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第18話

「スープはちょいと冷めちまったけど、これくらいの方が火傷の心配もないよな」  ライアルが麺とスープを別々の皿に盛って出してくれた。それを見たら今更ながら腹が減ってきた。年齢相応の食欲が蘇ってきて、ごくりと喉が鳴った。 「じゃ、食ってみるか」  いただきます、と箸を掴むライアル。由羅も両手を合わせて箸を取った。細い紐状の麺を数本摘み、ロイド特製の鶏ガラスープにつけてゆっくり啜ってみた。 (これは……!)  思わず目が丸くなった。喉越しのいい麺にスープの塩気がよく絡み、口に入れた途端香辛料の匂いがふわりと鼻を抜けていく。これなら食欲のない時でもどんどん食べられそうだ。 「なるほど、これは美味い。どうだ、由羅?」 「ああ、とても。こんな美味しいもの初めて食べた」 「そいつはよかったな」  由羅はつけ麺を平らげた。久しぶりにまともな食事を採ったような気がした。  満足して箸を置いたら、ライアルは嬉しそうにこう言った。 「やっと少し元気になってきたな。いいじゃん」 「えっ……?」 「由羅、目覚めてからもずっと死んだような目してるからさ。メシも食わないし具合も悪そうだし、心配してたんだ」 「あ……すまない。心配かけて」 「いいさ。たっぷり栄養採ってゆっくり眠れば、少しずつ生き生きしてくるはずだ。そしたら表情も豊かになるだろ。せっかく可愛いのに、そのままじゃもったいないぜ」 「えっ……?」  今――たった一瞬だが、視界がパッと晴れたような気がした。それは本当に一瞬の出来事だったが、灰色の世界がほんの少しだけ色づいたように見えた。ライアルの姿も、より鮮やかにまばゆく映った。 (これって……)  そっと胸に手を当てる。少し鼓動が速くなっていた。いきなり「可愛い」などと言われたから驚いたのだろうか。それとも……。  由羅は初めての感覚に戸惑った。けれどそれは決して不快ではなかった。

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