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第15話
「あ・・あん・・や・・哲人ぉ」
「久しぶりに抱き合ったのに・・何でそんなにつれない?もしかして・・」
「久しぶりって・・中間テストの期間だけじゃないかあ。き、気を使ってご飯食べ終わったら自分の部屋に帰ってたのにぃ。ひ、ひど・・あ、あっ!や・・あん・・。へ、変になり・・そ」
執拗に胸の頂を舐められ、勃立したソレもさんざん擦られ既に一度絶頂に達しているのに、哲人の攻めはずっと続いていた。
「あん・・また・・きちゃう。そんなにぺろぺろされたら・・あっ、あっ・・もう・・」
「いいよ、またイって。直央の感じてる声、聴きたいから」
「も、もう・・哲人のイジワルぅ。ぜ、全然後ろは触ってくれなく・・ん」
「・・四つん這いになってくれる ? 」
そう言われて、直央は素直に要求された体勢になる。そして、口元に近づけられた哲人の雄々しく勃立したソレを口に含む。
「どうして直央はそんなに優しい?オレのワガママにいつでも付き合ってくれて・・。いい加減嫌にならないか?」
散々、恋人の身体を好きにしておきながら、結局はそう確認してしまう自分が情けないとは思う。
「でも・・あっ・・くっ。ねえ・・辛くない?」
普段は滅多にフェラなどさせない。なのに、今夜はとても甘えたい気分になる。
「っ・・ふ・・い。あっ、あ・・」
先ほどまでの直央の痴態も思い出し、ソレは更に大きさを増す。
「っ!・・ご、ごめん・・流石にもう無理・・。哲人の大きすぎるんだもの」
「ん・・いいよ。無理させてごめん。キスしてくれる?」
「哲人・・ん」
またも直央はすぐに唇を近づける。そして舌を触れ合わす。
「ん・・ふ・・」
深く深く舌を入れながら、哲人の指は直央の窄まりに挿入される。
「!・・ひぁ・・っ」
「挿れてほしかったんだろ。オレも、早く中を触りたかったんだ」
「た、頼んでも触ってもくれなかったくせに・・ぃ!や・・あん・・そ、そんなにかき回した・・ら」
「ん・・もうぐちゅぐちゅいってる」
と、哲人は小さく笑う。
「凄いよ、直央のココ。この部分を触ったら・・」
「いやあ・・あっ・・そこ・・あっ」
「キュッて締まるんだ。ほんと正直だよな」
弱い部分をワザとそっと撫でられ、切なさで下半身を揺らす。
「いや・・もっと・・ふ・・ぁ っ・・ああ!」
哲人の指先に急に力がこめられ、強い刺激を感じる。
「あ!もっと擦って!」
つい大きな声で要求してしまう。
「ふふ、恥ずかしくないのか、直央は。可愛い顔して、ほんとにエッチなんだから」
「お、オレより哲人の方が・・。やあ・・もっと奥に・・」
自分が一番感じるところがあるから、と相手の指を奥に誘おうとする。
「流石に、この体勢じゃキツイかな。だから・・」
そう言いながら指を抜く。
「いや・・」
「今度はオレのを直接挿れるからさ、身体の方向を変えてくれないか」
「!・・うん」
自分に背中を向けたまま、再び四つん這いの体勢になった直央の背中に哲人は口づける。
「ひっ・・・あ」
「直央の背中、スベスベで気持ちイイよ、触るだけでも。こんな綺麗な肌に・・」
薄くはなっているが大きく裂かれたような傷がある。アメリカにいたころに、ナイフを当てられたものだと直央には教えられていた。そこだけではなく、肩と脇にも裂傷がある。
「優しくするから、オレは。身体だけじゃない、直央の心も全部。絶対に傷つけない・・」
本気でそう思うから、セックスの度にその傷を哲人は撫でている。
「もう、十分優しくしてもらってるよ。毎日幸せだもの。だから、お願い・・欲しいの。哲人の・・おっきいのが凄く欲しいの!早く挿れて・・」
本当は恥ずかしいのに、と直央は羞恥とそしてずっと焦らされていたがゆえの期待に身体を震わす。初めて身体を繋いでから約三か月。ほとんど毎晩のように抱かれ、身体を乱され嬌声をあげさせられているのに、身体は素直に反応するのに、恥ずかしいという意識は無くならない。
