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それは違う8※

「そういう目、するのやめてくれる?」 ソファーの上で、ほぼ全裸に近い姿で、拓斗は喘ぎながら身体を上下に揺らしていた。 上はワイシャツが肌蹴けてかろうじて腕に引っかかっているだけだし、下は黒いソックスだけのアラレもない姿で、もし誰か入ってきたら弁解のしようもない。 自分の下にいる男はすっかり満足した様子で、余裕のポーカーフェイスで自分を見上げている。 こっちは怪しい媚薬で狂わされた挙句に、射精せずに中だけでイかされたのだ。溜まりきった欲情はまったく解消されぬまま、全身を甘く昂らせている。 「ほら。休憩終了10分前。そろそろイかないと仕事に戻れないよ?」 言われなくても分かってる。もう時間がない。 でも一度放出しそびれてしまったペニスは、混乱して射精の仕方が分からなくなっていた。出したいのに後一歩がどうにもならない。 「うご、…っいてよ、ね、ねぇ、」 拓斗は焦って、腰を揺らし促した。 「うーん。タイムアップだな。続きはまた夜。その格好で戻るわけにはいかないでしょ?あなた」 腰を掴んで持ち上げられた。焦れ切ったソコから修平の楔がスルリと抜け出る。 「やっ、あとちょっと、」 「社会人でしょ?オンオフの切り替えはしないとだよね」 修平はこちらの身体を押しのけると、さっさと服装を整え始めた。 どの口が言うっ?と、文句を言ってやりたい。自分をこんな風にその気にさせたのは、オフィスで強引に抱いたのは、あんたの方だろうが! 「あなたも、遅れないようにね」 呆然としている拓斗に、修平はネクタイを直しながら囁くと、そのままドアを開けて資料室を出て行った。 熱が抜けない。 身体だけじゃない。頭もぼーっとしている。 拓斗はデスクで来月の下請けへの発注書を作りながら、そっと熱い吐息を漏らした。 1人置き去りにされて、あれから急いで服を着て、資料室の階の洗面所に駆け込んだ。 あの階がほとんど使われていないのは幸いだった。まるで襲われましたと言わんばかりのこんな乱れた姿を、誰にも見られずに済んだのだから。 顔を冷たい水で洗い、くしゃくしゃの髪を撫でつけ、ネクタイを結び直す。スマホで時刻を確認すると、13時ちょうどだった。 慌てて洗面所を飛び出し、資料室の鍵を管理室に戻して、一つ下の事務所階まで降りたのだ。 床に散らばったファイルは、拾って棚に置き直すのが精一杯だった。後でもう一度行って、順番通りに並べ直さないと、管理室から文句を言われるかもしれない。 拓斗はもう一度、深く吐息を漏らした。 酷い男だ。 自分は何故、あんな男が好きなんだろう。

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