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第4話
由羅は急いで風呂から上がり、手ぬぐいで水気を拭き取った。脱衣所の床に隠しておいた野良着 を身につけ、薄汚れた頭巾 を被る。顔もなるべく煤 や土で汚して黒くした。そして手燭 の灯 を頼りに邸の庭を抜け、壊れている垣根をくぐって外に出た。
今夜は月が明るい。変装用の頭巾で顔を隠しているとはいえ、由羅のような美貌の男はとかく人目を引く。見つかる前に遠くへ逃げなくては。
由羅は見張りの目をかいくぐり、猪俣の関所までやってきた。関所に詰めている見張りは運良く居眠りをしていた。
これなら見つからずに通過できる……と門をくぐった次の瞬間、
「ワン! ワン!」
背後から犬が強く吠えてきた。驚いたが、振り返っている暇はなかった。由羅は川に向かって全力で走った。浅瀬に入り、バシャバシャと水を掻き分けて進む。
「あの男が逃げたぞ! 捕まえろ!」
「……っ」
犬の鳴き声で見張りも起きてしまったようだ。
「ワン! ワン!」
水に入って来られない犬がしきりに吠え続けている。だが追っ手の男たちは棍 を片手に川に入ってきて、徐々に由羅との距離を縮めてきた。
「待ちやがれ!」
追っ手が由羅の袖を掴んだ。思わず前のめりに倒れ込み、全身がずぶ濡れになった。水が粗末な野良着に沁み込んで身体全体を冷やしていった。
「へへへ、それで変装したつもりかよ? お前の甘い匂いがぷんぷんしてたぜ」
川から引きずり出され、砂利だらけの河川敷に押し倒される。追っ手は全部で三人いた。全員腕っぷしの強そうな男たちだった。力で敵わないのは明白だった。
男の一人が下衆 な笑みを浮かべる。
「なあ、せっかく捕まえたんだからよ、邸に届ける前に一発ずつヤっとかねぇ?」
「そうだな。こいつ、すげぇいい匂いして……もう我慢できねぇ」
「少しくらい好きにしても怒られねぇよな。どうせ娼婦みたいなもんだしさ」
両脇から腕を押さえつけられ、服の裾を捲り上げられ、強引に脚を開かされる。
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