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トライアングル18
それはどういう意味だ?と聞こうとしたら、車が大通りから細い脇道に入った。そしてすぐにちょっと個性的な建物が目に入った。
「あれだよ。弟の自宅と店」
拓斗は思わず身を乗り出して、その建物をしげしげと見つめた。
周りに建ち並ぶごく一般的な日本の家屋とは、随分と印象が違う。大きな丸太を組んで建てたログハウスだった。
「わ……なんか、格好いい」
「大学の時の先輩が建てた家だそうだ。先輩が海外に転勤になったから、期間限定で借りているらしい」
「ふーん。お店って、何の?」
「ま、見てみるといいよ。あいつの変わった趣味」
修平は敷地内にあるガレージの前に車を停めると、さっさと車から降りて後部座席のキャリーケースを運び出す。拓斗も慌てて車から降りた。
「翡翠。大丈夫かな」
修平が手に持つキャリーケースの窓から中を覗き込むと、翡翠が顔をあげて「にゃ~」とか細く鳴いた。
「まったくストレスなしって訳にはいかないな。もうすぐ広い所に出してやるからな、翡翠」
修平は優しく語りかけながら、玄関へと歩き出した。拓斗は慌てて後を追う。
修平の指がベルを鳴らすよりも先に、ドアが開いた。
「お。ようやく来たね」
顔を出したのは修平の弟、紘海だ。
以前会った時よりも髪の毛を伸ばして、眼鏡をかけている。改めて見ても、修平とはあまり似ていない。
拓斗は思わず人見知りを発揮して、修平の後ろにそっと隠れた。
「ああ。予定よりちょっと遅くなった。大丈夫か?」
「うん。今日はもう店仕舞いしたんだ。やあ、こんにちは、拓斗くん」
初っ端からにこにこしながら名前を呼ばれて、拓斗はドギマギしながらひょこっと顔を出した。
「あ。あの、こんにちは。すみません、突然無理なお願いしてしまって」
「いや。頼ってくれて、とても嬉しいよ。こうして君に会えたのもね」
初対面に近いとはとても思えない親しげな口調で、にこっと笑って片目を瞑る紘海に、拓斗はすっかり面食らっていた。
修平が言っていたのは本当だ。
まるで昔からの友人のように、あっという間に距離を詰めてくる。
嫌味がなくて優しげな印象だが、何となく苦手に感じてしまう。
「紘海。拓斗が怯えてる」
「どうして?あ、そうか。ちょっと人見知りなんだったよね」
拓斗は何と返していいか分からず、ぎこちなく微笑み返した。
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