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第15話
「この辺りの仕組みはロイドの方が詳しいんだが、アルファとオメガが番になるとかなりの確率でその子もアルファになるらしい。だよな、ロイド?」
「はい、その通りです」
ロイドがしたり顔で会話を引き取る。
「まあとにかく、里の安泰を願うなら『アルファとオメガ』が番になってせっせと子作りに励むしかないわけ。他の組み合わせじゃ――例えば『アルファとベータ』とか『ベータとベータ』とかじゃ、滅多にアルファは生まれないからねー」
「…………」
「とはいえ、番になってくれるオメガを見つけるのもそう簡単なことじゃないんだな~。何しろオメガは絶滅危惧種と言っていいくらい珍しい性だからねぇ。アルファは何だかんだで全人口の一割くらいいるけど、オメガはそれよりもっと少ない。妊娠するのにちょうどいい年頃で、かつ健康なオメガとなれば更に少なくなる。下手したら国ひとつよりも大きな価値が出てくるんだよ」
だんだん話が読めてきた。ずっと黙って相槌を打っていたが、由羅は改めてライアルを見た。そしてポツリと呟いた。
「……つまりあなたは、私に子を産んで欲しいわけだな」
「あ、いや、強制するつもりはない。どうしても嫌なら無理に産ませることはできないし」
「…………」
「でもこの里を出たら、また欲情した奴らに襲われるかもしれない。だから今後は、なるべく俺の近くに……」
「わかった」
由羅はライアルの台詞を遮るように言った。
「……あなたの子を産んでやる。それであなたへの恩返しになるのなら」
「ホントか!?」
「ああ。でも、薬を飲み終わって身体が安定するまでは待ってくれないか。そうでないと新しい子が作れない」
「それはわかってるよ。大丈夫、そんな獣 みたいにがっつきはしないさ」
ライアルが嬉しそうに笑う。本当に、純粋に喜んでいるようだった。
(どんなに大切に扱われたところで、所詮は子を産むための道具か……)
由羅は内心で溜息をついた。うっすらとした失望さえ覚えた。
アルファの子供を作れるのは、オメガである由羅だけ。だから大事にされている。逆に言えば、それができなければ由羅の価値はないということだ。妊娠能力がなくなったら見向きもされなくなるということだ。
やはり、本当の意味で由羅を愛してくれる者はどこにもいない……。
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