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第8話

「亘祐くん呆れてたね、おもいっきし」 「今日はオレの恥ずかしいとこばっかり皆に見られてる気がしますよ」 「・・今、オレが一番恥ずかしいんだけど。そんなにまじまじとオレの裸見ないでよ」 「だって、こんな可愛い裸体を見れるのはオレだけなんでしょ。もっと優越感に浸らせてくださいよ」 そう言いながら、ここぞばかりに哲人は直央の身体を触りまくる。 「オレは男なんだから、可愛いとか言うなア。てか・・あん。そんなに触らな・・いや・・あっ」 「直央さんはオレの奥さんなんでしょ。奥さんは夫にとっては可愛い存在なんですよ。ほら、 ここにちょっと触れただけで、こんな可愛い声を出してくれる」 「ひっ!・・あっ・・あ・・イイ。そ・・そんなのじゃなくて・・もっとちゃんと・・あっ」 「いいですよ。昨日できなかった分も含めて、もっとアナタをドロドロにします」 「ドロドロって・・。哲人ってやっぱスケベなんだよね。本当にオレが初めての相手?」 「そうですよ。咲奈のことが好きだったのも事実ですが、今となってはただの憧れに近いようなものだと。けど、さっきも言いましたがアナタは特別なんです。触って、舐めて・・貫かずにはいられない」 「いっ・・あ・・そこっ・・やっ・・いっぱい感じるのっ!」 「アナタの、この胸の小さい粒がほらもうこんなに大きくなって、赤くもなって可愛いですよ」 「ま 、また可愛いって。・・ひやあ・・あん」  直央の双丘を撫でていた哲人の指が、その狭間に滑り込んだかと思うと、すぐに穴の中に挿れられる。くちゅくちゅと音を立てるその指の動きによって、直央の喘ぎ声がさらに大きくなる。 「あっ・・あっ、あっ、あ・・んん・・あ・・ああ!」 「オレのことスケベとかいいますが、アナタのその声の方がエロいんですよ。・・できたら、オレのコレも触ってくれませんか」  直央の手を自分のソレに導くと、彼の口から「えっ!」という声が漏れる。 「どうしました?ギュッと握ってしごいてください」 「だ、だって・・いつもより大きくなってない?」  なおも「嘘ぉ」と言いながら、それでも自分の要求通りに手を動かす恋人の様子に、哲人はつい笑いそうになる。 「・・昨日、お預けをくった分、今日の期待値が高まったんですよ。それに、アナタの愛撫が気持ちよすぎて・・本当」  そう言いながら、自分も直央の中に挿れる指を増やして、肉壁を執拗に擦る。 「いやあ・・そん・・な・・何本、も。そんな風に擦られ・・た・・・あ」 「まだ入り口付近です・・よ。もっと奥も・・攻めてあげますから・・ふっ」  本当は自分も余裕は無いのだけれど、と思いながら哲人は指を奥へと進める。限界まで入れた指先を肉壁をこねくり回すよに動かすと、直央の身体がぶるぶると震えだしてきた。 「いやあ、もう挿れ・・て。哲人のコレ挿れ、て。もう、哲人のもびしょびしょになって・・るもの。いいで・・しょ」 「まいり・・ましたね。そんなにはっきりと要求されたら、断れない・・ですよ」  わざと指をゆっくりと引き抜く。そして濡れたままのその指で、直央の胸の頂を撫でたり摘まんだりしている。 「は、早く挿れてよぉ。哲人は・・我慢できるの?」  四つん這い状態にされた直央が、懇願の表情をしながら顔を後ろに向ける。 「オレのことをスケベだとか言いながら、アナタの方が欲しがってるじゃないですか。そんなに挿れてほしいなら、自分でお尻のソレを開いてください」 「っ!・・今日の哲人は何かイジワルだよ」  そう言って恨めし気に自分を見る直央の表情が、余計に自分を煽ることになるとは思っていないのかと哲人は苦笑する。 (ほんと、素直で可愛い人だよ、直央は。この人を失うわけにはいかない。失ったら・・オレの感情の行き場が無くなってしまう。アノ時のように・・) 「アナタだから、オレはワガママになってしまうんですよ。頼っていいんでしょ?」 「た、頼るのとワガママ違う・・だろ。あっ、あん。・・ソコばっか・・嫌。わかった・・から。言うとおりにするから・・お願い・・挿れ・・あ」 「ほんと、可愛いですよ。アナタのそういうところも好きです。いっぱい動かしますからね」 「ひっ!や、やっぱ・・いつもより大きい・・よ、哲人の。はあ・・あっ、あ・・ん」 「アナタの締め付けも凄いですよ。それくらい、オレを感じていてくれるんですね。と、ゆっくりは・・ちょっと無理そうです。アンタの前ももう限界なよう・・ですね・・くっ」 「昨夜はキスもできませんでしたからね」  抱き合いながら深く長い口づけを交わした後、哲人は恨めし気にそう恋人に言う。 「あんな別れ方したせいで、今日は食欲も無くて。