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それは違う50※
「どうしてそんな変な顔するの?」
「え、だって、修平。いつも泊まる時、あのベッド狭すぎるって言ってたし」
だから泊まる時はいつも、このマットレスを敷いて寝ていたはずだ。
「そうだったか?それより拓斗。降りてこいよ。風呂、入ろう」
「え?」
「今、お湯を溜めてる。来いよ」
拓斗は腕を引っ込め、修平を見ながらそろそろと階段を降りた。
修平の口からまた意外な言葉が飛び出して、心臓がドキドキする。
「風呂……一緒に?」
「狭いからな。立ったまま脚だけ浸かるだけだけど。身体洗ったりは出来るだろう?おいで」
修平はにこりともせずそれだけ言うと、スタスタと部屋を出て行った。
……え……うそ。一緒に……入るの?
うちのあの狭い風呂に一緒に入るなんて、今まで1度も言ったことないのに。
拓斗が呆然としながらドアを開けると、修平はさっきいったん着ていた部屋着を脱いでいる途中だった。
「拓斗。ここ、置いとくとこないから、おまえは外で脱いで。これ、部屋の方に置いといてくれ」
修平は脱いだ服と下着をこちらの手に押し付けて、そう言った。
ぼんやりと受け取りながら一旦外に出て、拓斗は自分の身体を見下ろす。
「ほんとに……一緒に入るんだ……」
ごくりと唾を飲み込み、修平から受け取った服と下着を部屋の隅に置いて、タンクトップとトランクスを脱ぐ。
裸になって、タオルで下半身を隠しながら再びドアを開けると、待ち構えていたような修平に、腕を掴まれ引っ張りこまれた。
「うわ…っ」
強引に抱き寄せられて抱き締められる。どちらも裸なのだ。素肌がいきなり触れ合ってドギマギする。頭半分ほど自分より背の高い修平の顔を、腕の中から見上げた。
目が合う。修平の目が笑っている。
「あなた、その驚いた時の目、いいね」
囁かれて顔がかーっと熱くなった。
「きゅ、急に、引っ張る、から」
思わず恨みがましい目で睨むと、修平は目を細めて
「あんな格好、見せるあなたが悪い」
「…ぇ?あんな格好って」
「あなたのお尻。トランクスの隙間から見えてた」
拓斗は目を見張った。
さっきロフトの階段にいた時だ。
「下から眺めるのも新鮮だな。今度、あそこでえっちしようか」
「ばか。何言って…ん、んぅっ」
文句の言葉を唇で奪われた。
強引に抱き寄せたくせに、口づけは優しい。
ちゅっと吸われた後ですぐ離れ、また啄むように口づけてくる。応えようとすると、また離される。揶揄うように逃げるその唇を、ついムキになって追いかけてしまう。もっとしっかり交わりたいのに、ちゅっと吸ってはまた逃げていく。
拓斗は唇を尖らせ、上目遣いに修平を睨んだ。
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