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恋を失う2

「みゃーん」 毛足の長い小さなモフモフが、か細く鳴きながら擦り寄ってくる。拓斗はそれを優しく抱き寄せて頬擦りした。 「んぁ……ごめん、ちび。腹減ったよな」 ちびは大きな翠色の目でじーっとこちらを見て、またか細くひと声鳴くと、頬をぺろぺろしてきた。 「っ、こら、擽ったいよ」 ザラザラした舌が、涙に濡れた自分の頬を舐める。 ここに住みついてまだ2週間ほどの野良猫だが、こいつは人の気持ちが分かるらしい。 拓斗がこうして泣いたり落ち込んだりしていると、心配そうな目をして擦り寄ってきてくれる。 「おまえは優しいな。あいつと違って」 あいつというのは、このちびを拾う直前に別れた元カレのことだ。まるで心にぽっかり空いた穴を埋めるように、ちびはここに現れた。 ちびを抱いたまま身を起こす。 途端に腹の虫がぐーっと鳴った。 拓斗は思わず苦笑した。 こんなに辛くて泣いてばかりいても、腹は減るのだ。 なんだかバカバカしくなってくる。 「よし。飯にするか」 拓斗はもう一度ちびに頬擦りすると、床にそっとおろしてやった。 スーツの上着を脱いで椅子の背もたれに引っ掛け、ワイシャツの袖を捲る。 狭いキッチンスペースに向かうと、ちびは足元にじゃれつきながらついてきた。 シンクの上の小さな棚をゴソゴソと探る。 目当ての猫用の缶詰は、残り1個だった。 その横にあるツナ缶も一緒に取り出し、調理台の上に置く。 「明日、仕事の途中でホームセンターに寄らないとな」 下の棚に仕舞ってある固形の餌も取り出し、まだ真新しいちび用の皿にザラっと出してやる。 ちびは「なーん」と鳴いて、皿と自分を見比べた。 「待ってろ。今、ミルクも出してやるからな」 冷蔵庫から牛乳パックを取り出し、深皿の方に入れてやると、ちびはくんくんと小さな鼻を蠢かせた。

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