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第15話※
「ガバルッ!!」
「これは、兄上。随分のんびりとしたお越しですね」
ひと際豪奢な扉を開けると、ベッドの上で全裸の神子を膝に乗せて笑うガバルの姿が目に飛び込んできた。
……状況が理解できず……理解したくなくて立ちすくんだ俺の背後から数人の兵士が飛びかかって俺は床に押し倒された。
「これはこれは……クラウス皇太子様…お久しぶりですね」
「宰相……」
冷たい目が俺を見下した。
「クラウス様っ!!」
「剣を収めて貰いましょう、セルリア殿……神の子の御前ですぞ」
剣を抜いたセルリアを宰相が制止した。
「どういうことだ……ガバル様が神の子?……まさかっ!?」
セルリアはガバルと神子の姿を確認して蒼白した。
「男など神子でなければ冗談ではないと思ったが……神子様は存外に可愛らしかったぞ……」
ガバルが神子の顎を持ち上げ、俺に見せつける様に唇を奪った。
「神子を、離せ……ガバル……」
「見ろ……クラウス」
神子の足を持ち上げガバルは秘部を晒した。
「手遅れだ……神子の体にはもう俺がたっぷり愛を注ぎ込んでやった」
ガバルが指で孔を広げると……赤い液体まじりの白濁した液体が流れ落ちていく。
「俺をお前だと思いこんで愛を囁き続け、痛みを必死に堪える姿はいじらしかった……だが神子はもう俺の物だ。神の子の地位も王位も俺が手に入れる。俺の屋敷から出ていって貰えますかね?なりぞこないの神の子様」
ニヤリと笑ったガバルの笑みに……俺の頭は真っ白になった。
自分の気持ちの変化には気づいていた……気づいていながら……何も伝えられなかった。
散々ないがしろにしておいて、今さらだと嫌われるのが怖かった。
怖かったのは……嫌われたくなかったから。
臆病になるぐらい……愛してしまったから……。
ずっと手を伸ばせば届く場所で待っていてくれたのに……。
「ガバル……!!許さないっ!!殺す……殺してやる!!」
ざわざわと総毛立ち……ピリピリとした空気が俺の周りに渦巻いた。
神子の体がガバルの手から離れ、浮き上がっていく。
「なっ!何故だ!!何故お前が神の力を……!?神子を手に入れたのは俺だぞ!!」
ガバルは必死に神の力を使おうとするが、何の反応も無い。
神の力……ガバルに犯されながら……俺に愛を向けてくれていた?
神子を手に入れるとは……体ではなく……。
俺が自分の気持ちを認めてさせいれば、すぐにでも手に出来たかもしれない力。
この力があればすぐに気付けた。
ガバルなんかに奪われる事もなかった。
「俺が手に入れたのに!!俺が愛してやったのに!俺が犯してやったのにっ!!このクソ神子がぁっ!!」
ガバルが神子へ向けて剣を投げようと構えた。
「やめろ!!ガバルっ!!」
「うぎゃあぁぁぁっ!!」
俺が叫ぶと同時に、ガバルの体の内側から肉を突き破り木が枝を伸ばしていく。
木の枝は伸び続け……徐々にガバルの体を飲み込むと一本の木となり……朽ちて崩れ去った。
「ひっ!!ひぃぃっ!!」
逃げ出そうとした宰相と兵士達を睨むと地面から伸びた無数の木の枝がその体を串刺しにして……この部屋で行われたであろう事を知る者はいなくなった。
ゆっくりと下降してくる体をマントを脱いでくるんだ。
頬は腫れて……口の端が切れて血がにじんでいる。
体に残る痕から手荒に扱われたのが分かる。
「クラウス様……これは……カスタリスの薬ですね」
セルリアの手に握られた瓶。
幻覚作用のある強い催淫薬……摂取量に寄っては心を壊す。
ガバルの言葉を信じるのなら……
俺を思って……この仕打ちに耐えたのか?
「すまない……すまなかった……」
その寝顔は穏やかで、幸せそうにも見える。
幸せそうな寝顔が俺の心を切り裂き続けた……。
部屋に戻り……ベッドの上に寝かせると……睫毛が微かに震え、
「ん……クラウス」
目を覚ますと嬉しそうに俺にしがみついてくる。
「……殴られたのか?俺のせいで……巻き込んですまない」
「平気……クラウスが愛してくれたから……それだけで俺、幸せ……」
嬉しそうに俺の手にすり寄り微笑む姿を見るのが辛くて……抱き締めて耳元に「愛してる」と繰り返す事しか出来なかった。
「クラウス?何で泣いてるの?」
不安そうな声。
「……俺も……お前の愛が嬉しくて……」
「え……へへっ……俺がクラウスの事を好きなの……クラウス嬉しい?……そっか……」
照れたように笑って俺の頭を撫で続けてくれた。
一生お前を騙し続ける俺を……許してくれ。
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