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トライアングル12

「そろそろ、準備出来る?1時間後にはここ、出発するけど」 「あ……うん」 さっきの自分の乱れっぷりが恥ずかしくて、修平の顔が真っ直ぐ見られない。 身体の熱はだいぶ引いていたが、まだアソコに何か入っているような感覚が、いつまでも消えてくれない。 拓斗は微妙に修平から顔を背けながら、ベッドから起き上がった。 意識がはっきりするまで、修平はずっと抱っこしてタオルでおでこや頬を冷やしてくれていた。その表情が柔らかくて手つきが優しくて、ずっとそのままでいたかった。 修平はもうすっかり出掛ける準備が済んでいる。拓斗は恐る恐る、床に足をおろして踏みしめてみた。 まだちょっとふらふらして力が入らない。でも、自力で歩けないほどではなかった。 「翡翠は、車に乗るの、初めて?」 「あー……うん、そうかも。病院に、予防接種とかいろいろ、連れて行かなきゃって思ってたけど、まだ…」 「それは研修から帰ってきてだな。病院行くなら、俺の車で乗せてくよ」 拓斗は奥のクローゼットの方に行くと、ラックから普段着用のシャツと畳んで置いたジーンズを取り出した。 タンクトップを脱いで、黒のTシャツを着て、その上からくすんだブルーのシャツを羽織る。 ジーンズを穿こうとして、片脚をあげたらよろけた。やっぱりまだちょっと力が入らない。全身が気怠くて、奥が甘く疼いていた。 「車に乗ったら、少し寝てるといい。あなた感じやすいから、あの薬はもっと少なくてもいいのかもな。今度使う時は、ローションと併用してみよう」 修平はいつになくご機嫌で饒舌だ。 ロフトで寝ていた翡翠を手招きして、抱っこしながらおろし、ベッドに腰掛けて翡翠の身体を愛しげに撫でてあげている。 着替えながらその様子をちらちら眺めて、拓斗は複雑な気分になった。 修平の表情が、翡翠に対しては特別に甘い気がする。さっき自分に向けてくれたよりも。 ……バカか、俺。 翡翠に嫉妬なんかしてどうするのだ。 相手は仔猫なのだ。 修平がかなりの猫好きだと知って、嬉しかったのに。 壁に寄り掛かりながら、どうにかジーンズを穿き終え、靴下も履いた。 準備はOKだ。もういつでも出掛けられる。 ふと、視界にロフトの階段が入って、拓斗は頬が熱くなるのを感じた。 ついさっき、あんな所でえっちしたのだ。媚薬の効果もあったが、自分でも信じられないくらい乱れてしまった。

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