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62《新たな命》
「鳴いて、っ、お願いッ」
息をしてッ!
祈るようにそれを続けていると…
「……、きゅぅ、きゅぅ!」
不意に小さく産声をあげた新たな命。
鳴いた!!
「ハァ、っふ、よかったっ、鳴いた、ラウ!」
ポロポロと涙が溢れてる。
「あぁ、アサト…よく頑張った、ありがとう」
様子を見守っていたラウも安堵して、赤ちゃんごとアサトを抱き寄せ、頭を撫でる。
「ん、なんとかなった」
無事に産まれてきてくれた、とにかくそれだけで報われた気持ちになる。
「結構出血もしているから、しばらく安静にして」
優しく気遣いながらアサトを赤ちゃんごと抱きかかえ、ゆっくりと寝床へ横にする。
「うん、ありがと、大丈夫だよ」
そのまま、ラウはアサトの身体も舐めて後処理まで手伝う。
「お乳、飲ました方がいいんだよな、出るかな?」
出産で仔を育てるために変化した身体。
やはり胸はそれ程、膨らみはないが張っているような感覚はしている。
マントをはぐり、きゅうきゅう!と鳴き続けている赤ちゃんを胸元に寄せて、お乳を吸わせてみる。
赤ちゃんは生まれたばかりなのに、力強く乳首に吸いついてくる。
「あぁ大丈夫だ」
赤ちゃんに鼻を寄せ、クンクン匂って答えるラウ。
「かわいい、はぁ、よかった…」
ミルクを飲ませながら、安堵して…
しばらく疲労感から眠りについてしまうアサト。
「…本当に、よかった、お疲れ様」
アサトも仔も無事で…
すやすや眠る可愛らしい二人を見つめ、無事に出産を乗り切れたことに安堵する。
しばらく幸せの余韻に浸りながら、傍らで優しく二人を見守るラウ。
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