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第24話

「ボヤボヤしてる暇はねぇな……。ほら、乗れよ。ユートピアに連れて行ってやる」 「その前に傷の手当てをさせて欲しい。早くしないと手遅れになる」 「大丈夫だって……。俺の足ならあっという間に着く。手当てはその後でいい……」 「ならせめて応急処置だけでも……」  そう言い募った時、背後から男の呻き声が聞こえた。ハッとして由羅はそちらを振り向いた。好文だった。気絶していたのではなかったのか。 「お、のれ……化け物……!」  好文が鉄砲に手をかけた。その銃口はライアルに向いていた。 「危ない!」  考える間もなく、自然と身体が動いていた。由羅はライアルの前に飛び出した。  好文の鉄砲が火を噴いた。乾いた発射音が岩場に響いた。 「っ……!」  右の肋骨を砕くような痛みを感じた。ぐっ、と息が詰まり、血液の粒が目の前を飛び散る。 「由羅!」  身体が傾いていく中、悲鳴のような獅子の声が聞こえた。視線の先でライアルが愕然と目を見開いていた。その顔を見た瞬間、嬉しさの波濤(はとう)が由羅の心を撫でた。  崖から身体が離れ、宙を舞った。誰かの鳴き声を遠くに聞きながら、由羅は鮮やかに輝いた世界に昇っていった。 ***  爽やかな風を頬に感じた。  由羅はぼんやりと目を開けた。まず枝を大きく広げた大樹が見えた。新緑の葉の隙間から、太陽の光が柔らかく差し込んでいる。 (ここは……)  どこだろう。異国だろうか。天国だろうか。全身の感覚が鈍く、起き上がるのも億劫である。 「気が付いたか?」 「……!」  見知った顔に覗き込まれ、由羅は驚いて身じろぎした。すぐさま起き上がろうとしたのだが、身体に力が入らない。 「そのままでいいよ。無理すんな」  やんわりと制され、由羅は彼を見上げた。輝く金髪、整った容姿、健康的な肌、優れた体躯(たいく)。ライアルに間違いなかった。 「ライアル……無事だったのか……」  重い右手を懸命に持ち上げ、そっと頬を撫でる。柔らかな温もりを感じた。ライアルが微笑んでくれたので、こちらの気持ちまで温かくなった。

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