朝から何も食べてないんですよ」 「その割にはしつこく攻めてきたじゃん。体力も・・性欲もありまくりじゃん」  何言ってんの、と直央は呆れたように答える。 「アナタがオレの全ての源ですからね。さっきは昨日の分で、これからは今日の分です」 「へっ?」  再び、哲人のソレが挿入される。 「ゆっくり・・動かしますよ。もっと、アナタを感じ取れるように」 「あ・・は・・っ。あん・・イイ・・ん」 「気持ちいいでしょ。・・そのまま、オレの言うことを聞いてください」 「んん・・」 「オレの親は戸籍上は実の両親てことになっています。けれど、血液型が違っていた。わかりやすいパターンですよね。だからこそ尚更訳が分からなくて、オレは・・荒れた」 「ひっ!・・ん」 「涼平と、鈴が言うところの死闘を演じたのはその頃です。涼平は一族でも末席の位置にいたので、面識はあっても言葉を交わしたことがなかった。互いに屈折した思いを抱いて、感情のままに闘った。死にかけたのも本当です。どちらが勝ったとも言い切れないのですけど、あれ以来涼平はオレを守るということを使命にするようになった」 「いやあ・・あっ・・ああ」 「本家にとって、オレは邪魔な存在であるとともに、簡単には切れない何かのようなのですよ。つまりは、飼い殺しですよね。けれどついには持て余した。・・それが当たっているかわかりませんが、自分の都合のいいように考えて、オレは家を出ました」 「っ!・・いやあ・・もう・・」 「まさか琉翔がそこまでイタイ人だとは思わなかったのですけどね。だからオレを押し付けたのか・・。正直、本家の意図はオレにはわかりかねているんです」 「あっ、イク・・ん・・オレは・・好きだから。哲人が・・寂しいなんて・・泣くくらい・・なら」 「直央・・さん」 「ひ・・あっ・・イク・・イク・・い・・あっ・・あ」 「オレの存在は、本家から認められてんだろ?なら、オレがくっついていてやるよ。涼平くんにも負けたくないなって思ったし」 「直央さん・・でも」 「オレにとっては、哲人は大事な存在だもの。本当の両親にももちろんだけど、哲人が恩を返したいっていうご両親にも今は無理でも、オレはちゃんと挨拶したい」 「直央さん!」  アナタという人は・・と哲人は直央を抱きしめる。 「く、苦しいって!・・できたら、その・・ウチの親にも会ってほしいなって思った・・から」 「!・・いいんですか?」 「だって、哲人が会いたいって言ったんじゃん。ていうか・・本当は昨日渡そうと思ってたんだよ、ね」  そう言いながら、直央は一通の封筒を差し出す。 「ん?これって・・開けてみていいですか?」 「いいよ。・・本当はオレと千里のために送られたアレなんだけど、哲人の反応次第ではもう二枚送ってもらおうと思ってたんだ」 「オレの反応?二枚?・・何・・。財前灯イラスト展?」 「オレの母さんなんだよ、財前灯ってイラストレーター。オーナーさんが、ファンだって言ってた」 「琉翔さんが?」 「オレが最初に母さんと一緒にこのマンションを見にきたとき会ったんだけど、すぐに母さんが財前灯だってわかったんだよ、あの人。あんまし顔出ししてないのにさ」 「そう・・ですか」  哲人は一瞬難しい表情になるが、すぐに笑顔になる。 「つまり、このイラスト展にオレも一緒にいってほしいと?」 「あの人も忙しいから、あんま時間作れないだろうし。でも、千里も招待されてるからついでに・・ってのはアレだけど、亘祐くんも巻き込んでカミングアウトしちゃおうかなって」 「・・えっ?」 「みんなで一緒にいかない?オレの母さんの個展」 「へっ?」 「へぇーっ、財前灯のイラスト展ですか。いいですね、私も行きたいですよ」  机の上のパソコンから目を離さずに、高木琉翔は日向哲人の「あんた、財前灯を知ってるんだろ」という問いに答える。 「行けばいいだろ。あんたならコネがあるんだろうから」  自分の保護者であり、自身が生徒会長を務める高校の理事長である琉翔への言葉使いにしては随分とぞんざいな物言いだと財前直央は横で聞きながら思う。 「お、おい。いくら何でも言い方ってもんが。つか、キャラ変わりすぎ・・」 「この人には、これくらいでいいんですよ。咲奈のことにしろ、亘祐たちのことにしろこの人はただ人を馬鹿にしたいだけなんですから」 「ふふ、直央くんに対してはブレないんですね。こんなに愛されて直央くんは幸せものですねえ」  ようやく琉翔が顔を哲人たちに向ける。その表情は笑っているようでもあり、少し戸惑っているようにも見える。 「?」 「どうしてそれをわざわざ私に言いに来たんです?確かに私は哲人の保護者ですけど、いちいち報告する義務はないんですよ。哲人は自分の生活費も自分で稼いでいますからね。