17 / 31
第17話
「うげ……。お前、一体何を煮込んでるんだよ。毒薬でも生成してんのか?」
「失礼な。動物の骨は煮込むといい出汁が出るんだよ。鳥の丸焼きで残った骨とか、最高なんだから~」
オタマで一口汁を味見し、「う~ん、美味♪」と満足げに言うロイド。次いで小皿に汁を盛り、由羅に差し出してきた。
「ライアルは興味なさそうだから由羅ちゃん飲んでみて~! 絶対美味しいからさー」
「由羅、嫌だったら飲まなくていいぞ」
「…………」
由羅は小皿を受け取り、湯気と一緒に上ってくる香りを嗅いだ。小屋に入った時に真っ先に感じたのと同じ匂いだ。複数の香辛料を使っているのか、かなり食欲をそそられる。黄金色 の透明な液体を見ていたら、自然と唾液が溢れてきた。
由羅は思い切って小皿に口をつけた。程よく塩気が効いており、それでいて塩だけではない奥深い味がした。くいっと一気に飲み干し、ほう……と溜息をつく。
「……美味しい」
「でしょ~? 鶏ガラで出したスープ、最高だよねぇ~? 今度食卓のメニューに加えようっと」
「この……ええと、スープ? が、今後食事に出てくるのか?」
「そうそう! そこに茹でた麺を入れて食べると美味しいんだよ~! 由羅ちゃん、食べなかった? 今日のメニューに僕特製のつけ麺があったんだけどなー」
「つけ麺……」
由羅は円卓に並んでいた紐状の食べ物を思い出した。あれはそのまま食べるのではなく、塩気のあるスープにつけて食すものだったのか。
「由羅、つけ麺は食べられそうなのか?」
ライアルが顔を覗き込んでくる。確かに先程の鶏ガラスープとやらは美味しかった。吐き気も感じなかった。それなら食べられるかもしれない。
「ああ、多分……」
「そうか。じゃあロイド、そのスープ少し分けてくれ。邸で食べてくる」
「ああ~残念! ここに麺があれば由羅ちゃんと食事できたのに~!」
「なら今度は麺の研究でもやってくれ。由羅、帰るぞ」
ライアルが腰を上げたので、由羅も一緒に椅子から立ち上がった。黒塗りの瓢箪も忘れずに持って行った。彼はスープの入った小鍋を抱えながら、森を抜けて元の邸に戻った。
ともだちにシェアしよう!