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第7話※
少しは近づいたかと思ったクラウスとの距離だけど……。
あの外出の後からまた元通り。
相変わらずクラウスは部屋に籠っているし、俺はカウチに座ってクラウスの部屋の扉が開かれるのを待っている。
変わったとすれば……クラウスの部屋へ出入りしていた女性が来なくなったこと……。
数日が過ぎて、珍しく来客があった。
何か書かれた紙を広げる騎士二人。
「神子様……王がお会いしたいとの事で足をお運び頂きたく、お迎えに上がりました」
俺には読めないけれど招集命令的な手紙だろうか?
「……どう致しますか?クラウス様」
「知るか、勝手にしろ」
セルリアさんに訊ねられ、扉から顔を出したクラウスだがそれだけ言うとすぐに引っ込んでしまった。
「申し訳ありません、私はクラウス様のお側を離れる訳には……断りますか?神子様なら……」
「セルリアさんがクラウスの側を離れられないことは分かってます。王様なら会ったことありますし、クラウスから貰ったお守りもあるので大丈夫、俺だけで行ってきます」
クラウスから貰った短剣もあるし、自分の身は自分で守らないと……。
と言うよりあの王様だし危険はないだろう、俺は騎士達に付き添われ王の元へ向かった。
前回はクラウスとドキドキしながら下った道を、今日は一人で馬車に揺られている。
王様は何の用だろう?
進展が無いからでて行けとか言われるのかな?
クラウスから離れたくない……路頭に迷う心配から、クラウスと離れる事への恐れへと変わっていた。
内心びくついていた俺が通されたのは王座の間ではなかった。
「神子様……クガ タクト様でしたか?……ようこそお出でくださいました」
……誰?
煌びやかなドレスに着飾られた女性が椅子に座って俺を見下して笑っている。
初めて会った筈なのになんか既視感。
髪がピクピク引っ張られる。
「今日は神子様にお願いがございましてお越し頂きましたの」
ヘビに睨まれた様に脂汗が滲んで来た。
「いえ……俺は王に会う為に……」
「まぁまぁ、宜しいではありませんか。聞けば神子様とクラウス王子との仲はお変わりないとの事……どうでしょう?心を壊した王子より……我が息子、ガバルと愛を繋げてみませんこと?王子ならば誰でも宜しいのでしょう?」
「ガバル?」
そうか……この嫌悪感の正体はそれか……。
王子なら誰でも良いだなんて横暴な考えだ。
「お断り致します。俺はクラウス以外欲しくない」
さっさと帰ろうと扉を開けた向こうに……ガバルが立っていた。
思わず後ずさった俺の腕をガバルが掴み、触れられた部分から鳥肌がたっていく。
「つれないですね……俺はあいつより強い、あんな庶民出の女の子供より金も、後ろ楯もある。何一つ劣っているとは思わない……此方の方も……」
ガバルの手が俺のお尻を揉んだ。
「……全てがクラウスの方が上だ」
この母親やギスギスしたこの場の空気よりマリーさんやハリスさんに育てられたクラウスの方がよっぽど愛を知っている。
俺の腕を掴むガバルは楽しそうに笑った。
「神子様はあの男に惚れてしまったのですね、お可哀想に……あの男に人を愛する事など無理ですよ。未だに神の力が宿らないのが良い証拠だ」
「煩い!!クラウスを悪く言うな!!帰るから離せ!!」
抵抗して暴れても、簡単に体を肩に担がれた。
「逃がす訳無いでしょう……くくくっ。それでは母上、失礼致します」
「上手くやるのですよ、ガバル」
「離せ!!離せよ!!」
背中を叩いても腹を蹴ってもビクともせずにガバルは悠々と廊下を進む。
「はは……神子様、そんなに暴れると落ちてしまいますよ?」
大きく体を落とされて、ガバルの背中を滑り落ち……ギリギリの所で足を掴まれ宙づりにされて、ガバルが歩く度に顔が床で擦れた。
王様やレイドナードさんの様子から、この国で神子は大切に扱われるのかと思ってたけど……必死に手で顔を庇う。
