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恋を失う7
「深月くん、大丈夫だよ」
担当営業の佐々木がぽんっと肩を叩いてくる。
拓斗は振り返り、眉尻をさげた。
「すみません……俺のせいで」
「いや。君の指示書、チェックしないで流したのは俺のミス。それに失敗は誰にだってあるよ。同じミスをしないように、次からは必ず二重チェックしよう」
「はい。あの、それで……ソニアルさんには」
佐々木は隣の椅子に腰をおろすと、
「行ってきたよ。担当課長は頭から湯気出して怒ってたけどね。新商品発表には何とか間に合いそうだし、あそこの部長は工場長と仲がいいから。今後の受注に全く影響ないとは言えないけど、意外と大事にならないで済みそうだ」
「そう……ですか……」
拓斗は詰めていた息を吐き出した。
自分が地方に飛ばされるならまだいいのだ。
佐々木はうちの部でも一番の有望株で、上司からの信頼も厚い。後輩の面倒見もよくて、入社以来、自分も随分仕事を教わってきてる。この人に迷惑がかかるのだけは、嫌だった。
「それより深月くん。最近、顔色が良くないよね。体調不良?それとも、何か悩み事かい?」
拓斗はそっと佐々木の顔色を窺った。
佐々木は、修平の同期なのだ。
もしかしたら、あいつから何か聞いているのだろうか。
「あ……いえ。ちょっとこのところ、風邪気味で……」
「季節の変わり目だからね。最近流行ってるみたいだしな」
佐々木は気遣わしげな顔をして顔を覗き込んでくる。その目には特に含んだような色は見えない。
「今日、仕事終わったら少し飲みに行かないか?」
拓斗はドキッとした。今回のミスで落ち込んでいる自分に、気を遣ってくれているだけだ。分かっているのに、何かあるんじゃないかと気になってしまう。
「あ……あの、」
「何か予定があった?……あ、もしかして彼女とデートかな?」
「や。別に予定なんてないです」
「じゃあ、こないだ見つけた魚料理の美味い店、行ってみるか」
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