「もうこれだけ濡れまくっているから、ほら・・すんなり入るよ、直央のココに」
「ん・・あっ・・」
直ぐに、淫靡な音がさっきよりも大きく聞こえてきた。
「あっ・・あっ、あっ・・」
「お望み通り、もっと奥まで入れるから・・」
治ったばかりの左手で直央の胸の先っぽを撫でながら、哲人が耳元で囁く。
「っ!・・はっ・・あ、あん」
(ほんとに、哲人ってば、もう・・)
セックスの経験は女性とも無いと言っていた哲人だったが、最初から抵抗なく直央のソレを舐め、指も挿れていた。
(オレだって哲人が初めてだから、比べることなんてできないけど、無駄に器用なのか?いつも・・気持ちよすぎて)
哲人は高校生。だから、当然六月に入ったこの時期は中間テストがある。都内有数の進学校の首席である哲人は、もちろん成績を落とすわけにはいかない。
(なのに、その前夜まで求めてくるって・・どんだけ性欲が強いんだよ。散々クールぶってたくせに)
「強いのは性欲じゃなくて、直央への恋心だよ」
「へ?・・や、オレの心読んだの?・・あっ!」
思わず気を抜いた瞬間、ソレは来た。
「ああっ!」
ずしん、と下腹部が重くなる。同時に一番弱い部分を擦られ、快感のあまり自分の腕で自分自身を支えていられなくなり、布団の上に突っ伏す。
「そんなにお尻を上げて・・。そこまでオレを煽らなくても、オレは直央を気持ちよくさせるって」
腰をゆっくり動かしながら、手は直央のソレを弄ぶように触る。
「はあ・・ん。も、もっと激しくても・・いい・・から」
恋人の動きのもどかしさに、つい恨めし気な声を発してしまう。
「もうイキたいの?」
「!・・だ、だって・・」
気持ちいいけど、辛いのも事実だと正直に告白する。
「も、もう変になりすぎて・・イカせて・・よ」
「うん、わかった」
と、言いながら哲人は自分の身体に力を入れる。
「気持ちがいいのは、オレも同じだから」
それは正直な気持ち。淡白なはずの自分が、なぜか恋人のこの身体に溺れ続ける。
(この人を・・一度でも抱けば離れられなくなるはずだ、他のオトコも。ダメだ、そんなの!)
「イッて。オレの・・モノだけで」
「ねえ、哲人」
「うん?」
裸のまま、二人は布団の中で抱き合っていた。
「学校で、何かあった?」
「・・どうして、そう思うんだ?」
哲人はあくまで微笑みを絶やさない。そんな彼の顔を、直央はさらりと撫でる。
「!」
「無理には聞かないけどね。けど、言えることは何でも言ってよ。それで、少しでも哲人の心が軽くなるんなら、オレは・・」
「ふふ」
たまらなくなって、哲人は直央の唇に自分のソレをそっと押し付ける。
「っ・・」
「貴方の身体もオレには十分魅力があるものなんだよ。感じているから、求めたくなる。気持ちいいんだ、本当に」
「そ・・れは」
真っ赤になった恋人の頬に口づけて、そしてじっと見つめる。
「てつ・・ひと?は、恥ずかしいって、そんなに見つめられたら・・」
「もっと恥ずかしいことを口にして、いやらしい身体をオレに見せているのに?」
「そ、それは・・。だって、哲人がそうさせるから。・・だいたい、哲人にしかそんなとこ・・見せられない・・もの」
そう言いながら、直央は枕に顔をうずめる。が、直ぐに少しだけ顔を横向きにして呟く。
「・・バカ」
と。
「!」
「・・会った時からカッコイイ人だって思ってたって言ったろ?そんな人に・・ほんとはこんな身体見せるの嫌だったんだ。だいたい、哲人はあれだけ“ゲイは嫌いだ”って言ってたんだし」
「それ・・は」
確かにそうだった。今でも理解できているとは言い難い。
「でも・・直央は別なんだ。とにかく、直央と一緒に気持ちよくなりたい。直央を・・愛したい」
直央がゲイだったからこそ、自分に興味を持ってくれたのだろうとは思う。自分は、彼に“懐かしさ”を感じていたのだけれど。
「どんどん魅かれていく。好きで好きでたまらない。ずっと、一緒にいなくては自分が保てなくなりそうな気がするほどに」
