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第6話
「落ち着いたか?」
「……まだ。もっと、して?」
入れたままの陰茎が一瞬で硬度を取り戻したのは言うまでもない。3度目でようやく落ち着き、眠った隙に延泊と食事の手配を頼んだ。
「……リュカ、おはよ」
「おはよう。身体はどうだ?」
「うぅ……落ち着きました……」
「もう!?」
一時的なものだったのか?
「ニンゲンの発情周期はどれくらいなんだ?」
「発っ!? ……人間は人それぞれで、毎日の人もいれば月に1度とかもっと少ない人とか……」
「月に1度……」
ケンタウロスの年に1度の繁殖期に比べると、随分頻繁だ。だがヒートがたった3回で終わってしまうのは少ない。1度が短い代わりに頻繁に発情するのか。
体が小さくて体力がないからかも知れないが……楽しみだ。
「お客さん、食事をお持ちしました」
「ありがとう。アオバ、座れるか?」
「もう少し休めば大丈夫だと思うけど……」
アオバは温かい食事が好きなのですぐに食べられるようハンモックを調節して上半身を起こした。少しずつ食事を口に運ぶと、恥ずかしそうに口を開けて食べた。
「1日休んでから出よう」
「うん。ごめんね」
「急ぐ訳でもないし、発情してくれるのは嬉しい。毎日でも構わない」
「こんなに恥ずかしいのが毎日なんて僕が困るよ!」
アオバを困らせたくはないが毎日でも求められたいのは正直なところだ。なかなか見せてくれない尻を見られるし触れる。そう言えば胸の頂を舐めると甘く蕩けていた。他にもアオバが喜ぶところを探してみよう。
それにもっと尻を愛でながら繋がるにはどうすれば良いだろうか。藁の上のマットを喜んでいたし、あれならアオバの肌が傷つかない。この宿にあるか?
「主人、聞きたい事があるのだが」
藁の上にマットを敷く説明をしたらエルフ用の部屋がそうなっていると言うので見せてもらった。
「これは柔らかくて肌触りが良いな」
「エルフは気難しいのでこうなるんですよ。しかもそのせいで宿代を高くせざるを得ない」
「帰りに泊まりたいのだがいくらだ?」
「……ケンタウロスに乗られたらマットが潰れてしまいます」
「乗る時はニンゲンに変化するから大丈夫だ」
変化して見せると驚きながらも途中で変化が解けたら困る、と言うので元通りにするための費用を用意しておく事も約束し、エルフ用の部屋を帰り用に予約した。
「明日はここを出る。大丈夫か?」
「もう大丈夫。リュカの背中に乗ってるだけだから今日だって泊まらなくても良かったのに……」
「確かにここではハンモックのせいでアオバを抱いて眠れないな」
「そうじゃなくて、もったいないな、って」
「もったいない……? アオバの身体を大切にするのは当たり前の事だ。それよりも寂しい」
「……寂しいの?」
「あぁ。離れて眠るのは寂しい」
「じゃあ、今夜は一緒に寝る。たった一晩なのに僕も少し寂しかったんだ」
つがいの体温を感じていないと寂しいのは当然だ。だがアオバは平気そうに見えたから余計に寂しさを感じたのだが、同じ気持ちだと知れて胸が暖かくなる。
藁で傷つかないよう、毛皮でくるんで抱き寄せた。
「……おはよ」
「おはよう、アオバ」
「起こしてくれれば良いのに……」
「急ぐ必要はない」
やはり抱きしめて眠ると可愛らしい寝顔を堪能できて良い。互いの匂いが混ざるのも嬉しい。アオバも少々不満げだが本気で怒っている風ではないので挨拶の頬ずりをした。
朝食を食べて支払いをし、宿を出て森の中の道を行く。アオバが遅れた事を気にしているので速歩だ。
「リュカ、こんなに速くて疲れない?」