目的地に着いたのか足を止めたガバルが急に足を掴んでいた手を離し、俺は顔から落下する。
「ぐっ!!」
「さぁ、神子様!愛を繋げましょうか?」
手を開いたガバルの向こうに大きなベッドが……まさか……愛を繋ぐって無理やり体を繋げ様って言うんじゃ……。
這いずって逃げようとした俺の足をガバルが掴む。
「俺がたっぷり可愛がってやる……拓斗」
「嫌だ!!離せ!!」
咄嗟にクラウスから貰った短剣を構えたが……ガバルの剣に振り払われて……折れた。
初めての……プレゼント。
「そんななまくらで抵抗なんて哀れなもんだな」
折れた剣に気を取られた俺は、ガバルの腕に抱え上げられベッドへ投げ出された。
「離せっ!!離っ!!!……んんんっ!んんっ!!」
上から覆い被さってきたガバルに唇を奪われて、無遠慮に舌が入り込んで来る。
「……っ!?っのクソがっ!!!」
ガバルの舌を思い切り噛んでやると頬を殴られて……脳しんとうを起こしたのか目の前がクラクラして立ち上がれない。
「……助け……クラ……ス……」
「話に聞いていたよりも随分、気性が荒いじゃないか……おいっ!!カスタリスの薬をあるだけ持ってこい!!」
「ガバル様!あの薬は多量に使用すると精神が……」
「構わん、神子の愛さえ奪えば神子の頭が壊れていようがいまいが関係無い」
ガバルに髪を掴まれ、上を向かされた口に何かを押し込まれる。
冷たく固いガラス瓶から液体が流れ込んで来て、吐き出そうとしても無理やり押さえつけられ、息が出来ない程の量に溺れそうになり……液体が喉を通って俺の体内を流れ落ちていく。
「せいぜい甘い夢に抱かれるが良いさ……」
ぐるぐると激しい目眩に襲われ……ガバル達の声が遠くなり……周りの景色も見えなくなった。
クラウス……。
助けて……。
『俺は自分の身を危険にさらしてまでお前を助けるつもりはない』
クラウスの言葉が頭に過り……俺の意識は混濁していった……。
・・・・・・
「……くと……拓斗……」
愛しい声に目を開くと、目の前にクラウスの綺麗な顔が微笑んでいる。
「クラウス……やっぱり助けにきてくれたんだ……」
嬉しくて、嬉しくて……クラウスの首にしがみつくと……優しいキスをくれた。
「拓斗……愛してる」
初めて言われたクラウスからの愛の言葉に俺の心は歓喜して涙を溢した。
「やっと想いが通じた……嬉しい……」
俺からもキスをせがみ、深く口付けを交わしていく。
「拓斗……お前の愛を俺にくれ……誰かに奪われる前に……」
「俺の……愛……うん。クラウス……愛してる」
もう一度唇を重ねるとクラウスの腕が俺の足を持ち上げた。
オイルの様な物が塗られ……前置きなくクラウスのモノが押し込まれ、電流を流されたような痛みが全身に走った。
「いゃあぁぁぁっ!!!」
目の前がチカチカして足が痙攣する。
「まっ……ぃぎっ……!!」
クラウスが痛みに震える体に杭を打つ様に重く腰を打ち付けて来る。
「悪い……拓斗。我慢出来ないんだ。愛してる……拓斗」
「ク……クラウスッ……!!」
手を伸ばしてもその手は空を彷徨うだけで……。
「ひっ!いっ!………っ!!」
悲鳴しか出ない口を押さえて痛みに耐えた。
折角クラウスから与えられる物……受け入れないと……痛がってばかりじゃ呆れられる。
それでも痛みに涙が溢れていく。
痛い……痛い……でも……これはクラウスがくれる痛み。
「拓斗……可愛いよ……お前の中は温かく俺を包んで来る……俺が好きか?」
「あぁっ!クラウス!好き!大好きっ!!」
「……俺もだ」
クラウスは楽しそうに笑い……俺の中に精液を吐き出した。
「クラウス……好き……」
次第に混濁の闇に落ちていく意識……俺に構う事無くクラウスがまた腰を振り始めた……。
「……クラウ……ス……」
ゆりかごには早すぎる揺れの中……
次第に何も感じなくなり……
眠りの渦に飲み込まれた……
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