「だ、だから・・そこまで言われると照れるんだってば。ほんとに・・哲人こそ自分の魅力に気づきなっての」
直央は赤くなった顔を隠すように、掛布団を頭まで被る。
「今夜の哲人は、いつもよりよく喋るよね。まあ、普通の高校生ならテストが終われば気分はハイになるだろうけど、哲人はそういうノリの人じゃないでしょ。何があったの?」
「テストが終わって嬉しいのは事実なんだけどな」
と、哲人は苦笑する。
「誰にも文句言われずに、直央を抱けるから」
「あ、あのさ・・」
『哲人の頭の中って、余裕があるのかエロで埋まってんのかよくわからないんだけど、とりあえず甘やかさないで』
「って、鈴ちゃんからLINEあったんだよね。哲人ってば、学校で何言っちゃってんの」
クールキャラだったはずなのにと、直央は頭を抱える。と、布団を掴んでいた手をソレから離した途端、自分の顔を覆っていた布団が取り払われる。
「!・・何すんの!」
「ずっと我慢してたって言っただろ。オレはその、別に性欲が強いわけじゃない。直央とこうなるまで本当に何もしなかったんだ。けど・・直央の身体を知ったらもう・・我慢できなくて」
そのまま、唇を合わせられる。
「ん・・ん・・ふ」
「あ・・また・・」
「だ、だから!学校で 何があったか聞きたかったわけでオレは・・」
こんなつもりじゃなかったと、直央は顔を赤くしたまま抗議の声を上げる。
「性欲が強くなくても、哲人は自重って言葉を無視するよね」
「嫌だった?」
そう言いながら耳たぶを甘噛みされ、直央はつい首を横に振ってしまう。
「違う・・けど。でも・・ごまかさないでよ」
「そういうつもりは無かったんだけどな。でも・・ごめん」
流石に荒い息をつきながら、哲人は直央の髪を撫でる。
「・・たいしたことじゃないんだ。ただ、生野に直央とのことを聞かれただけ」
「えっ、生野くんに?」
見るからにモテそうで、けれど間違っても“セックス”なんて言葉を発しそうにもない生徒会書記で哲人の同級生の生野広将いくのひろまさが、自分たちの何を気にするのだろうと、先ほどまでのあれやこれやを思い出して、直央は今日何回目かの赤面を恋人に向ける。
「オレが直央の何を好きになって、そこまで気持ちを吐露できるのか・・って」
「哲人って、別にゲイじゃないよな?そんで・・その・・」
「はっきり言いなよ、いっちゃん。哲人はスケベでセックスが大好きなのかって」
「「り、鈴!」」
哲人と生野、二人が同時に慌て言葉を発する。
「なんでよ、事実でしょ。てか、悪いことじゃないじゃない。恋人だもの、セックスするのが普通でしょ。確かに、哲人がソレをあからさまにしすぎるのはどうかと思うけど、初恋に溺れる人ってそういうもんだから」
鈴はあはははと笑いながら、わざとらしく大きくため息をつく。
「ふぅー・・で、いっちゃんは哲人の何を参考にしたいの?」
「や、ただ・・そんなに人を好きになれるのってどうなのかなって。・・哲人がしかも男性を好きになるのって想像できなかったから」
生野は困ったような表情で答える。
「もしかして、生野は誰か好きになったのか?・・もしかして男性・・」
「ち、違うって!」
と、生野が慌てる。が、その顔は哲人や鈴が見たことのないほど、照れたソレになっている。
「別に隠すことじゃないでしょ。さっきも言ったけど、悪いことじゃないよ?人を好きになるのはその人の自由。例え、同性愛でもね」
「人を好きになるのは自由・・か」
生野の表情が少し難しいソレになる。
「生野?」
「セックスって・・恋愛にそんなに大事なもの?」
「は・・はあっ!?」
思いがけない生野の言葉に、哲人は驚き鈴の表情は僅かに動く。
「な、なんで・・てか生野、オマエ・・」
「・・・いっちゃんが誰を好きになろうと、ボクらに止める権利はないんだけれど・・」
鈴は、複雑そうな表情で生野を見つめる。
「鈴・・」
「鈴?」
鈴は小さくため息をつく。先ほどのわざとらしいソレではなく、本当に困っているような、が諦めてもいるような。
