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【6】

「ふざけるのもいい加減にしろ! このクズ野郎っ!」  低い声と共に足蹴にされたドアが軋んだ音を立てる。その声に弾かれるように振り返った狭山は大きく目を見開いた。 「セイジ……」 「人の名前を勝手に使ってΩ狩りだと? お前が裏で何やってるか知らない奴はいないんだよ」  土足のまま容赦なく部屋に上がり込んだのは金色の瞳に渾身の怒りを湛えたセイジだった。その後ろからスーツ姿の高野が続くと、カーテンで仕切られた奥の空間にいたスタッフの襟首を掴んで引きずり出した。 「困るんですよ。うちの売れっ子男優の名前を勝手に使われちゃ……。狭山さん、貴方の所属事務所にすべてを話してきました。当方としても黙って見過ごすわけにはいきませんからね。ここからは事務所と弁護士を通じての話し合いになります。もちろん、貴方の処分もおのずと決まってくるでしょうが……」 「な、なんだと?」 「名誉棄損、著作権侵害、風俗店への斡旋行為……。そして、反社会勢力との繋がりも否定は出来ませんよね?」  普段は物静かで弱々しい印象しかない高野だが、眼鏡のレンズ越しに狭山を睨むその視線はAV男優として輝いていた時を彷彿させた。野性的で貪欲で……冷酷な一面を持つ。  その眼力に気圧されたのか、狭山は床に尻をつけたままおずおずと後ずさりを始めた。それを視線の端に捉えたセイジは思い切り脚で押し退けた。 「どけよ! 目障りだっ」 「痛っ! なんだと……このED男優が! 勃たないクセにデカい口叩くんじゃねーよ!」 「はぁ?」  狭山が吐いた言葉はスランプ気味だったセイジの心を抉った――かのように思えた。しかし、セイジはそれを余裕あり気に笑い飛ばし、かなりの質量で膨らんだ自身の股間を彼の目の前に突き出した。 「その腐った目でよ~く見てみろ! どこが勃たないって?」  チノパンの上からその形をなぞるように撫でたセイジは、狭山の前にしゃがみ込むと彼のだらしなく伸び切ったTシャツの襟元を掴みあげ、地の底から響くような声で言った。 「消えろ。二度とその汚ねぇツラ見せるな……。あと、このガキへのギャラ、後で回収に行くから全額用意しとけ!」 「な……なに言ってんだ。俺はまだ何もして……」 「しただろ! カメラ回して、薬飲ませて発情させた挙句に抱こうしただろーが。突っ込まなくてもお前がしたことはセックスと変わらない。――高野、こいつを事務所に連れて行け。言い訳はそこで聞いてやる」  長く伸びた爪を狭山の頭に食い込ませると力任せに殴り倒す。床に顔をぶつけて動けなくなった彼を高野が部屋から引きずり出した。  一瞬の静寂――。ソファに隠れるようにして様子を伺っていた翼とセイジの視線がぶつかる。  翼が身じろぐたびに強烈な甘い香りがセイジの鼻孔を襲った。いや、正確にはここに入った瞬間、眩暈を覚えたほどだった。 「お前なぁ……」  呆れたように額に手を押し当てながら体を小刻みに痙攣させる翼を見下ろして、セイジは勢いをつけてソファに飛び乗った。  そして、驚きに目を潤ませる翼を力強い腕で抱き寄せると、汗ばんで湿った栗色の髪に顔を寄せて呟いた。 「――初めまして……とか、言うなよ」 「セイジさん……。ホントにセイジ……さん? この前はごめん……な、さい。俺……ずっとずっと謝り……たくてっ」 「何を謝るんだよ」 「貴方の前で発情……しゃちゃって……助けて……くれた、でしょ? あんな恥ずかしい……とこ見られて……俺、あなたに嫌われたって……。俺、出来損ないで……。ホントはα……だったのに、Ωで生まれちゃって……。だから、父さんだけじゃなく貴方にも……嫌われるって。俺……怖くて……そのっ」  セイジの腕に鼻先を擦りつけて泣く翼の息が熱い。狭山に飲まされた薬が完全に発情を促してしまったようだ。  