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第10話

 今までいた邸を出て、由羅たちは外へ出た。太陽の光が眩しかった。こんな真昼間に人目を気にせず外に出たのは久しぶりだ。  邸を出てすぐの広場では、数名の子供たちが集まって何か練習していた。ライアルは片手を上げて彼らに声をかけた。 「よう、お前たち。獣変化(じゅうへんげ)はできるようになったか?」 「あっ、ボス! 今ちょうどいい感じに変身できたところなんだ!」 「オレが一番大きく変身できたんだよ! ちょっと見てて!」  一人の少年が、大きく息をして地面に四つん這いになった。途端、少年がまばゆく発光し、周りの空気が渦巻いた。目が眩んで、由羅は思わず手を(かざ)した。  少年の影が大きく伸び、獣の形に変化し、耳や尻尾、爪までもが生えてくる。 「ウオォォン!」  長い雄叫びと共に、再び少年が姿を現した。けれどそこにいたのは、四つん這いの人間ではなかった。灰色の毛並みをした狼が、眼光鋭くこちらを見ていた。普通の狼より遥かに大きく、頭から前足までの高さがライアルの腰くらいある。 「……獣人(じゅうじん)!?」  噂には聞いたことがある。この世には、人の形をしていながら獣に変身できる化け物がいると。そういった者は「獣人」と呼ばれ、人々から恐れられ忌み嫌われていた。獣人は普通の人間より凶暴で野蛮なため、大々的に「獣人狩り」を行っている地域もあるという。猪俣でも当たり前のように行われていた。 (この子が獣人ということは、当然ライアルも……)  今更ながら身体を硬くしていると、ライアルが苦い顔をした。 「俺たちが怖いか?」 「あ……いや、その……」 「いいさ。人間はいつだって俺たちを恐れる。人間に狩られて死んだ仲間もたくさんいるし……外ではまたきな臭い動きが広まっているって噂だしな」 「…………」 「でも由羅、恐れてもいいが獣人(じゅうじん)と呼ぶのはやめてくれ。それは人間がつけたスキャンダラスな名称だ」 「すまない……。だが、それならあなた達のことは何と呼べば」 「『獣人(ベイン)』だよ。そう自己紹介しただろ?」 「獣人(ベイン)……」  心に刻み込むように、何度か小さく唱える。

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