「・・自由にはそれ相応の責任も付いて回るんだ。いっちゃんなら、そんなことも承知だと思うけどさ。でも、哲人に相談するのはちょっと違うと思うな。それとも、そんなに自分に自信があるの?」
「っ!」
「哲人は彼氏が好きだから、抱けるんだろ?で、彼氏さんもまた然り。嫌いな相手に抱かれて、しかも離れることができないって・・」
「えーっと・・」
生野の言葉に哲人は困惑気な表情になる。
「つまり、その・・生野の好きな人はその・・セックスのみで繋がってる相手がいるってことか?」
「だ、だから好きだとは言ってないだろ。ただ、放ってはおけない存在ではある。・・ただのセフレだっていうならオレだって・・けど、多分そいつのためにならないと思うから」
「助けたい・・ってこと?」
鈴が聞く。
「そんなこと、向こうが望んでいるのかわからないしオレにその権利があるのかわからない、けど・・」
『オレだって、本気の恋愛をしたっていいだろうがよ!家族に置いて逝かれたあの日から、 家族を持つことは諦めてる。けど・・本気で誰かを好きになったって・・いいだろ。それが例え誰かの恋人でも、運命を感じたんなら、それに縋ったっていいだろ・・』
『じゃあ、どんな恋愛ならオレには許されるんだよ。誰なら・・オレを特別な存在にしてくれるんだよ!』
「アイツに孤独を感じさせたくないっていうか、哲人みたいに自分を変えれるほどの恋愛もできるって教えたいというか」
「オレは、直央に死んでくれても構わないって言ったんだけどな」
恋人と出会ったころを思い出して、哲人は苦笑する。
「へっ?」
「本気で嫌いだったんだ、直央のこと。直央だって、オレにずっと敵意を向けていた。オレたちの始まりだって、きっかけは何であれセックスだよ。でも、本当の気持ちを自分で確認するまでは時間がかかった。好きだから離れたくない、この先何があろうと絶対一緒にいるって思うようになるまでは」
「哲人・・」
「まあ、哲人のソレは度が過ぎていると思うけどね。つうか、哲人は早く帰りたかったんじゃないの?今日は、仕事にならないと思うからさっさと帰っていいよ」
「そ、そんなことまで言ったの!?生野くんに」
あの真面目な彼がどういう表情でそんな話を聞いていたのかと想像するだけで、顔から火が出そうだと直央は思う。
「生野は真剣に考えてるって思ったから、変にボカシて答えない方がいいと思って。まあ、あいつの口からセックスなんて言葉が出てくるのはオレも驚いたけど」
「生野くんに好きな人ができたってことだよねえ。哲人に聞くってことは、やっぱ相手は男性なのかなあ」
「・・」
(まさか、とは思うけどな。まあ、鈴が上手く聞き出しているだろうけど)
『彼の背後にいる人物が・・元白狼のメンバーだとしたら、どうする?』
(オレだって、自分の環境を考えたら本当は誰かに本気で恋をしたらダメなのもわかっていたけど。でも、そんなの無理だから、もう)
そう思いながら恋人を抱きしめる。唇や肩や胸に口づけながら、再び自分の中心が燃え上がるのを感じる。
「哲人・・もう一回する?」
「!・・いいのか?」
てっきり呆れられるだろうと思っていた哲人は、驚いて聞き返す。
「本当にいいの?」
「だってオレも・・」
と、直央は自分のソレに哲人の手を導く。
「こうな っちゃったから」
「ふふ・・やっぱり直央はオレの最高の恋人だよ」
抗えないと思う。この人の魅力には、と。
「好き・・」
「なんてことを言ってるころかな、あの二人。性欲底なしだもんねえ」
自室のパソコンに向かいながら、鈴はくくっと笑う。
「ま、哲人も薄々は気づいたんだろうけどね。いっちゃんが誰を好きになったのか」
パソコンの画面には、ある人物に関しての調査結果が示されていた。
「8年前・・ね。偶然じゃないよな、これは。けれど、あの心中事件の詳細がどうしても掴めない。それがわからないと、いっちゃんの初恋を素直に応援はできないんだよねえ」