私の存在は、ほんと名目上だけのものですから」 「違うだろ、オレが琉翔の監視役だ。思い出したけど、コイツは昔から一族の中でも問題児扱いされてたんですよ。だから咲奈がコイツに憧れてるって知った時には・・」 「ふふ、咲奈くんは子供のころから美人さんでしたからねえ。まあ、哲人の恋人を選ぶ基準にもブレがないとわかって安心しましたよ。直央くん、哲人を頼みますね」 「は、はい・・て、哲人の生活費って本家から出ているんじゃないんですか?」  確かに、哲人の頭の良さは同年代の中では群を抜いているのも知っている。その気になれば今すぐT大に合格することも可能だろう。 「でも、生活費まで自分でって・・。だってバイトしてる暇なんて無いはずだもの。ほとんど毎日オレと一緒にいて」  そこまで言って 、直央の顔は真っ赤になる。 「・・いつも、気づいたらオレはパジャマ着させられて寝てて・・勉強だっていつしてんのかなって思うくらいなのに」 「はは、哲人はほんとマメな子ですね。・・けど、生活費云々の話は彼の方から言い出したことなんですよ。家賃も高2くらいから自分で負担しているんですよねえ。どうも、いいパトロンを見つけたみたい・・」 「え、パトロン!?・・て」 「だから、コイツの言うことを真面目に聞いたらダメですってば、直央さん」 と言いながら哲人は琉翔の前にあるパソコンに手を伸ばす。 「あはは、哲人は何をしようとしているのかなあ」 「アンタのこの作業をオレが一瞬で終わらせてやるよ。そしたら、アンタはもっと忙しくなれて嬉しいだろ?」 「あはは、そんなことしたら哲人も咲奈くんに殺されるよ?咲奈くんが空手の有段者なのは知ってるよね」 「当たり前でしょ、同じ師匠についてたんだから。・・それは、ともかく」 と、今度は直央の方に向き直る。 「だいたい、オレが誰かに頼って生きていくような輩に見えますか?もしそうなら、アナタの側にいる資格なんてないじゃないですか」 「で、でも・・じ、実際バイトしてる時間も無いし、あの部屋にある家具とかも上等なものばっかで・・」 「パソコンさえあれば、生活費を稼ぐ方法はいくらでもあります。もちろん合法的にね。授業料はウチの学校の特待生制度を使って無償になってますしね。もちろん、それ相応の成績を維持することが条件ですが」 「えっ、えーっと」  直央の 頭の中混乱状態だった。目の前の恋人は「造作も無いことだ」と涼し気に言ってはいるが。 「哲人の高校って、かなり偏差値高いとこだよね?生徒会長やって生活費も自分で稼いで、そんで成績も維持して・・お、オレの相手もしてって・・」  凄すぎではないかと思ってしまう。(おまけに、オレの夕飯てたいてい哲人が作ってくれて・・) 「お、オレって・・かなり負担になって・・ない?」 「なってるわけないでしょ。むしろ、ソレはコイツがオレに対して思わなければいけないことですよ」 と、哲人は琉翔を指差す。 「直央さんはオレにとっては癒しの存在なんです。だから気にしないでください」 「癒し・・癒してんのかなあ、オレ」  むしろ、毎晩疲れさせているような気もするけど・・と思って赤面する。 「まあ、若いからしょうがないとは思うけど、毎晩は流石にねえ。ほどほどにしないと、私のように枯れちゃうよ?」  立ち上がってわざとらしく腰を叩きながら、微笑む琉翔の言葉に直央は驚く。 「り、琉翔さん!オレの心が読めるんですか!」 「だから、コイツの言動に流されちゃダメですって、直央さん。どうも不動産屋にまで年齢を偽ってるみたいですから、琉翔は」 「えっ?偽ってるって・・。や、わかってるよ。どう見ても20代後半くらいに見えるけど、本当は30代半ばなんだろ?」 『はは、彼を見ると大抵の方がそうおっしゃるんですけど、これでも30半ばなんですよ、彼』 「微妙に間違ってます。半ばじゃなくて後半です。ぶっちゃけ40手前です」 「へっ?う、嘘!」  そう言われて、ついマジマジと琉翔の顔を見てしまう。 「だ、だって30にもなってないように見えるのにアラフォー?童顔てわけでもないのに・・」  中性的な顔立ちだとは思う。印象的な長い睫毛を湛えたその大きい目のせいかもしれないと直央は考える。 「髪もその色は地毛・・ですよね?サラサラで綺麗・・」 「ふふ、直央くんの髪の色と似ていますかね。別に年齢を偽ってるわけじゃなくて、向こうが勝手に間違えてるだけすからね」 「っ!・・り、琉翔・・さん」  自分の髪を撫でられ、直央は狼狽える。二人とも立ってはいるが、20㎝以上の身長差がある。そのまま抱き寄せられそうになり、慌ててその腕から逃れようとする。 「琉翔! てめえ、何をしやがる!ふざけんてんじゃねえぞ、ぶっ殺されてえのか!」 「て、哲人!