長い睫毛を震わせながら潤んだ目で許しを乞うように見上げる翼の表情に、セイジの心臓が激しく高鳴る。彼のフェロモン過剰反応したペニスがドクンと脈打ち、自然と息が荒くなっていく。  一度発情を経験した為だろうか、翼が纏う雰囲気が先日よりも甘く、艶を含んでいる。  目の前にいるαと早く体を繋げたいと欲求と、彼が抱える後ろめたい想いがせめぎ合い、すべてを解放することを拒んでいる。  理性と本能の狭間で何とか自分を抑えこもうとしている様子が手に取るように分かった。 「――なあ、翼。お前、あのクズ野郎にいくらでやらせろって言われた?」 「薬飲んで……服、脱いだら一万。オナ……ニで二万……」 「シケた値段だな。それで?」 「エ……エッチで三万上乗せ……って。ビデオ化した……ら、五万……」  セイジは長い爪で傷付けない様に翼の襟足の毛を弄びながら「ふ~ん」と興味なさそうに鼻を鳴らした。そして耳朶を甘噛みしながら低い声で言った。 「――お前、それでヤラせるの?」 「ちが……っ。俺はセイジ……さんに、会わせてくれるって言った、から……んんっ」 「それにしたってさ。俺たち、まだ一度しか会ってないだぜ? それなのに、そんな顔を見せるなんて無防備すぎるだろ? お前ってもしかして淫乱体質? どんだけイヤらしいガキなんだよ」  セイジの厚い舌が翼の耳殻に沿って這わされると、先程達したばかりのペニスがゆっくりと頭を擡げ始めた。先端からは透明の糸を滴らせている。 「違うって……。俺、ずっとずっとセイジさんが好きで……。多分、初……こ、いの人……あぁんっ」 「初恋だぁ? この俺が?」 「ビデオのセイジさん……かっこいい、もん。でも……ね。本物は……もっと、かっこいい」  頬を赤らめて俯いた翼の細い肩が震えている。気怠げに投げ出した脚が徐々に開いていくのが分かる。  それを視線の端に捉えたセイジは、獣化した手を元に戻すと湿り気を帯びた股の間に手を忍ばせ、後ろにある窄まりを指先でそっと撫でた。 「いやぁぁ……。そこ……だめぇ」 「濡れてる……。ヒクヒクして……。お前、処女か?」  小さく頷いた翼に、セイジは「参ったな……」と呟いた。第一関節をそっとその場所に埋めると、セイジの指を食むように蕾が絡みつく。その奥は蜜で濡れ、熱く潤っていることだろう。 「なあ……。お前、俺のファンだって言ってたよな? 俺のビデオ見ながらヌいてたのか?」 「う……うん。狼のセイジさんに……抱かれたい……って、ずっと……はぁ――っ」 「翼……。俺はお前が思ってるようなカッコいい男じゃないぞ。親にはクズ扱いされて絶縁された――俺こそが『出来損ない』なんだよ。そうじゃなきゃ、AV男優なんてやってねぇ……」  セイジの言葉に、はっと顔を上げた翼は震える唇で呟いた。 「でき……そこな、い?」 「そうだ。α種のくせに高校中退、水商売やヤバいバイトにも手を出した。αのクズだ。そんな俺をカッコいいとか……。お前、マジで変態だな」  そう言ったセイジの顔は誰にも見せたことのない優しさに溢れていた。翼は蕾に埋められた彼の指をキュッと食い締め、泣きながら口元を綻ばせた。 「一緒だ……。俺と、一緒……」  自身の精子で濡れた手をセイジの頬に寄せる。その手を掴み寄せて白濁を舌先で丁寧に舐めとったセイジはソファに翼を押し倒すとツンと尖った乳首を優しく噛んで上目遣いで彼を見た。 「翼……『運命の番』って知ってるか? お前に初めて会った日、どうにもならないくらいお前が欲しくなった。こんなオッサンが何を言ってるんだって思うだろ? だがな……この体は、お前のこと考えないと勃たなくなっちまったんだよ。AV男優として致命傷を負った。責任とれよ……」 「んんっ! セイジさん……はぁ、はぁ……っ」  翼の腿に食い込むように当たっているのは十分すぎるほどの質量を持ったセイジのペニスだった。