哲人が帰った後の、生野との会話を思い出しながら、鈴はキーボードを叩く。ある指示を出すために。
「侑貴と何かあった?」
「えっ?な、何かって・・普通には会って・・いるよ。殴ったことも謝った。向こうは相変わらずだけど」
「じゃあ、告ったわけじゃないんだね?」
念を押すように鈴は聞く。
「こ、告ったって・・」
「だって、いっちゃんの好きな相手って侑貴のことだろ。バンド内恋愛は、あまりお勧めしたくないんだけどな」
「違うって・・。けど、キスはした」
「!」
生野のその告白に、流石に鈴は驚く。
「キス・・したって言った?いっちゃんが侑貴に?」
「レコーディングの前に侑貴がキレちまって。落ち着かせなきゃって・・思った。あいつが、特別な存在を欲しがってたから。何かに縋りたいんなら、パートナーのオレを頼ればいいと。それが、その気持ちが恋なのかどうかは正直わからない」
顔を赤くしながらも、生野はきっぱりと言い 放つ。
「・・侑貴の過去の話も聞いたうえで、そこまで気を使ってそれでキスしたっていうんなら、いっちゃんの性格から考えてもただの優しさじゃないとは思うけどさ。侑貴の背後にいる人物が、普通の人間じゃないこともわかっている?」
「一応、鈴たちを見ているからね」
と、生野は小さく笑う。
「オレみたいな一般人がたぶん関わっちゃいけないんだろうけどさ。けど、あのままじゃ侑貴は哲人たちに迷惑をかけ続ける。止められるのはオレだけだろ?侑貴にも“頼れ”と言っちゃったしな」
「・・そんなことを考えるいっちゃんをボクは止めたいんだけどね。生半可な覚悟で侑貴にソレを言ったんじゃないとは思うけど」
鈴の表情は険しいものになっていく。
「ただの恋愛とは違う・ ・ってボクが言っても信じる?」
「恋かわからないって言ったろ?性の対象としても見れてるわけじゃない。・・キスはしたけどね。でも実際問題として、侑貴とこれから大事な仕事をしていくんだ。・・関わりたいんだよ、アイツに」
「っ!・・き、急に呼び出して何を・・はあ・・っ」
「心外だな。最近構ってあげていなかったから、寂しがっていると思ったのに。まあ、妙な仕事に関わっているとは聞いていたが」
「っ!」
ベッドに寝かされ腕を縛られた状態の侑貴は、キッと目の前の男を睨む。
「何が・・構って・・やる・・だ。い、忙しいんだよ、オレは・・うっ!さ、触んな・・ひっ」
「気持ちいいんだろ?いつもオマエが触れてほしいとせがむところじゃないか。キスまで嫌がって・・新しいオトコでもできたか?」
全裸の侑貴のソレを触りながら、その男はくくっと笑う。
「あっ、あっ、あっ・・・んなの・・いつものこと・・だろ。オレは・・オトコ無しじゃいられない身体・・だしな。オマエが・・そうさせたくせ・・っ!あっ、ああ!」
「といいつつ、けっこうご無沙汰だったんだろ?いやに真面目に学生と仕事をしてたみたいだからな。ほら、指を挿れてちょっと穿っただけで、もうドロドロになっているじゃないか」
「あ、亮・・てめえ・・オレを弄って・・何が面白い?・・ひっ・・いい・・ぃ・・あっ」
「余計なことを考えずに、快感に身を委ねたらどうだ?それとも、新しいオトコがそんなにオマエを喜ばせてくれているのか?」
侑貴の身体は腕だけが拘束されている。が、侑貴はベッドから離れられないでいた。
「へ、変な勘違いしてんじゃねえよ。オレに・・んな相手はいな・・あっ、あっ、あっ・・・」
「身体は正直なのにな。だから、私にされるがままになっているのだろ?私を嫌い、私から逃れたいと願っているのに」
「なっ!・・くっ・・っ・・オレは別に・・」
男・・高瀬亮は侑貴の身体を抱きしめ、口づける。指は窄まりに挿れたまま。
「っ!・・っ・・ふ」
口に深く舌を入れ、亮はその舌先で相手の口内のあちこちを突き、侑貴の舌先も突く。
「あっ・・や・・あん・・」
「・・これでも、私も本気なのだがな」
亮が耳元で囁く。
「あ、生憎とオレは・・うっ・・アンタに本気になったことはねえよ・・あっ!」