オマエ、またキレて・・」  激昂を始めた哲人を見て、直央は慌てて彼に駆け寄る。 「ダメだって。琉翔さんもふざけないでください。オレは・・」 「わかってますよ、哲人に愛されてますね、キミは。私にとっても大切な存在ですよ、哲人は。哲人はなかなかソレを認めようとはしてくれませんが。ほんと、ツンデレで困ります」 「琉翔さん・・何でそんなに笑っているんです?哲人は本気で怒って・・」  困惑気味の直央の頭を、琉翔は再び撫でる。 「!・・だから、やめてって・・」 「キミも本気で哲人を想っていてくれるのですね、ありがとう。哲人が大切だからこそ引き取ったのは事実です。 他の人じゃ、哲人を守れませんから」 「へっ?どういう意味・・」 「いいんですよ、直央さん。何度も言いますが、琉翔に真面目に寄り添うようなことはしなくていいんです。コイツはオレを子ども扱いしたいだけなんですよ」 (哲人・・もしかしてテレてる?たぶん、琉翔さんの言ったことは彼の本音なんだろうし。けれど・・) と思う。もしかしたら、“ワザと”なのではないのかと。 (怒らせたかった?哲人がキレるのをわかっていて・・。確かに、哲人が言うように一筋縄ではいかない人のようだな。けど・・目的は何なんだ?) 「琉翔さんは、あの時風邪をひいたオレのために本家の主治医を手配してくれましたよね。それは、哲人に頼まれたからですか?」 「キミのことは任せてほしいと、キミのお母さんにも約束しましたからねえ。キミの前でも言いましたが、私はお母さんのファンなんですよ。・・それは嘘じゃありません」 「・・・」 「ただのファンにしちゃ、直央さんに結構な思い入れがあるみたいだけど?直央さんが言っていたが、直央さんのお母さんは、あまり外部に顔出しはしない人だったらしい。琉翔とはジャンルも違う。琉翔だって、業界の中でも限られた人としか会ってないんだろ。だから、向こうも気づかなかった」  確かに、母親は完全に気づいてなかったなと思い出す。名前を聞いても、わからなかったようだったと。 「琉翔さんは最初から今のペンネームで書いているんですか?自分の本名を晒したことはないんですか?」 「ソレが今の職業になる条件でしたから。灯さんの素顔を知ったのは、偶然ですよ。・・・キミの誕生の経緯も知っていました。“もちろん”詳しいことは知りませんが。けれど、灯さんのファンなのは事実ですよ。ほら、これ」 ろ言いながら、琉翔は本棚から一冊の本を取り出す。 「これって・・母さんのイラスト集?」 「テーマは『こども』です。普段は灯さんはこういうのは描かれないので、当時は話題になりました。しかも限定品でしたからね。自分もこればっかりはコネを使いまくって手に入れましたよ。出版日はキミの5歳の誕生日です」 「・・知らなかったです。じゃあ、琉翔さんはオレが母さんの息子だから、哲人との仲も認めてくれてると?」 「まあ、それも無いわけじゃないですけどね」 と琉翔は笑いながら 答える。 「けれど、私個人の意見を通せる一族でも無い。が、キミの存在が哲人の益になると上が判断しました。本人はわかってないようですが、哲人は本当に気にかけられているんですよ」 「適当なこと言うなよ、琉翔」  哲人の顔が歪む。 「哲人?」 「琉翔がオレと本家の橋渡しをしてくれてることは感謝する。けれど、直央さんのことだけは別だ。この人を傷つけるようなことがあれば・・」 「哲人、キミももっと自分を大事にしなさい」  琉翔の表情が真剣なソレになる。 「何を・・」 「キミが直央くんと出会えたのは偶然だ・・素敵な、ね。その“特別”を大事にしなくちゃいけない。愛しているんだろ?彼を」 「っ!・・アンタに言われなくても、オレは・・。オレたちの想いを利用させる気はない!」  そう言い放って、哲人は部屋を出ようとする。慌てて直央が声をかける。 「て、哲人!どうする・・」 「帰るんですよ、これ以上ここにいても胸糞が悪くなるだけです。・・琉翔、アンタはいつも本音でオレと語ろうとしないな」 「哲人・・琉翔さんにあんなこと言っていいのか?仮にもオマエの保護者・・」 「ええ、仮の存在ですよアイツは。本人も言ってたでしょう、オレに対する自分の存在は名目上のものだと。なのに・・オレにいらないプレッシャーを与え続ける」  琉翔は本当のことを言っていない。そして、ソレを隠そうともしない相手の態度に哲人は苛立っていた。 「なにより、アイツはアナタを気に入っている。その上でオレを煽っている 」 「あの時のこと?でも、オレと琉翔さんて20も離れていて。だいたい、母さんのファンなわけだし。それに、あんなカッコイイ人だし、オレなんか・・」 「アナタは自分のことをわかってなさすぎです。それに確かに年齢差はありますが、琉翔の見た目はああですからね。