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第27話

「……ロイドさんの話では、薬を飲み始めて半年は大きな怪我をしてはいけないということだった。身体に負担がかかって妊娠できなくなるかもしれないからと……。でも私は、里から逃げる途中に鉄砲で撃たれて、崖から……」 「ああ、それはな……」  ライアルが気まずそうに目を逸らす。それに関しては、彼も負い目を感じているようだった。  由羅は叫ぶように言った。 「あなたの子を産みたかった! あなたの期待に応えたかった! でも今の私では(つがい)の役目は果たせない! あなたの側にいる資格もない! 妊娠できないオメガなんて何の価値もないから……! だから……っ」 「由羅!」  言葉を遮るように、ライアルの胸に強く抱き寄せられた。優しく髪を撫でつつ、彼が囁いてくる。 「そんな悲しいこと言うな。子供のことなんて考えなくていい。お前が側にいてくれるなら、俺はそれだけで満足だ」 「そんなこと……!」 「ボスはアルファじゃなくても勤められる。アルファに匹敵するような優秀なベータだってたくさんいる。そこまで大きな問題じゃないさ」 「でも……」 「……ごめんな。俺が『子供が欲しい』なんて言ったから、お前を追い詰めちまった。でも妊娠できようができまいが、俺は由羅を愛してる。俺の番はお前しかいないと思ってる。その気持ちは、これから先も変わらないよ」  少し身体を離され、そっと口付けられる。真っ直ぐで真剣な眼差しが、とてもまぶしく見えた。 「俺は肝心なところで大事な人を守れないような男だが、それでもよかったら……」 「…………」 「番になってくれ、由羅」 「ライアル……」  由羅も彼を真っ直ぐ見つめた。  涙は相変わらず止まらない。だが今流れている涙は、悲しみとは別の意味を持っていた。 「……本当に、いいのか……? こんな私が……あなたの番になって、いいのか……?」 「当たり前だろ。俺の番は、最初から最後までお前だけだよ」  世界がぱぁっと華やいだ。目に映るもの全てが瑞々しく輝き、新鮮で美しいものに様変わりしていった。今までで一番綺麗な光景だった。 「ありがとう、ライアル……。あなたに出会えてよかった……」 「ああ、俺もだ」  ライアルが強く由羅を抱き締めてくる。由羅もそれに応えた。  この色彩溢れる世界を二度と離さないよう、強く強く。

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