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それは違う46※

自分のデスクに戻り、まだちらほらと残っている残業組に混じって、キリのいいところまで仕事を続けた。 顔をあげて時計を見ると、もう21時過ぎだ。 ふと視線の巡らせ、修平のデスクの方を見る。パソコン画面を見つめている修平が、ちらっとこちらを見た。 目が合う。 ドキッとして逸らそうとすると、修平が片目を瞑って何か合図してきた。 ……?……なんだろう……。 さり気なく見つめていると、修平が意味ありげな目で、給湯室の方をちらっと見てから立ち上がった。 ……来いって、こと、だよな……。 拓斗は自分のマグカップを手に立ち上がった。 周りを気にしながら給湯室に行くと、先に来ていた修平がカップを洗いながら囁く。 「まだかかるの?仕事」 「あ。ううん。もうそろそろ、帰ろうかと」 「これからあなたの部屋、行ってもいい?」 「え……?」 「いったんうちに来て。バイクで送るから」 「あ……うん。わかった」 「今朝おろした所ね。じゃ、後で」 修平は小さな声でそう言って、去り際にこちらの頬をす……っと撫でてから、給湯室を出て行った。拓斗はビクッとして、撫でられた場所に自分の手をあてて、修平の後ろ姿を見送る。 ……俺の、アパートに……泊まるって、ことだよな。 頬に触れていった修平の指の温もりが、じわじわといつまでも消えない。 嬉しくて、仕事の疲れも吹き飛んでいた。 拓斗は慌てて、帰り支度をする為に、自分のデスクへと戻った。 「お待たせ」 目の前の路地で修平がバイクを停める。今朝つけていたヘルメットを差し出された。 「乗って。まずは俺の部屋ね」 拓斗は頷き、急いでヘルメットを着けると、修平の後ろに跨った。 アパートの部屋に入ると、急に腕を掴まれグイッと引き寄せられた。驚いて息をのむ拓斗の唇を、修平が荒い吐息とともに奪う。 噛みつくような強引な口づけ。 拓斗は修平の腕をぎゅっと掴む。 「んっん、んぅ…っ」 唇を割られ、舌がねじ込まれる。 ビリビリと身体が痺れたようになった。 ぬめる舌が口の中を動き回る。 いきなりの激しいキスに応えきれずに惑う舌を、絡め取られてじゅっと吸われた。 苦しい。息が、出来ない。 「んぅっっんぅ、んっ」 鼻で必死に呼吸を繋ぎながら、自分から舌を絡めた。よろけて後ずさり、背中がドアに当たる。掴んでいた手を逆に取られ、手首を掴まれドアに縫いつけられた。修平の膝が両脚の間に差し込まれる。膝頭が、急所をグッと押さえた。 まるで虫の標本のように、玄関ドアに縫い留められて、更に口づけは激しさを増す。

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