その熱さと硬さはチノパン越しでもハッキリと分かるほどだった。 「お前がどう想ってるかなんて分からないけど、俺は間違いなくお前を欲しているみたいだ……」  その言葉に翼の大きな瞳から一筋の涙が流れ落ちた。あの日、翼の言葉を信じてやれなかった時に見た涙とは違う。そのどこにも憂いは見当たらない。 「セイジさん……。俺も……『運命の番』がセイジさんだったらって……思ってた。セイジさんに会いたくて……会いたくて……。もう、ずっと前から愛しちゃってたんだ……ろうね」 「いつの俺に惚れたか知らないけど、初恋の相手がこんなオッサンになってて悪かったな」 「ううん……。セイジさんは、セイジさん……だから」  セイジの首に両腕を絡ませた翼が照れたように笑う。その愛らしさに、セイジの理性が擦り切れそうになったのは言うまでもない。はぁ……っと大きなため息を吐いて自分を落ち着かせながら、セイジは翼の唇に自身の唇を重ねた。  長く厚い舌が翼の口内を蹂躙し、激しく水音を立てる。時折苦しそうに眉間に皺を寄せる翼を気遣いながら、セイジは彼の首に巻かれたネックガードを外した。  ひやりとした空気に触れ、翼の体がビクンと跳ねた。何度も唇を啄み、セイジが触れるか触れないかの距離で囁く。 「お前は俺をずっと見てくれていた。だが、これからは俺がお前を見守り続ける。十万そこそこの金で、一流男優の俺が素人のお前を抱くなんてケチな真似はしない。お前には俺の一生くれてやるから……。だから、お前の一生を俺にくれ。俺以外の奴にそのエロい顔見せたら許さないからなっ」 「セイジさんこそ……。俺、責任とって……他の男に勃起しないように頑張るから」 「ばーか。頑張る必要ないだろ……。もう、お前しか抱かないから……。あ――! もう、限界だっ! 翼、初めてなのに優しくしてやれない。俺……余裕ないっ」  勢いよく上体を起したセイジはチノパンの前を寛げると、下着から長大なペニスを引っ張り出し、翼の両脚を大きく広げ、その中央に慎ましく佇むピンク色の蕾に硬い先端を押し当てた。  蜜を纏わせた先端の熱を感じ、翼はゴクリと唾を呑みこんだ。腰の奥がズクズクと疼き、自ら腰を動かしてしまいたくなるほどの欲求に苛まれる。しかし、セイジに脚を固定されたままの格好では身動き一つ出来ない。 「痛かったら言えよ……。止められる自信はないが」 「きて……。セイジさん」 「クソッ! 処女がどこでそんな言葉覚えたんだっ! ちゃんと息をしろ……いいなっ」  血管を浮き上がらせた赤黒いペニスが翼の蕾を割り裂いていく。そこは予想以上に柔らかく、本当に処女かと疑いたくなるほど熱くうねる様にセイジのペニスを受け入れた。発情したΩはどんな相手にも合わせられるように体が変化する。その噂は嘘ではなかった。女性の腕ほどもあるセイジのペニスを難なく受け入れた翼は、その快感に断続的に射精を繰り返した。白い平らな腹を汚していく白濁が脇に流れ落ちると、それを指で掬ってセイジが舐めた。  セイジの茎を全部飲み込んだ翼が細く息を吐いた時、覆い被さるようにセイジの顔が近づく。そして、その唇を塞ぎながらボソリと言った。 「――全部、挿れるぞ」 「え……?」  その瞬間、セイジの腰がググッと力強くせり出し、ただでさえ広げられている蕾の薄い粘膜が更に大きく広がった。 「あぁ……! セイジ、さん……気持ち、いいっ!」  クパッと大きく広がった粘膜はすぐに元に戻り、翼は何が起きたのか理解出来ずにいた。 「ふぅ……っ。俺の亀頭球まであっさり呑みこむとはな……。これで、俺が精子を出し尽くすまで抜けない」 「はぅ……。セイジさんの……腹の裏側まで……届いてる。気持ち、いい」 「そうだろ? これならすぐに妊娠出来るぞ?」 「妊娠……。俺たちの……子?」 「ああ……。マジカルミラーを覗き込んでも可愛い翼は見せてやれないが、俺たちは大勢の奴らに見守られて番になる。