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第28話
島は随分と環境が整ってきた。豊かな緑はそのままに、田畑を耕し、邸を建て、仲間たちが生活できる場所を整備した。ロイドが怪しい研究をする小屋も島の外れに作ったし、由羅が機織り等をする仕事部屋も別に用意した。
おおよその整備ができたところで、由羅とライアルはようやく祝言をあげた。祝言といっても畏まったものではなく、島の皆と宴会を開く程度の簡単なものだったが。
(しかし、やたらと話しかけてきたあの老人、誰だったんだろう……)
酒宴の時、上機嫌かつ親しげに声をかけてきた老人がいた。ライアルを始めとした仲間は皆懐かしそうに老人と接していたが、申し訳ないことに由羅はその老人を見た覚えがなかった。
今更「どちら様ですか?」とも聞けなかったので適当に話を合わせておいたものの、向こうは由羅のことを知っている様子だったのでますます謎が深まった。
「ライアル、あの……」
「ん? どうかしたか?」
「…………」
聞いてみようと思ったが、ライアルの顔を見たらどうでもよくなってきてやめた。きっとあれは由羅が里に来る前にこちらに来ていた老人なのだろう。そうに違いない……。
「はー、やれやれ。やっと二人きりになれたな」
祝言が終わり、仲間全員が解散した後、由羅とライアルは大樹の上に作った隠れ家にやってきた。島の景色を一望でき、夜には星が近くなるこの場所は由羅のお気に入りだった。
(せっかく初夜を迎えるならここがいい)
木の上にあるので、隠れ家自体はあまり広くない。寝られる場所も限られており、寝台もひとつしかなかった。でもそれがいいのだ。
由羅は薄衣 を纏ったまま寝台に上った。ライアルも縁に腰かけてきた。そして懐から例の鍵を取り出し、カチリと首輪を取り外す。
「初夜の時に外すって約束だったもんな。あの混乱で失くしちまったかもと思ったが、見つかってよかったぜ」
「もし失くしてしまったら、ロイドさんに予備の鍵をもらえばいい」
「だな。でも、いちいち小言を言われるのは御免だけど」
半年ぶりに首筋を剥き出しにしたら、得も言われぬ爽快感があった。夏場の暑い時期だから余計に、首を通り抜ける風が気持ちよかった。
「しかし、ほんとに由羅は美人だな。星の下だとより一層綺麗に見えるぞ」
指で輪郭を撫でながら、ライアルが言う。
「それに、いつもより数倍いい匂いがする。祝言の化粧で香でも使ったのか?」
「いや、そうではなく、あの……」
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