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恋を失う13

案の定、佐々木は面食らったような顔でこちらを見ている。 「あ。いえ、つまり、プライベートではもう」 佐々木はずずいっと顔を近づけてきて 「喧嘩したのか?どうして?」 ……ああ……。もういい加減、この話題から離れたいんだけどな。 拓斗は泣きたくなってきた。 「佐々木さん、目がすわってますよ。明日も仕事だし、もうそろそろ…」 「んー……そっか。もうこんな時間か」 まだ粘るかと思ったが、佐々木はスマホで時間を見て、あっさりと身をひいた。 「そうだな。俺も眠くなってきたし……そろそろお開きにするか」 佐々木の気が変わらぬうちに、拓斗は椅子から立ち上がると、 「じゃ、俺、会計してくるんで…」 「あ、ちょっと待て。誘ったのは俺だから、今日は俺の奢りだ」 言いながらふらふらと立ち上がった佐々木の身体が大きく傾ぐ。拓斗は慌てて自分より長身の身体を支えた。 「あ、もう。佐々木さん、飲み過ぎですよ」 「ん。あー……悪い。ちょっと、……トイレ」 くぐもった声で呻くように呟き口を手で覆う佐々木に、拓斗は顔を引き攣らせた。 「あ、待って。吐きそうですか?ちょ、ちょっと我慢しててくださいね」 よろめく佐々木の腕を自分の肩にかけさせ、引きずるようにして奥のトイレに連れて行く。 「佐々木さん。大丈夫ですか?」 ガードレールに腰を下ろし、俯いている佐々木に声を掛けた。佐々木はのろのろと顔をあげ 「ああ。……さっきより全然マシだ。ごめん、汚いの世話させて」 かなり落ち込んだその情けない顔は、職場で颯爽と仕事をこなす彼とは別人のようだ。 拓斗はくすっと笑って 「大丈夫です。俺、こう見えて酒だけは強いんで、大学の時から人の世話って、慣れてますから」 佐々木は何故か眩しそうに目を細めて 「なあ、深月。タクシー拾うけど、今日は俺のとこに泊まって行かないか?」

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