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第11話
実際に獣人 を目の当たりにしたが、聞いてきた噂とは全然違った。
少なくともライアルは親切で優しいし、他の獣人 たちも気のよさそうな者ばかりである。凶暴さや野蛮さは微塵も感じ取れない。何より、由羅が側にいても欲の孕 んだ目を向けて来ないのは大きかった。
(これでは、人間の方が余程獣っぽいかもしれない……)
視線を落としていると、ライアルが笑いながら狼の頭を撫でた。
「その歳でここまで大きく獣化できるのはすごいな。これからも頑張れよ」
「はーい!」
後ろの子供たちと共に、変身した狼も返事をする。獣に変身しても普通に会話はできるようだ。そこが普通の獣との一番の違いかもしれない。
ライアルは広場を離れ、森の中に入っていった。
「あの……今更で申し訳ないんだが、ここはどこなんだ?」
「ああ、悪い。そういや何も説明してなかったな」
この森一帯は「獣人 の森」、その森を切り開いて作られた獣人 たちの里を「獣人 の里」というそうだ(そのままだ)。先程の男女や子供たちが生活していた場所は、里の一部らしい。ライアルはその里を治めている長 だそうだ。
もっとも、里で暮らしている者は皆家族みたいなものなので、ボスだからと言って年貢を徴収したり、権力を振りかざしてどうこうすることはないらしい。
「いい里だろ? 大きな争いもなく、みんな仲良く平和に暮らしている。これぞ俺たちのユートピアだな」
「ユートピア……?」
「理想郷って意味だ。そのユートピアを守るのが俺 の役目ってわけだ。責任重大だけど、かっこいいだろ?」
ライアルが誇らしげに胸を張るので、由羅も少し笑いそうになった。
「ああ、そうだ。この森を抜けると猪俣に戻っちまうから気をつけろよ? なるべくなら里の中にいた方が安全だ」
「えっ……? そんな近くにあるのか?」
これは驚きだ。てっきり遠い異国に来てしまったのだと思っていたのに。そんな目と鼻の先に猪俣があるなんて。
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