嫌悪感でいっぱいなのに、その声を聞いて侑貴は反応してしまう。8年前と変わらないそのバリトン・ボイスに。
「本気じゃなくても、身体が反応するってことはオマエはそういう男なんだよ。こんなに私の指を締めて・・。可愛いよ、オマエは。8年前に初めて抱いたあのときから、変わらずに」
そう言いながら亮は指を引き抜き、濡れたソレを侑貴の胸の頂に擦りつける。
「ひあっ!あ・・あっ・・ああん。や・・中・・挿れ・・あ・・」
駄目だと思う。受け入れてはいけないと。自分が求めるキスもこうではないはずだ、と。
『結構、ドキドキしてんだよ、これでも』
『なんせ、オレのファーストキスだからな』
ただの真面目な男だと思っていたバンド仲間からの不意のキスを思い出す。
「オレに抱かれながら、他のオトコのことを考えるとか今までは無かったのにな。同じ大学の可愛い男の子か?それともベーシストのイケメン・・か?」
「な!・・」
どこまでバレているのかと驚愕の表情になる侑貴に、亮は笑いかける。
「くくっ。別に他のオトコに抱かれるなとは言っていないだろうが。オマエが誰に恋をしてもかまわない」
「あ・・」
亮の言葉に、思わずホッとする侑貴を見て亮は言葉を続ける。
「本当にオマエは正直だな。そしてココも・・。オマエが誰を好きになろうと、私からは離れられない。・・そうだろ?」
亮が上下にしごく侑貴のソレは、先端が敏感になりすぎていて痛いくらいだ。もちろんソコからは液体があふれ出て亮の手を汚している。
「イキたいんだろう?中もイイ具合だ。オマエは初めての時から、私のコレでよがっていた。無論、今夜もだ」
「く・・そっ」
高瀬亮の年齢は40代のはずだと侑貴は思っている。少なくとも自分よりは20は年上なはずだと。が、精悍な顔つきと無駄な脂肪のないその身体は、8年前に自分を初めて抱いた時と変わらないとも感じている。そして、アソコも。
「別に変なクスリを使ってはいないさ。“私には”な。そして“オマエにも”、だ」
「クスリ?」
そのワードに侑貴はピクリと反応する。
「ま・・さか」
「私は本気でオマエを愛していると言っただろ。そういう相手には使わないさ。大事にしたいからな」
「つうことは、使った相手がいるってことだな。しかも、ただの媚薬だけじゃ・・ああっ!ひっ・・あ」
窄まりに屹立したソレを挿れられ、侑貴は声を上げる。その様子に亮は満足そうに腰を振る。
「安心しろ。オマエに死なれるわけにはいかないからな。何度も言うが、私は最初からオマエに本気だったんだ」
そう言いながら入り口付近で暫く焦らすように抜き差ししていたかと思うと、ゆっくりと奥へとソレ を侵入させてきた。平均よりは太いであろうソレで肉壁が擦られていく。
「あっ・・ひ・・ああっ」
否定できない快感に意識が持っていかれそうになる。
(ダメだ・・こんな人殺しの思うとおりになったら。コイツは・・)
『ショウがウチのバンドに入るまでベース担当してたヤツがまあ・・アイツらにヤラレちゃったんだよ。アンタの彼氏はアンタを守れたけど、オレは駄目だった・・ってわけ』
自分が直央に言った言葉を思い出して唇を噛む。
(たぶん、彼をヤッたのは亮たちだ。彼は何度もオレに打ち明けようとしていたのもわかっていたのに)
自分が殺したのも同じことだと考える。気が付けば、目に涙が溢れていた。
(う・・そっ)
「泣くほど感じさせているの か、はたまた・・」
亮が薄く笑う。
「どちらにしても、侑貴は私のモノだよ。もっと奥まで突き上げてほしいのだろ」
「ふあっ・・や・・ダメ・・」
抵抗したいのに、身体は勝手にソレを締め付け自分に快感をもたらす。
「あ・・は・・っ。いい・・ソコ・・・ああ」
唇に肩に胸に口づけられ全身に快感がまわる。突き上げられたソレは侑貴の弱いところを撫でまわす。
「ああ!いっ・・もっと・・っ」
「憎みたい相手に抱かれてよがっている自分を、他のオトコが受け入れてくれると思うか?くくっ」
「っ!」