・・絶対に琉翔に一人で会ったら駄目ですよ!」  足を止め直央の方に向き直り、肩をがしっと掴む。 「ちょっ、ここ外だって!それに・・」  そんなに真剣に見つめられると流石に照れる、と直央は顔を赤くする。そして哲人の手から逃れようと身体を揺らすが、反対に強く抱きしめられてしまった。 「っ!ば、バカ!・・みんな見てんだろうが、恥ずかしいって!」 「恥ずかしくなんかないですよ。オレはアナタの ことを愛してるって、みんなに宣言できますから」 「へっ?や、昨日からやたら愛してるって言ってくれるようになったのはすっげえ嬉しいんだけど、できれば二人きりの時がいい・・」 「じゃあ、早く帰りましょう。琉翔の匂いもさっさと洗い流さないと・・。アナタを抱きしめるのは私だけでいいんです!」  その時、直央の携帯の着信音が鳴り響く。 「わっ、びっくりしたあ!」 「いいですよ、出て・・って何で変な顔してるんです?」 「哲人が・・腕を離してくれないと携帯を取り出せないんだってば」 「・・すいません」  顔を逸らしながら、哲人は直央から離れる。 「ほんとにもう・・恥ずかしいったらありゃしない。って、誰だ・・か、母さん!?」 「へっ?・・は、早く出ないと!」 「う、うん」  哲人に促されて、直央はスマホをタップする。 「ご、ごめん!今外で、着信音に気づかなくて・・えっ?オレの部屋の前で待ってる?ま、マジ!ちょっ・・うん、すぐ帰るから!・・えっ?や、一人じゃ・・ないけど」  先ほどの赤い顔から、一転青いソレになった直央は「どうしよう」とスマホを哲人に近づける。 「落ち着いてくださいよ、直央さん。とにかく、部屋に戻った方がいいでしょう」 「そ、それはそうなんだけど・・でも哲人が」 「オレと別々に帰ればいいでしょ。また夜にはアナタの部屋にいきますから」  本当は一日中一緒にいたかったのだけれど、と悔しそうな表情を隠そうともせずに哲人はそう言う。 「んな顔すんなって、もう。てか、 知り合いも一緒だってなら・・その・・お昼を一緒に食べないかって」 「は?・・もしかしてオレと一緒だって言ったんですか?」 「や、知り合い・・とだけ。う、嘘じゃないもん!・・まさか彼氏とか・・ちょっと言えなくて。・・ごめん」 「・・いい機会ですから、会いますよ」  静かな声で、哲人は直央に告げる。 「アナタもオレを紹介するつもりだったのでしょ?なら、今日会いますよ。ちゃんと、アナタのお母さんに挨拶します。恋人として、ね」 「あ、あの母さん。ごめんね、待たせちゃって」 「いいのよ、私も前もって連絡しなかったのが悪いわけだし・・。って、その彼が直央の・・恋人なのね。ほんとに今日会えるとは思ってなかったけど」 「・・今、なんて言ったの母さん。オレの恋人が・・って・・な、何を」  面と向かってそう母から言われた直央はもちろん、ともかくもと挨拶をしようと身構えていた哲人も驚く。 「も、もしかしてご存知だったんですか!?」 「直央にイラスト展の招待状を送ってから聞かされたのよね、私の担当者経由で某社の編集長からという形で。もちろんびっくりはしたわよ」  とにかく一度部屋の中に入らない?と母親に言われ、直央は慌てて玄関のカギを開ける。 「あら、思ったよりも片付いているのねえ。流石に、恋人ができると変わるのね、ふふ」 と笑う母親の態度に困惑しながらも、直央は思いきって尋ねる。 「母さんはその・・オレの・・か、彼氏のことを知ってて今日きたわけ?・・怒ってないの?」 「なんで怒る必要があるのよ」 と、母は不思議そうな顔で答える。 「恋人を作るのにいちいち親の許可がいるわけ?そりゃあ挨拶は必要だとは思うけど、そこまでマザコンに育てた覚えはないわよ」 「あ、あの・・」 と、哲人が声をかける。 「あら、ごめんなさいね。なんかアナタの存在を無視してた感じになっちゃってて。ふふ、そうんなつもりはこれっぽちもないからね?こんなイケメンを捕まえるなんて、でかした!我が息子!・・って感じだわ」 「か、母さん・・恥ずかしいってそんな言い方・・」  直央は頭を抱える。が、哲人はいくぶん緊張した面持ちで彼女の方に向き直る。 「・・ご挨拶が遅れまして申し訳ありません。直央さんとお付き合いさせていただいてる日向哲人といいます。いずれは正式に交際の許可をいただきにいこうと思っていたのですが、今日思いがけなくこのような機会が訪れたことは・・」 「そんなかしこまらなくてもいいってば!」 と、母親・・財前灯は笑いながら、哲人の言葉を遮る。 「!」 「親の許可なんかいらないって言ったでしょうが。てか、私もここんとこかなり忙しかったから、挨拶にきてもらっても困ったと思うわ。それより、息子の審美眼を褒めてあげたいわよ。