ」
「よし、いいぞ!」
「うぅーッ!」
最後の力を振り絞り、力を込めた瞬間、ズルリと体外へ押し出せた。
「ハァ、っ、ハァ…産まれた?」
産まれた仔は、ラウが片手で受け止めて、そのままへその緒を噛み切り、小さなカラダ全体を舐めて汚れを落としていく。
ようやく、新しい命を産み落とせたアサト…
喜びも束の間、赤ちゃんの鳴き声が聞こえない。
「ハァ、ハァっ、赤ちゃんは…?」
息をつきながらも、
不安になり、ラウを見上げてすぐに訊く。
「…アサト、」
ラウがしきりに舐めて刺激を与えているが、ぐったりとして、一声も鳴かない。
「かして、」
アサトは小さな命を抱き寄せると、赤ちゃんの鼻と口を、自らの口で覆い、詰まっている羊水を吸い出して捨てながら、呼吸を促すように背を摩る。
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