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それは違う35

「たしかさ、えさがなくなると自動で補充されるやつ、ホムセンで見たことある」 修平が顔をあげた。その眼差しは猫に向けていたのと同じくらい優しそうで、ドキドキする。 「そういうの、あるんだ」 「見に行ってみるか?今度の休みに」 その言葉に、拓斗は更にドキドキした。 今度の休みに一緒にホムセンに行ってくれると言っているのだ。修平の方から。 それはつまり、今後もまた会ってくれる気があるということだ。 昨夜の誘いは一時の気まぐれではない……? そう、思ってもいいのだろうか。 期待しても……いいのだろうか。 「あ。あのっ、うん。今週末、何も予定ないし、もし修平が、」 「誰かさんとデートの約束はしてないんだ?」 修平の微笑みが消える。真顔で見上げてくる。 「デートなんか。ないよ、そんな予定も相手も」 「……そっか。じゃ、土曜日。どっちも仕事じゃなかったらホムセン行ってみよう」 「うん」 修平はもう一度ちびの頭を撫でてから立ち上がった。 「あなた、着替えなくていいの?そろそろ時間だ」 言われて気づいた。慌ててスマホの時計を見る。今からだとシャワーを浴びてる時間はない。でも、髪の毛は寝癖で跳ねているし顔も洗いたい。下着ごと全部着替えたい。 「あ。じゃあ、俺ちょっと着替えて」 急いで部屋に向かおうとすると、修平に腕を掴まれた。 「身体、平気?昨日のあれ、ちょっと量が多すぎたか?」 たしかにまだ、少し気怠い。でも薬自体はもう抜けてる気がする。 それよりも、修平に言われて、昨夜の自分の痴態を思い出してしまって、顔が一気に熱くなった。 「あ、あの。うん、ちょっと多すぎたかも。俺、途中から完全に意識飛んでたし」 「そっか。何度もそういうことしてると、まずいかもな。次からは量減らすよ」 ……え……次から。って、次も、あるんだ……。 修平の言うことに、いちいち動揺してしまう。 週末に、ホームセンターに行こうと誘ってくれる。一夜限りの情事ではなく、次はこうしようと言ってくれる。 それは決して、ムードのあるデートのお誘いではないけれど、これからも自分と一緒に過ごしてくれる気があるということなのだろう。 期待するなと言う方が、無理だ。 「あの。修平。俺、あの時…」 「着替えるなら急げよ。バイクで飛ばしても、間に合わなくなるからね」 急かされて、心も言葉も宙ぶらりんなまま、拓斗は急いで着替える為に部屋の奥へ向かった。

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