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第13話
「そういう話は後だ、後! それよりロイド、こいつ妊娠してるみたいなんだ。どうすりゃいいか教えてくれ」
「あー、ほんと? まあオメガだからできちゃうこともあるか~」
「あの……その前に『オメガ』というのは……?」
「あれ、由羅ちゃん知らないの~? よぉ~し! じゃあ僕が懇切丁寧に説明してあげましょう! 実は人間には『男・女』の性の他に『アルファ・ベータ・オメガ』のバース性も存在してて……」
嬉々としてロイドが説明してくれる。後でライアルから聞いたが、ロイドはバース性についてかなり詳しいらしく、特にオメガの生態に関しては興味津々だそうだ。
(……しかし、私には少し難しい話だったな)
かなり真剣に話を聞いたつもりだったのだが、理解できたのはほんの一部だった。
それでも由羅自身が「オメガである」こと、「定期的に『ヒート』と呼ばれる発情期がやってくる」こと、「妊娠能力がある(男であっても、直腸の奥に子宮を持っているから)」ことだけは何とかわかった。
(……身に覚えがあることばかり)
そっと腹部に手を当てる。オメガの香りは――ここでは「フェロモン」というらしいが――他の個体の性的興奮を掻き立てるそうだ。発情期 の時はそれが顕著で、欲望のままにオメガに種付けしてしまう者も多いという。
もっとも、ヒートというのは子作りの合図のようなものだから、「発情期に種付けをする」のは動物的にごく当たり前の行動ではあるが。
「で、お腹の子をどうにかしたいって話だけど。ちょっと待っててねー」
ロイドは部屋の奥から黒塗りの瓢箪 を持って戻ってきた。両腕で抱えるほどの大きさだった。彼は瓢箪を差し出しながらこう言った。
「これを毎日朝・昼・夕の三回、時間を決めて一口ずつ服用してね。そうすれば、自然とお腹の子も下る。味はイマイチだけど、そこは我慢してちょうだい」
「おいロイド。その薬、本当に大丈夫なのか? 由羅に変なもん飲ませたら承知しねぇぞ」
「失礼な。僕を誰だと思ってるの? 里一番の賢者で、医術にも料理にも精通しているスーパー獣人 なのに」
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