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それは違う45

もし佐々木と付き合ったら……。 たぶん、すごく穏やかで楽しい時間を過ごせるんだろうな…と思う。先日、アパートに泊まった時、佐々木のプライベートな姿をちょっと見ただけで、それは容易に想像出来た。 昨日の修平との一夜を思い出してみる。 佐々木と違って、修平は素っ気ない。つれないし、たまにこっちが嫌がることを無理強いしてくる。愛されているのかいつも不安になるし、修平が何を考えているのか分からなくて怖い。 でも……。 自分が好きなのは、やっぱり修平なのだ。 これは自分の心なのに、冷静に考えたら佐々木と付き合った方が幸せな気がするのに、分かっていてもどうしようもない。 理屈とか理性とか、そういうものでコントロール出来ない自分の心の奥底から、溢れてくるのだ。修平を好きだと思う気持ちは。 自分でも、どうにもならない。 「とりあえず、そろそろ終わりにしましょうか。もう遅いし」 時計を見ると、20時過ぎだ。山田も時間を見て目を丸くして 「うわ。もうこんな時間。やっべぇ。工場の方、夜勤シフト始まってる。担当さん帰っちゃったかな」 「え。何かトラブルですか?」 「いや。トラブルっていうより、予定外のやつ、無理やりねじ込んでもらったんだよね。俺、ちょっと工場行ってきます」 「今から?……大変ですね」 山田は広げていたノートやファイルをかき集めながら、立ち上がって首を竦め 「この仕事、大変じゃない時の方が少ないっすよね。深月さん、お疲れ様でした。じゃあ、お先に」 「お疲れ様です。気をつけて」 山田はにかっと笑うと、バタバタと会議室を出て行った。 拓斗はもうすっかり冷めてしまったコーヒーを残りを飲み干して、パソコンの電源を落とす。 真っ暗になった画面に、自分の顔が映っている。その顔に、昨夜の修平とのセックス中に鏡で見せられた、自分の淫らな顔が重なった。 「っ」 下腹が、ズクっと疼いた。 拓斗は慌てて、パソコンの画面から目を背ける。 引きずられているのだろうか。身体の快感に。 心じゃなくて、この身体が、修平とのセックスに溺れてしまっているだけなのだろうか。 冷たい態度をされても、強引にされても、それでも修平に会いたくて堪らなくなるのは何故なんだろう。 自分で、自分の心が、分からない。 拓斗は唇をぎゅっと噛み締めると、ファイルを手に立ち上がった。

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