悪くないだろ……翼?」 「見られてる……俺たち」  その瞬間、翼の中が激しく蠢動してセイジのペニスをきつく食い締めた。  ペニスを介して電流のように駆け上がった快感がセイジの体を変化させていく。 「ガルルルル……ッ」  着ていたパーカーがミシミシと軋む音と同時に裂け、完璧ともいえる体は一気に青黒い長毛を纏っていく。  各所の筋肉量が増し、端正な顔立ちが獰猛な狼へと変わる。  鋭い牙を剥き出して、翼の首筋を舐めたセイジはニヤリと笑って見せた。 「リアル『野獣に犯されて』の気分はどうだ?」  獣人化したことによって翼の中に収められていたペニスも質量も増す。強烈な圧迫感と共に脳天を突きあげるかのような快感が彼を襲い、目の前が真っ白になった。  全身が小刻みに痙攣し、腰がだんだんとせりあがってくる。勃ち上がったままのペニスからはだらだらと白濁交じりの蜜が溢れ出していた。射精を伴わない絶頂――翼はその大きな波に呑まれていた。 「いい……っ。セイジ、さん……俺の……中、思い切り掻き回して……いっぱい、出して!」 「当たり前だ。最愛の番に一人寂しくオナニーなんかさせてたまるかよっ」  細い翼の体を抱き起し、結合部をより深く繋げる。「あぁっ!」と短い声を上げた翼の顎が上向き、体が硬直した。しっとりと湿り気を含んだ栗色の髪が揺れ、ふわりと甘い香りが広がる。  セイジは翼を抱えたまま、大きな窓ガラスの方へと歩み寄り、そばに敷いてあったマットレスにどかりと腰を下ろした。その振動で内部を圧迫された翼が「あんっ」と可愛い声で啼いた。  興味津々という顔でガラスを覗き込む若者たち。彼らに向かって大きく脚を広げるような格好で座ったセイジは、結合部を支点に翼の体を反転させた。滑らかな背中に鼻先を押し付けながら膝を使って翼の足を広げた。 「いやぁ……。セイジさん、なに……する、の!」 「ほら、みんなに繋がってるところを見てもらうんだよ。エロビデオの何十倍もイヤらしい、完全無修正の翼をな……」 「はず……か、しい! やだぁっ」  顔を真っ赤にして振り返る翼の腰をがっちりと掴んだセイジは、屈強な腰を激しく突き上げた。 「あ、あっ……。や……こわ、れ……ちゃうっ」 「――一緒に壊れるか? ほら、もっときつく締めろ……」 「んん……っ! っはぅ」  自慰とは比べ物にならないほどの快楽が翼を呑み込んでいく。その快楽を与えてくれるのは愛すべき男。  この上ない幸せと結合部から漏れ聞こえる卑猥な水音、そして翼の最奥を抉る狂気のような剛直がさらに高みへと導いてくれる。  ガラス一枚を隔てた人たちの顔が次第に霞んでいく。背後では絶頂が近いのかセイジの激しい息遣いが聞こえていた。 「セ……ジさん、俺……イ、イク……。イッちゃう……っ」 「そろそろ、一発イッとくか……。翼、お前の中に出すぞ……いいか?」 「出して……俺の、中に……いっぱい、ちょ……だぃ! あぁ……出ちゃう! 何かが出ちゃうよぉ……いやぁ……っ。こわ、い――い……イ、イク――んあぁぁぁっ!」 「――っぐ。番うぞ……おらぁ!――っぐあぁぁぁっ」  セイジが仰け反った翼の白い首筋に鋭い牙を立てながらひと際大きく突き上げた瞬間、翼のペニスから大量の白濁交じりの蜜が吹き上がりガラスに飛び散った。同時に翼の最奥を灼熱の奔流が叩きつけ、その熱さに腰を大きく跳ねさせる。  ドクドクと激しく脈打ちながら注がれるセイジの精子を感じながら、翼はぐったりと後ろに倒れ込んだ。 「初めてで潮吹きとか……。どんだけ可愛いヤツなんだ、お前は……」  まだ、たっぷりとした質量を残したままの亀頭球は翼の中から抜けることはない。セイジは血の滲んだ首筋に舌を這わせながら、まだ熱を持ち続ける翼の胸の突起を長い爪先でピンと弾いた。

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