性格も高校生の割にはきちんとした人みたいだし」 「や、哲人は生徒会長で自分で生活費とかも稼いでて、頭も良くてこの通りカッコイイ人で・・。とにかくオレの自慢の恋人なんだ。ずっと・・一緒にいたい人なんだ」 「直央・・さん」 「そこまで惚気なくてもいいっうに、バカ息子!・・彼が素敵な人なのはともかくとして、アンタが愛想つかされないように努力しなさいよ。絶対、ライバル多いんだから」 と灯は小さくため息をつく。 「もう少し、イケメンに生んでおけばよかった・・」 「か、母さん!」 「直央さんは絶対にオレが幸せにしますから。ところでお聞きしたいのですが・・」 「ふふ、息子がお嫁さんになるとか想像もしなかったけど、こんなお婿さんに将来はお母さんて呼ばれるのね。待ち遠しいわあ・・あ、灯さんて名前で呼んでくれてもいいのよ?」 「・・あ、あの。出版社経由でオレたちの交際のことを知らされたってことは、このマンションのオーナーである高木琉翔も関係しているということですか?」 「葛城先生のことね」 と、灯は頷く。 「直接お会いしたのは、直央と一緒にこのマンションを見に来た時だけだけどね。ま、その時は本当に葛城先生だって知らなくて失礼なことをしてしまいましたとお伝えくださいな」 「それは・・でも、琉翔・・さんに言われたからって、どうしてオレたちのことをすんなり許してくださるんですか?オレはまだ高校生で、しかも・・男同士です。もちろん間違ったこととも恥ずかしいことだとも思っているわけじゃないけど」 「なら、堂々としていなさいな。どういう経緯で二人が知り合って愛し合うようになったのかわからないけど、このマンションで一緒になったのは偶然なんでしょ?直央がやけにこのマンションにこだわったのは、正直変だなとは思ってたけど」 「や、確かにこのマンションを探す前から哲人のことは知ってた・・けど、その頃はお互いに嫌いあってて。でも、ここに越してきて何度か会って・・助けてもらったりしているうちに哲人の優しさに気づいて、そしたら好きになって・・あれ?」  話しているうちにいつの間にか自分が泣いてることに気づき、直央は慌てて服の袖で目を拭こうとする。 「ほんとにアナタという人は・・。そういうときのためにオレがいるんでしょう?」 と言いながらハンカチを差し出す哲人の様子に、 「あらあら、まあまあ」 と灯は笑い出す。 「こりゃ、同居は無理かしらね。こんなの毎日見せつけられてたら、仕事どこじゃなくなるもの。てか、直央をそこまで甘やかさなくてもいいんだからね。こっちの方が年上なんだから」 「・・無理に聞かない方がオレたちのため、ということですか?」  哲人は厳しい表情で聞く。すると灯も表情を改める。 「そんな怖い顔をしないで。直央が生まれた事情も多少は知っているはずよね、貴方。私にとっても大事な存在なのよ、この子は。けれど、貴方個人の資質も踏まえた上で息子を託すことに決めたのよ。余計なことは考えずに、直央を大切にしてほしいの」 「母さん・・」  二人とも何を言っているの、と聞く直央の手を哲人がぎゅっと握る。 「哲人?」 「オレにも両親がいません。だからここで高1の時から一人暮らししています。そんな人間に大事な一人息子を託すと?さっきも言ったように彼を幸せにする気持ちも自信もある。けれど、オレはスーパーマンじゃない。今の環境ゆえの弊害もあるはずです」 「だ、だから!・・それこそ何度も言ってるだろ。全部受け入れてでも、哲人と一緒にいたいんだって!理解だってちゃんとしてるから」 「だ、そうよ」  息子の言葉に灯は微笑む。まるで、あの時の自分のようだと。20年前、直央を自分のお腹に宿したころの。 「この子の頑固さはもうわかってると思うけど?もちろん、大人は手を貸すわ。けれど、一番必要なのは貴方と直央の気持ちの結びつきだもの。お互いに相手に恋して、理解わかりあって、愛しあっているんでしょ?なら、それを貫きなさい。何があっても後悔しないために」 「・・母さんと哲人の話の中身がよくわからなかったんだけど?」  結局、母は「恋人の邪魔をしたくないから~」と言って帰っていった。二人は仕方なく、近くの喫茶店で軽めの昼食を食べ、ついでに夕食の買い物をしようとスーパーにきていた。 「つまりは、オレと直央さんは周りも公認のアツアツカップルだということです」 「っ!こ、こんなとこでそんなこと言うなよ」 「何を焦っているんです?現に今だって、どこからどう見てもまるで新婚のように見えるはずですよ」 「へっ?」  な、なんで?と慌てて自分たちの服装などを気にし始めたり、きょろきょろと辺りを見回す恋人を見て哲人の口から笑い声がとめどなく溢れてくる。 「あはははは・・あっ・・ははは・・」 「て、哲人!