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第2話*

「いけません、好文様……!」  だが、ひとしきり動くと男は果てた。膨れ上がった熱を腹の中に撒き散らし、種を植え付けるかのように奥へ奥へと送り込んでくる。 「ああ、たまらん……」  荒っぽい息を吐き、男はむくりと身体を起こした。男根を引き抜くこともなく、胡坐(あぐら)をかいた上に由羅を座らせ、下から思いっきり突き上げてくる。 「……ッ!」  一向に萎える気配のない男を咥え込みながら、由羅は投げやりに暗闇を見つめた。青白い月光が一筋うっすらと部屋に差し込んでいた。身につけていた寝間着が、部屋の隅に儚く脱ぎ捨てられている。 「なんと心地いい……。この香りを嗅ぐと一層気分がよくなる……」  下から全身を揺さぶられ、ねっとりした水音と生臭い空気が立ち上ってきた。  この香り、と言われても、自分が発する匂いはあまり認知できない。今、由羅の嗅覚を支配しているのは、男の脂ぎった臭いと生々しい雄の臭いが合わさったものだ。はっきり言って不快である。もういい加減にしてくれないかと由羅はだらりと腕を垂らした。  男が背後で噎せ返った。中で欲望が大きく脈動し、逃がすまいと背中からしっかり抱きすくめられる。 「っ――!」  生ぬるいものを再び体内にぶちまけられ、下腹部が少し張り詰めた。  苦しさに眉を(ひそ)めていると、男が満足げに呟いた。 「これぞ我が家宝(かほう)だ……」  その呟きを最後に、男はごろりと床に倒れた。そしてそのまま動かなくなった。精根尽き果てたように寝所(しんじょ)に伏せ、数秒後にはいびきをかき始める。 「…………」  由羅は気だるげに黒い前髪を掻き上げた。だらしない格好で寝入っている男が、今は本物の猪のように見えた。 (家宝? 性奴隷の間違いじゃないのか……?)  毎晩好き放題(なぶ)ってくるくせに。家宝というのならもう少し丁重に扱って欲しいものだ。床の間に飾ってある日本刀の方が余程大切にされていると思う。  でも、好文に抱かれるのも今夜まで。  由羅は無造作に寝間着を羽織り、音を立てずに廊下を歩いて湯殿(ゆどの)に向かった。そして脱衣所で寝間着を脱ぎ捨て、流し場である程度身体の汚れを落としてから、誰もいない露天風呂に()かった。

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