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恋を失う21
「や。何となくですけど…さっきと随分、雰囲気違うから…」
「へぇ……おまえって鋭いんだな」
佐々木は手元のパフェに視線を落とし、柔らかく微笑むと
「さっきコンビニ向かう途中で、喧嘩してた相手から電話がかかってきてさ」
「喧嘩って……彼女、ですか?」
「いや。違うよ。恋人じゃない。でも……もしかすると恋人以上に、俺にはすごく大切な人かもしれないな。ただ、今回の喧嘩はかなり深刻だったから……もしかしたらもう、仲直りは無理かなって思ってたんだ」
パフェをスプーンでつつく佐々木の表情が、何とも言えず優しい。きっとその相手のことを思い浮かべているのだろう。
「佐々木さん、悩んでたのって、そのことだったんですね。仲直り……相手から言ってくれたんですか?」
佐々木はふふっと思い出し笑いをすると
「んー。あれは仲直りしたいっていう意味だったのかな。違うかもな。もっと喧嘩吹っかけてくる感じだったから」
「ええっ……でも、」
「でも、喧嘩してる時にあいつから電話くれるなんて、滅多にないんだよなぁ。だから……あいつなりに歩み寄ってくれたのかな?って勝手に思ってる」
拓斗は佐々木の横顔から目を逸らし、自分のパフェをつついた。
「佐々木さんの顔、好きな相手のこと想ってるって感じです。付き合ってる彼女さんには、見せない方がいいですよ、そういう顔」
佐々木は顔をあげ、驚いたようにこちらを見て
「え?そうか?俺、そんな顔してたか」
「ええ。たぶん、焼きもち妬かれますよね。そんな顔、彼女に見せたら」
「ふーん……そうか、俺、そんな顔してたか」
佐々木は意外そうに呟いて、首を傾げている。
拓斗は甘そうなソースのかかったメロンをスプーンですくいあげ、ぱくっと口に放り込んだ。
すごく愛おしそうに感じたのだ。たぶん、自分が彼女の立場なら、あんな表情であのセリフは絶対相手に嫉妬する。
「まあ、俺いま、フリーだしな」
「え。付き合ってないんですか?前に総務課の子と噂になってましたよね」
「いやぁ……あの子はさ、俺と付き合う気なんかもともとなかったよ。もっと大物狙いだからね。2、3回飲みに行ったけどそれで終わり」
佐々木は、チョコソースのたっぷりかかったバナナとアイスをスプーンですくい上げると
「な、拓斗。こっち向いてみろよ」
「え……?」
拓斗が佐々木の方に顔を向けた途端、口の前にスプーンがにゅーっと伸びてきて
「これ、やるから、おまえのも味見させろ」
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