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第5話

「一晩泊めてくれ」 「ハイハイ。おや、ケンタウロスと……ドワーフですか? お部屋はケンタウロス用のお部屋にご一緒でよろしいですか?」 「ドワーフはではなくニンゲンだ。よろしく頼む」 「……ウサギさん……?」 「ウサギ獣人です。つがいがアラクネなのでここに住み着きました。ニンゲン、とは聞いた事がないのですが遠くからいらしたのですか?」 「分かりません」 アオバが悲しそうな顔をするので頭を撫でると、恥ずかしそうに笑った。 「あぁ、ニンゲンは食べ物を煮たり焼いたりするのだがここではどうしている?」 「ドワーフのお客さん用の食事と同じでよろしいかと」 「ではこの子にはそれを、私はケンタウロス用で頼む」 「はい。ニンゲン様はハンモックをお使い下さい」 板張りの部屋に通され、荷を下ろす。 「ハンモック! 僕、初めて!」 「これなら織物でなくても作れそうだな。帰ったら作ろうか」 「うん!」 荷を置いて集落を見て回る。 「お店やさん!」 アオバが織物を並べた家に行きたがった。 見れば様々な色の織物が並べられている。手触りは普通の織物だ。 「あ! 服もある!」 「アオバが作ったふくとは形が違うな」 「僕のは皮製の簡単なやつだからね。ちゃんとした服だ」 毛皮の代わりなら身体が包めれば良いのではないか? よく分からないのでアオバを見守る事にした。 「あの……リュカ、織物を手に入れるには手伝ったり羊の毛と交換したりするの? これ欲しいんだけどどうすれば良いの?」 「あぁ、ここに来た時はこれと交換するんだ」 皮袋に入れた金の粒を見せた。 「ケンタウロス、この子はこれとこれが欲しいんだって。買うかい?」 「あぁ、頼む。これで足りるか?」 「ここに乗せておくれ。よし、これで足りるよ。帯はオマケだ」 「ありがとうございます!」 アオバの嬉しそうな顔が見られて嬉しい。 そう言えばアラクネ達もあれを身につけていたな。だが下半身が蜘蛛だからアオバとは見た目が違う。不思議な感じだ。 「リュカ、あれはなぁに?」 「干した果実だ。木豆もあるようだ」 「食べ物?」 「獲物が手に入らなくてもあれを食べれば良いだろうから、あれも手に入れよう」 私が森の中で飢える事はないが、アオバは柔らかいものしか食べられないから心配だ。干した果実と木豆と干し魚を金の粒と交換した。 ……またオマケだと言って干し魚を余分にくれた。 宿に戻り、食事をもらう。 私は食べ慣れた葉や穀物。アオバには何やらどろりとした物が入った器、芋、柔らかな葉をちぎった物。 「煮込みだ! わぁ、美味しい」 「にこみ?」 「うん! これが鍋があればできる料理だよ」 アオバの嬉しそうな顔! また作り方を教えてもらってアオバのために作らなくては。アオバが食べきれなかった分をもらって味を覚えた。 アオバが身体を拭きたいと言うのでウサギ獣人に桶と湯をもらって部屋に戻った。 「ありがとう。リュカは良いの?」 「私は水で良い。拭いてやろう」 「恥ずかしいからいいよ! 自分でする!」 「しかし、アオバの具合が悪くなった時はどうする? 私に教えておいてくれないか?」 「そっ! ……そうだけど」 アオバは仕方なしに手伝わせてくれた。 外側の服を脱ぎ、下着と呼ぶ物だけを身につけたアオバ。どうせなら全て脱いでしまえば白くて丸くてすべすべの尻が見えて嬉しいのだが。 吸水性を持たせた皮を湯に浸し、絞って顔を拭く。次に耳、顎の下、首、肩、胸、腹、背中、脇の下、腕。頭の方から足の先に向かって拭くらしい。 「気持ちいい……」 「そうか。……で、ここは? 拭かないのか?」 