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恋を失う12
修平は、佐々木や岩館ほど人付き合いが上手いタイプじゃない。ことに、自分との付き合いに関しては、お得意のあのポーカーフェイスで絶対に誰にも分からないようにしていた。自分にも、周囲にバレないようにと何度も釘を刺していたのだ。
まさかあの男が、旅行のことまで佐々木に話していたなんて……。
「旅行っていうか……たまたまそういう話になって、おまえも行くか?ってことで」
今さらな言い訳をしている自分に、内心うんざりした。
もう修平を怒らせるかも?とビクビクする必要はないのだ。付き合っていたからこそ、彼にウザいと思われたくなくて、これまでひた隠しに隠してきたのだから。
「意外だったよな。君が小川くんと気が合うなんてさ」
「え……そうですか?」
「うん。彼は会社の人間とはプライベートでまで付き合いたくないって、俺ら同期にハッキリ言っちゃうタイプだったし。君も、誰とでもすぐ親しくなれる方じゃないだろう?」
随分ハッキリ言われてしまったが、たしかに自分はわりと人見知りな方だ。
「ああ……まあ、そうですね」
苦笑しながら曖昧に答えると、佐々木はにこっと笑って
「ウマが合ったんだろうな、きっと」
佐々木に他意はないのだ。でもこの話題は苦しい。何か別のことを話さないと。
「佐々木さん、例の納期の件…」
「小川くんはさ、多分、深月のことすごく気に入っているよ。前に2人で飲みに行って、珍しくプライベートな話になったんだ。彼、君との旅行の話をすごく楽しそうに話してくれた」
拓斗は口を噤み、またグラスを煽った。
苦しくて胸が痛い。
もうやめてくれ。
その話を続けるのは。
「あんな小川くんの顔って、俺は見たことなかったからね。すごく印象的だったなぁ…」
「彼とは」
佐々木の無邪気な言葉を遮りたくて、思わず大きな声が出た。拓斗は慌てて声を潜め
「小川さんとは、ちょっと前に喧嘩して、……だからその……、今は仲良く、ないです」
もうちょっと他に言い様があるだろう、と自分でも思ったが、出てしまった言葉は戻らない。
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