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トライアングル19

「うわ……すごい……」 店に入るなり、予想していなかった光景が広がっていた。 「ふふ。驚いたかい?これ全部、海外から仕入れた雑貨なんだ」 拓斗の反応が嬉しかったのか、紘海は歌うような声音で店の品物を自慢し始めた。 「これは時計。ちょっと変わってるでしょ。からくり時計なんだよ。こっちのはオルゴール。この仮面は…」 「紘海。それは後にして、まずは翡翠をキャリーケースから出してやりたいんだけどな」 修平が横から口を挟むと、紘海は苦笑して 「ああ、ごめんね、つい。ここは物でいっぱいだから、あっちに行こうか。拓斗くん、おいで」 手招きされて、拓斗は所狭しと並んでいる不思議な雑貨の隙間を、恐る恐る通り抜けながら後に続いた。 店の奥の大きな硝子を嵌め込んだドアを開けると、ガラッと雰囲気が変わる。 ほとんど物がない広い空間には、居心地の良さそうなソファーと一枚板で造られた頑丈そうなローテーブルが、中央にドンと置いてあった。 「そこ、座ってて。飲み物を持ってくるから」 紘海は相変わらず歌うような口調でそう言い置いて、更に奥の仕切りの中へと姿を消した。 初っ端から唖然とさせられて、拓斗はぼんやりとソファーに腰をおろし、部屋の中をキョロキョロ見回す。 「変わってるだろ?」 修平が隣にどっかり腰を下ろして、苦笑する。 「あー……あはは」 拓斗は修平を見て苦笑いをした。 たしかに変わっているけど、修平の弟なのだ。下手なことは言えない。 「よし。翡翠、出すよ」 修平はキャリーケースを膝に抱えあげると、扉を開けた。拓斗はすかさず中を覗き込む。 「翡翠。ごめんね。狭かっただろ?もう出てきても大丈夫だよ」 「にゃーん……」 翡翠は掠れたような小さな声でひと声鳴くと、おずおずと顔を出した。拓斗が両手を広げて 「おいで」 優しく声を掛けると、翡翠は落ち着かない様子で、差し出した拓斗の掌を前足でとんとんと叩いている。やはり急に環境が変わって怯えているのかもしれない。 「翡翠。大丈夫だよ。おいで」 拓斗が優しく翡翠の小さな手を撫でると 「みゃぁ~」 さっきよりはちょっと大きな声で鳴いて、恐る恐るケースから修平の膝の上に手を下ろした。 前足の両脇を手で掴んで抱き上げる。胸に抱えてやると、翡翠は拓斗の顎をぺろぺろと舐めた。

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