「そこは自分でやる。教えるのはまた今度ね!」 「拭くのか……」 「何で残念そうなの!?」 「せっかく良い匂いがするのに拭いてしまったら匂いが薄れてしまう」 「匂いがするのが嫌なの!!」 こんなにも芳しい香りを嫌がるなんて…… もしや私の匂いも嫌なのだろうか? 「アオバ、私は……私の匂いは嫌か?」 「……う、うぅん。リュカの匂いは爽やかでとっても良い匂いだよ」 「私の香りは良くてアオバの良い匂いはダメなのか」 「もう! いいから後ろ向いてて!」 「アオバの愛らしい尻が見たい……」 「ダメ!!」 悲しい気持ちを伝えたのに断られてしまった。次の発情まで見られないのか……。考え込んでいたらアオバがアラクネの服を着て私の体を拭いてくれた。 「ずっと面倒見てくれてありがとう」 「アオバの世話を焼くのが私の喜びなのだから感謝など不要だ」 「僕が喜んでるって事をちゃんと伝えたいんだよ?」 「……そうか。アオバが私を頼ってくれて嬉しい。私と添い遂げる気になってくれたら正式につがってくれないか?」 「う……ん、リュカの事は好きだけど、まだ……」 「すまない。急ぎ過ぎたようだな。だがまた発情したら私を頼ってくれるか?」 「それはそのつも……」 顔も首も耳も真っ赤にして俯いてしまった。そのつもりなのかそのつもりはない、なのか不安になる。 「桶、返してくる!」 「私が行く」 「いい!」 なぜか自分が返しに行くと言って聞かないので一緒に行く事にした。廊下を通ってウサギ獣人の部屋へ……だが、私の耳はウサギ獣人のあられもない声を拾っていた。 「アオバ、桶を返すのは明日でもいいのではないか?」 「なんで急に……」 〈はぁぁぁん!んっ……良い……もっとぉ……〉 アオバにも聞こえたようで動きが止まる。 「あ……、明日に、しようか……」 そう言ってそそくさと部屋に戻り、ハンモックに潜り込んで眠ってしまった。……抱いて眠れないのは寂しい。 「リュ……カぁ……、あの……」 夜明け前、ハンモックの中で身を縮こまらせるアオバから芳しい香りが漂う。また発情したのか? 「おいで」 「ん……」 手を伸ばすと素直に身を任せるアオバは間違いなく発情している。随分と間隔が短いが、ニンゲンの特性なのか未熟ゆえの不安定さか。急ぐ旅でもないので延泊を決めた。 宿の主人はウサギ獣人だから夜が明けたら扉の隙間から呟けば耳に届くだろう。 ふくを脱がせ、全身くまなく口づけを落とせば触れるたびに震え、フェロモンが強く香る。 「あ……、あ……、あ……、リュカ、からだ、あつい……助けて……」 「もちろんだ」 寝藁で肌に傷をつける訳には行かないので、ニンゲンに変化してアオバを抱いたまま椅子に腰掛けて跨らせる。熱く潤った後孔に指を入れれば気持ち良さそうに喘ぐ。 「指じゃやだぁ……足りないの……早く、リュカのぉ……」 「あぁ、すぐに入れよう」 涙をこぼしながら強請るアオバを持ち上げ、私の屹立の上に乗せる。ゆっくりと埋まっていく感覚が心地良い。ケンタウロスの時よりだいぶ小さくなった陰茎だが小さなアオバにはこれでも大きいのではないかと心配になる。 「アオバ、苦しくないか?」 「リュカの、大っきくて熱くて、きもちい、よ」 大きさまでちょうど良く変化しているのか。私は安心してアオバを揺すった。 「あんっ! これ、前、擦れ……っ! やぁん……、気持ち良いっ……」 「アオバ、そんなに締め付けたら私が保たない……」 「何も、してな……っ!! はぁぁぁぁんっ!」 「くっっ!!」 締め付けられ、濃密なフェロモンに当てられて追いかけるように達した。

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