店内でそんな大きな声で笑ったら駄目だよ」 「い、いえ・・。そうですね、すいません。けど・・やっぱアナタじゃないとダメですね」 「えっ?」 「さっ、早く買い物を済ませて帰りましょう。・・オレは早くアナタを抱きしめたいんです。 「双方の保護者公認ということで、これからは心おきなく愛しあえますね」 「やっ・・な、何が今までと違うのかわかんない・・あっ」  ベッドの上で直央は組み敷かれ、その胸に執拗な愛撫を受けていた。既に自分のソレは雄々しく屹立し、先端から涎を絶え間なく垂れ流している。 「あは・・は。ね・・え・・もう・・ひっ・・や」 「朝から本当は我慢していたんですよ、琉翔がアナタのこんな可愛い部分まで触ろうとしていましたから」 「なっ・・そ、そんなことあの人がするわけ・・いっ!痛いっ・・て、もっと優しく・・」 「アナタがアイツを擁護するようなこと言うからですよ」  そう言いながら、左手をついと伸ばして一瞬だけ直央のソレに触れる。 「ひっ・・や、もっと触・・って」 「オレは存外嫉妬深いんです。なのに、アナタは無防備すぎる。直ぐに他のオトコの視線も手も・・好意も受け入れてしまう」  それが我慢がならないのだと、恨み言をこぼしながら哲人は再び胸の頂を愛撫し始める。既にソレは真っ赤に熟れている。痛いくらいなのだが、哲人はどうしてもソコ以外に舌も指も触れようとしない。 「お、お願い・・もう辛くて・・。せ、せめて自分で触らせて」  自分より20㎝近く背の高い哲人に組み敷かれていては、自分の手も動かすことができない。 「自分でシたいとか、今日の直央さんはエッチですね。けど、ダメです。アナタのそんな行為を見てしまったら、ますますオレが止まらなくなる・・」 「だ、だって・・哲人が触ってくれないから。あっ、あ・・」 「胸だけでも十分に感じているのに、本当にワガママな人ですね。ふふ、こんな直央さんを見れるのはオレだけですもんね、嬉しいです」 と言いながら身体をずらし、直央の股の内側に顔を近づける。 「ふふ、随分ここは濡れまくっていますね。後ろの方までほんとに・・」 「いやあ、そんなこと言わないで・・ひあっ、あっ、あっ、ああ・・そんなに強く吸わない・・で」 「下半身も触ってほしかったんでしょ?いっぱい舐めて、撫でてあげますよ。ほら、この幹の根元から先っぽまでこう・・」  直央のソレの付け根を吸い上げた後、舌をちょろちょろと這わせる。 「くっ・・・や・・あっ・・いい。はあ・・そこ・・いっ」  そして再び先の部分を強く吸われ、直央は悲鳴に近い声を上げる。 「いやああっ!い、イッちゃう・・いっ、イイ!」 「しょうがないですね・・一人で勝手にイッてしまうなんてヒドイ恋人です」 「っ!・な・・あっ」  わざとらしくため息をつく哲人に、今度は抗議の声をあげようとした直央の後ろの窄まりに哲人の指が挿れられる。 「ひっ!・・あ・・そんないきな・・り。ああっ!」 「直央さんはどちらかといえば、こちらの方が感じるんでしょう?ここが弱いんでしたっけ?」 「き、昨日もそこを攻めたくせに、何を今さら・・あ・・あ・・あっ」  直央の中で哲人の指が緩い速度で動かされる。ピンポイントで弱い部分を刺激するのではなく、最初にソコを強く刺激した以外は巧みにその部分を避けて撫でている気がする。が、その触り方が巧みなせいで直央は新たな自分を発見しそうだと思った。 「ん・・んん・・っ」 「声を抑えなくていいんですよ?」 「だ、だって・・・哲人がイジワルだからあ。あ、今度はそんなとこ・・お、奥は‥ダメ・・」  哲人は指を奥へと進め、そしてかき回し始める。気持ちがよすぎてもう我慢などできないと思った。 「あ、・・やっ・・あっ・・」  自分でも自分の中が収縮を繰り返して、ソレが哲人の指の淫らな動きを誘っているのがわかる。 「ふっ・・あっ・・いい・・あうっ・・」 「凄く感じていてくれるのですね。オレのも、ほらこんなに・・」  いつの間にか哲人のソレを握らされ、夢中でしごいていた。 「もう挿れさせてくださいね」 「・・うん」 と直央が頷くと、直ぐに指が引き抜かれる。 「あっ・・」  喪失感に思わず声が出る。 「・・そういうとこも好きなんですよ。アナタは本当に可愛すぎる・・」  小さく笑いながら哲人は恋人の窄まりに、己のソレを穿つ。 「あ・・ああ、ああっ!」  何度も受け入れたはずのソレは、それでも今までより強烈な快感を直央の全身にもたらす。 「あっ・・ひっ・・ああ・・っ!」  待ち焦がれたソレは直央の奥まで伸び、そして攻める。 「ひゃあ・・いいのっ!そこ、ん・・突いてっ・・あっ・・いい!」 「直央さんも締め付けが凄くて・・オレもっ・・気持ちいいんですよ。アナタの中は本当に最高・・だい 「イクッ・・駄目・・あっ・・ああ!」 