12 / 31
第12話
ライアルがこう笑い飛ばしてくる。
「そんなに驚くことでもないだろ。なんで俺がお前を助けられたと思ってるんだ? 狼たちがお前の匂いに気付いたからだよ」
「気付いたって……里まで届いてしまうほど、私の香りは強かったのか?」
「いや、俺はうっすらとしか感じ取れなかったんだが、狼の嗅覚は抜群に優れてるからな。森の外にオメガがいるかもしれないってんでダメ元で捜してみたら、お前を見つけたってわけだ」
「そうだったのか……」
「そ。まあお前は、獣人 に助けられても嬉しくないかもしれないけどな」
そう自嘲気味に言うので、由羅はきっぱりこう言った。
「いや、あなたには感謝している。助けてくれてありがとう」
そんな会話をしているうちに一件の小屋に辿り着いた。扉の横には、等身大の木彫りの像が置かれていた。ひょろりとした青年だった。これは一体誰なのだろう。
ライアルは声もかけずに扉を開け、堂々と小屋の中に足を踏み入れた。小屋に入った途端、香辛料と思しき匂いが鼻腔を擽 った。なかなかいい匂いだ。嫌いじゃない。
「ようロイド、邪魔するぜ」
「邪魔するなら帰って~! 今、僕の研究が佳境に入ってるんだよー」
「……どうせスープの研究をしてるだけだろ。今日は真面目な話をしに来たんだ。本格的に邪魔するぜ」
由羅を長椅子に座らせ、自分もドカッと隣に腰を下ろす。
ロイドとかいう痩せ型の青年がオタマ片手にこちらに寄ってきた。目を輝かせながら由羅を見ている。が、欲情からではなく、単なる好奇心からくるものだった。
「おおおお!? これは昨日ライアルが助けた子だね? 僕が言った通り、やっぱりオメガだったでしょ? いや~、ラッキーだねぇ~! うひひひ~!」
「おいコラ。研究モードに入る前に自己紹介くらいしろよ。由羅が困ってるだろ」
ライアルに制され、ロイドは「はいはい」と生返事をした。
「どーも、初めまして! 僕はロイド、鷲の民出身ね。よろしく~!」
「は、はあ……よろしく……」
「いや~、それにしてもこんな美人なオメガ初めて見たよ~! きみ、男の子だよね? 雪みたいに白い肌、光沢のある黒髪、小さい卵型の顔……お人形さんみたいだ! ライアル、こういう可愛い子好みでしょー。いつ結婚するの~?」
「結婚……?」
由羅が絶句していると、ライアルが呆れた顔で手を振った。
ともだちにシェアしよう!