「問題ないが、もし疲れたら速度を落とす」
だから心配はいらないと言うと、笑顔で頷いた、と思う。背後にいるから推測だが。
私の背に直接座ると前が見えなくて気分が悪くなると言うので、毛皮とテントとアオバのふくを詰めた袋に座らせている。
「あれ?向こうで何か光ったよ」
「……中型の獣と魔法の気配だな」
「魔法!」
「誰かが助けを求めている……」
「えっ!? それ、助けられる?」
「行こう」
アオバの安全が第一だが先ほどの光が攻撃魔法だったのだろう。戦闘の気配はすでにない。魔力枯渇か倒れた木に足を取られたか。
振り分けにした荷が少々邪魔だが、なんとか木々の間を潜り抜け、倒れた木と砕けた岩の隙間で唸るドワーフの元にたどり着いた。
「怪我は?」
「おお! ケンタウロスか。ありがたい。足をやられた」
「アオバ、荷を外すからそこで待っていてくれ」
「うん」
アオバを下ろし、荷を外して倒木を持ち上げる。幸いそれほど太い木でもないから何とか1人で動かせた。次に岩を持ち上げようとしたが運べず、持ち上げた隙に自力で出てもらう。見た目以上に重い岩だ。
「いててて……! いや、助かった。オオヘラジカの角が欲しくて狩に来たんだがカガミドリの縄張りに踏み込んじまってなぁ」
魔道具で雷を放ったらカガミドリが割り込んで雷を跳ね返したと言う。幸いオオヘラジカはそこに倒れているので角を切って血抜きをした。
「ケンタウロスの血抜きってなぁすげえな」
「リュカ、今のって……?」
首と足の付け根を切って首の切り口から息を吹き込んで血を吹き飛ばすのだが、驚く事なのか?
「それができるのは肺が4つあるケンタウロスだけだ」
「肺が4つ!?」
「ん? お前…… ドワーフでもないしエルフでもなさそうだし…… 何だ?」
このドワーフもニンゲンについては知らないらしい。
傷薬が効いて歩けるようになったドワーフが鹿の身体を担ぎ、角は私が預かった。そして抜け道を通ってドワーフの集落に行く。3日かかる予定が1日で着いた。
「んじゃ、ここに泊まってくれ。部屋はあんたに合わせるのか坊主に合わせるのか分からんから交渉は任せる。礼として宿代は俺が出すからよ」
「エルフ用の部屋でも大丈夫か?」
「俺は構わんが宿が断らないか?」
「交渉する」
大きな獲物を担いで広い洞窟の奥に入って行くヴァルター。あれでオメガとは。
「ドワーフって力持ちなんだね」
「あの身体つきだからな。荷を下ろして休んだら角を届けよう」
宿に入って交渉する。
初めは渋っていた主人も変化して見せると態度が軟化した。
「ヴァルターの紹介ですし、その姿で居てくれるなら構いません。ですが部屋の外では服を着て下さいね」
「ふく。買えるか?」
「えぇ、洞窟に入って右上の店で売っています。ドワーフ用だけでなくエルフ用も獣人用もね」
「感謝する」
部屋へと通され、荷を置いて寝床に腰掛ける。以前変化した時はアオバに夢中で覚えていないが、尻に当たる感触が面白い。
「リュカ、裸恥ずかしくないの?」
「はだか?」
「服を着る習慣がないんだっけ……」
アラクネの集落ではアオバのふくしか買わなかったのでアオバに言われるがまま柔らかな毛皮を腰に巻き、革紐で縛った。
「ここを隠せば良いのか」
「大事だからしまっておくんだよ」
「ではアオバを隠すべきか?」
「……嬉しいけど嬉しくない」
見るもの全てが珍しいのに見られないなんて嫌だ、自由に歩きたい、と。アオバの希望は出来る限り叶えたいので何よりも大事だがしまい込むのは諦めよう。
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