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恋を失う23

すぐそばに他人の体温があって、寝息が聴こえる。 修平とは別れる1ヶ月以上前からセックスはしなくなっていたから、こういう感覚は本当に久しぶりだ。 うっかり寝返りもうてない窮屈な状況だが、思ったより嫌ではなかった。 ちびは寝る時、寒いとベッドに潜り込んできたりしていたが、今夜はロフトの自分の寝床で大人しくしているらしい。 それでも、他人とのこんな距離感に緊張していて、しばらくは寝付かれなかった。 やがて、拓斗はいつの間にか、夢の世界へと誘われていた。 「深月。俺はソニアルの方に行ってくるから、おまえ、ハイゼンの社長が来たら一緒に工場に行ってくれるか?」 「はい。分かりました」 「おそらく、工場の視察するって向こうの社長が言ってくると思うんだ。工場長には朝イチで伝えたけど、もう一回根回し、よろしくな」 「分かりました。大丈夫です。行ってらっしゃい。気をつけて」 緊張に頬が強ばりそうな拓斗に、佐々木は爽やかな笑顔を残して、課長と一緒に慌ただしく事務所を後にした。 今朝の寝起きのボサボサ頭と腫れぼったい目の佐々木は幻か?っと突っ込んでやりたくなるほど、仕事中の彼は颯爽とした仕事が出来る系のイケメンだ。 ……切り替えが、凄いですよ……佐々木さん……。 自分も見習わなければな…と思う。 ああいう切り替えが出来てこそ、一人前の社会人なのだ。 拓斗は、今日の会議に必要な書類を揃えて、コピー機に向かった。 先日の納期遅れの件で、先方の社長以下重役連中が、うちの工場部門の視察に来る可能性があるのだ。相手は我が社の取引相手の中でもトップクラスの大手企業だ。今日の会議は、今後の取り引きに大きな影響を及ぼす正念場になる。 ……とりあえず俺は、俺に今出来るベストを尽くす。 コピー機で必要枚数をコピーして、隣の作業台で抜けがないように確認しながら資料を作る。 他の部署の青焼きが所狭しと広げられている台の上で、せっせと作業に没頭していると、隣の課の岩館がやってきて、肩をぽんっと叩かれた。 「おはよ。朝から忙しそうだな。手伝う?」 「あ。おはようございます。や、大丈夫です。もう少しで終わるので」 岩館はにやっと笑うと、椅子を引っ張ってきて背もたれを抱えるようにして逆向きに座る。 「佐々木くんの仕事、大手相手が多いから、深月くんも気が抜けないねぇ」 「あーあはは。でもその分、やり甲斐ありますし。佐々木さんの仕事、他の部署に比べて特殊なものも多いし、すごく勉強になりますよ」 「お~。前向き。深月くんはいい子だね。ところでさ、ひとつ、聞いてもいい?」

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