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恋を失う19※
佐々木が帰ってくる前に部屋着を着込んでしまおうと、拓斗はちょっと焦りながら風呂から出た。
普段、部屋ではTシャツとトランクス1枚で過ごしているが、奥のクローゼットから長袖のスウェット上下を引っ張り出す。
そういえば、この部屋に他人を入れたのなんて久しぶりだ。修平と付き合い始めの頃、何回かここに彼を泊まらせたが、他人の家は寛げないと言って、こちらには来なくなった。
遊びに行くのはいつも自分の方で、えっちする時も彼のアパートだった。
正直、修平の部屋でセックスするのは苦手だった。
このアパートは比較的造りがしっかりしていて、防音対策もされている。
だが、修平のアパートは会社から数分の徒歩圏内で通勤には便利だが、古くてかなりの安普請で、隣の部屋の声や音が異常に聞こえた。
だから、彼の部屋でそういうことをする時は、声を出さないようにと、拓斗はいつも必死だったのだ。
唇を噛み締め、それでも声が漏れそうな時は、両手で自分の口を押さえて、隣に自分の声が響かないようにしていた。
修平は自分のそんな様子に興奮するらしく、声が出そうになるようなことをわざとしたがった。
真っ昼間で、隣の部屋の大学生が音楽を聴いているのが分かる状態なのに、わざとベランダに出るサッシ窓を開け放ち、感じる所をしつこく嬲ってきたりした。ベランダに近い床の上で四つん這いにさせられて、後ろからガツガツと突き入れられる。両手で口を必死に押さえても、修平の興奮に煽られて、自分も更に興奮して声が出てしまう。
やってる最中は、そのスリルやドキドキが快感をすり替わって夢中だった。でも終わった後で、隣の部屋の音楽がぴたっと止まっていたりすると、聞き耳をたてていたのじゃないかと冷や汗が出た。
……ばか。なに思い出してるんだよ、俺は。
今、このタイミングで、修平とのえっちなんか思い出してどうするのだ。佐々木が戻ってきたら、変に意識してしまう。
拓斗は慌てて、鮮明に浮かんでしまった記憶を、頭から振り払った。
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