「今日はその・・朝からいろいろ聞いてオレ自身混乱していたんです。だから、アナタに対してヒドイことをしたと」  夕飯の調理をしながら、哲人は謝罪の言葉を口にする。 「本当にすいません。アナタの前では優しい恋人でいたいのに・・」  自分はこういう人間ではなかったはずだと、哲人とは嘆息する。 (いや、時々キレてしまうオレが・・本当のオレ・・なのか?) 「哲人は優しいよ。母さんにもちゃんと宣言してくれたじゃん。オレを幸せにするって。実際、今のオレは幸せだもの。こんな素敵な恋人と、新婚気分味わえるんだからさ」 「えっ?」 「えっ、ってなんだよ。スーパーで哲人が言ったんじゃん。オレたちが新婚カップルに見えるはずだって。・・うちは父親がいなかったから、夫婦で買い物とか一緒に料理しているとことか間近で見たことなかったけど、たぶんこんなんだろなってのはわかった。そういうの味あわせてくれる哲人にはほんと感謝してるよ」 「直央さん・・」 (うちは・・今にして思えばぎごちなかったけど両親はちゃんと“親”をしていてくれた。それを壊したのは他ならないオレで・・)  そう思うと我慢ができなかった。 「哲人?・・く、苦しいって・・」 「すいません・さっきもさんざんアナタを抱きしめましたけど・・。でも、もう少しだけこうさせてくれませんか。アナタが、ほんとに愛おしくて。・・離したくないんです。間違いなくアナタは最高の恋人です」 「哲人・・」 『それは・・でも、琉翔・・さんに言われたからって、どうしてオレたちのことをすんなり許してくださるんですか?オレはまだ高校生で、しかも・・男同士です。もちろん間違ったこととも恥ずかしいことだとも思っているわけじゃないけど』 『なら、堂々としていなさいな。どういう経緯で二人が知り合って愛し合うようになったのかわからないけど、このマンションで一緒になったのは偶然なんでしょ?直央がやけにこのマンションにこだわったのは、正直変だなとは思ってたけど』 (偶然の出会いのはずだ。直央さんは“たまたまネットで見て”ここを気に入って不動産屋に行った。いくら本家といえど、そこまでの細工ができるはずはない。その後のことだって・・) 「琉翔は・・はっきりいって一族の中では異端の存在です。なのに、なぜか彼の意見というか我儘は通されてしまう。得体のしれない人です」 「ただのラノベ作家じゃないってこと?」 「ラノベ作家だってのも、亘祐に聞いて初めて知ったのですがね」  むすっとした表情になりながら、哲人は言葉を続ける。 「うちの一族のモノのことですから、勝手に純文学だと思っていました。・・ていうような一族です、我々は。だからこそ、アナタとの交際を許したというのが解せないのですが・・。ま、それはもういいです」 「えっ?」 「オレがアナタを手離せない以上、何かあれば本家と全面戦争も辞さないです、けど、アナタだけは命に代えても守ります。アナタは・・オレの運命なのですから」 「運命って・・んな大げさな」 「大げさ・・ですか?でも・・」  直央の母親の態度は、おそらく重要なことを隠していると哲人は思っている。 (もしかしたら、直央の出生に何か・・あるいはオレの・・。じゃなきゃ、あっさり受け入れすぎだ。あんなに、直央を大切に思っている人が)  自分も同じだから、と哲人は思う。あんなに嫌っていた男同士のソレに自分が溺れるようになったのは、もしかしたら自分が意識していなかった性癖だったのかもしれないけど、きっかけは間違いなく直央の存在だと。 (オレは、小学校の頃の記憶があまり無い。気にしないようにしていたけど、もしかしたら・・)  が、今はソレを口に出す気は無い。過去に関係なく、この人を好きになったはずだからと。 「運命・・でしょ?未来永劫続く、オレとアナタの運命の物語です」  知れば何かが変わるかもしれない。けれど、それは決して自分と直央の間を裂ける何かではないと哲人は思っている。 「キス・・していいですか?」 「えっ?い、いいけど・・。ち、調理は途中でやめられないからね!手順が大事なんだから・・」 「ん?あっ・・ああ」  直央の顔が真っ赤なのに気づいて、哲人は微笑む。抱き寄せたときから、直央の身体の変化にも気づいていたから。 「本当にアナタは・・アナタだけが正直にオレに接触してくれる。愛してますよ、本当にアナタだけ・・」    そして、二人は再びベッドの上で抱き合う。今度はもっと余裕のあるソレで。 「アナタを愛しています。偶然だろうが運命だろうが関係ない。今のアナタを、感じさせてください」    To Be Continued

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