縛っていた布を解かれ、自由になった腕を侑貴は相手の背中に回し、もっと深い挿入を要求する。
「はあっ、もっと・・いいのっ!んん・・イイ!」
ダメだと思った。もうこの身体からは離れられないのだと、侑貴は観念する。
「もっと・・ん・・ソコ擦って・・やあ・・・はあ・・ん」
「相変わらず淫乱なコだ。並のオトコじゃ、オマエを満足させられないだろうね」
一番奥を己のソレで突き、腰を揺らして侑貴の快感を高める。
「や、もうイク・・・あっ、あっ、あっ・・イク・・いい!」
「意識が飛ぶまでヤるつもりもなかったんだけどな」
侑貴の身体に布団をかけなおし、亮は自分の衣服を整える。
「哀れだな。自分の元カレを死に追いやった相手に抱かれて喜ぶとは。ま、薄々は気づいていたのだろうけど。直ぐに他の男を見つけたから案外本気じゃなかったのかもしれないが・・」
そう言いながら侑貴の髪を撫でる。
「オマエのおかげで、十分儲けさせてもらったよ。自分でその片棒を担いでいたとも気づかずに、ただオレを憎んで・・可哀想なヤツだな、侑貴」
侑貴に群がるオトコはどれも極上だったと、亮は笑う。
「両親同様、私のためにいい働きをしてくれるよ。けど、両親のように簡単には死なせないよ。この私を・・」
本気にさせたのだから、と呟く。
「それだけが誤算だったかな。いや、もう一つあるか。日向哲人・・アイツもアイツの両親同様、私の邪魔をする。けれど・・」
そこまで言いかけて、亮はある方向を見る。
「赤蛇の遠夜くん、だっかな。キミの知りたい情報は手に入ったかい?・・そして哲人に伝えろ。私を舐めるな、と。まあ、キミが生きていればの話だがな」
「げっ、んだよ、バレバレじゃん。オレの名前までさ。鈴先輩に殺されちゃうな、こんな失態がバレたら」
亮の屋敷から少し離れたところに停めた車の中で、黒木遠夜は慌てる。
「つうか、盗撮されてんのわかってて男とのセックスシーンをオレに見せつけてたわけ?わあ、あの人って変態じゃん。イイ男なのにもったいない」
そう言いながら、遠夜はパソコンをリュックにしまう。
「鈴先輩みたいな可愛い女の子ならともかくとして、男には嫌だなあ、いくらイケメンでもさ」
周りの気配を伺いながら、車から出る。
「直ぐにオレを襲わなかったのは、位置を探るためだろうけど。・・10時の方向、ね。二人か・・思ったよりも早いや。けど、この暗闇の中でこのオレを捕らえるのは無理・・っ!」
突然、肩に痛みを感じ手で押さえる。
「ありゃりゃ、けっこう血が出てるのね。銃で狙いにきましたか・・」
痛さに思わずうずくまる。すると、頭の上を何かがかすめて飛んで行った。
「わあ、アニメみたいな展開だね。最初から頭を狙えばいんじゃね?とも思うけど・・」
「ごちゃごちゃ言ってねえで、さっさと逃げんぞ!」
頭上からの声に、遠夜の表情は明るくなる。
「涼平先輩!来てくれると思ってましたぁ。聞いてくださいよぉ、高瀬のやつ見せつけるんですよ、オレに。流石にちょっと勃っちゃったかも」
「オマエなあ」
涼平は一瞬頭を抱える。が、直ぐに顔を上げて怒鳴る。
「んなこと言ってる場合じゃねえだろうが!さっきの二人はオレが動けなくしたが、直ぐに他のヤツがくる。早くバイクの後ろに乗れ」
そう言いながら、涼平は遠夜の頭にヘルメットを載せる。
「片手でだけでもいいから、オレに掴まれ!」
「あー・・涼平先輩に惚れてもいい?」
「・・そのパソコンだけ回収してオマエはそこらに転がしてもいいんだがな」
「んもう、ツンデレなんだからあ」
「医者じゃなく、葬儀屋に直行してもいいか?」
「すいません、肩がめっちゃ痛いです、黙ります・・・」
二人を乗せたバイクが動き始めた数秒後、遠夜が乗っていた車が爆発し跡形もなくなっていた。
「まあいい・・あの本家にこれ以上何もできるとは思えないからな」
To Be Continued
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