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トライアングル24
「それで拓斗くん。兄貴のどこが好きなの?」
紘海がまた同じことを聞いてくる。そっとやり過ごせたと思ったのに、まだ食い下がってくるらしい。
「どこって……あの、いろいろ」
「顔は?」
「……ぁ……うん、好き、です」
拓斗はちらちらと修平の顔を見ながら、蚊の鳴くような声で答えた。
「へえ……あの顔がねぇ……。性格も好き?」
「……はい」
これは何の拷問だろう。話を逸らしたいが、いい話題が思いつかない。
「そっか。じゃ、身体は?もちろん、兄貴とはセックスしてるんでしょ?」
「……っっ」
流石にその質問には答えられない。拓斗は頬が熱くなるのを感じて、修平の方に救いを求めるように顔を向けた。
「前に兄貴に聞いたんだ。付き合ってる子、身体の相性いいの?って。兄貴、珍しくものすごいドヤ顔してさ。最高だって答えたんだよね」
紘海の言葉に拓斗はびっくりして彼を見た。
……え……嘘。修平が?そんなこと言ったの?
付き合っていることですら、弟に話しているのは意外だったのに。そんな突っ込んだ内容まで話しているのか。
「大丈夫。君はそう思ってないなら、正直に言ってもいいんだよ?」
「……?!」
何が大丈夫なのか、さっぱり分からない。
「いえっ、あの、俺も最高ですからっ」
そう思っていないなんて修平に誤解されたくなくて、思わず焦って答えてしまった。でも言ってから、顔がカーッと一気に熱くなる。
紘海が目を丸くする。拓斗は慌てて俯いた。修平の顔は、怖くて見られない。
「そう。君も相性ばっちりなのか。うわ、まいったなぁ。ごちそうさま」
違う、そうじゃない、と言ってやりたい。別にのろけようとした訳じゃないのだ。変な言い方で質問してくるからつい答えちゃったのだ。
……もう。なんだろ、この人。俺、めちゃくちゃ苦手なタイプかも。
なんだがすごく、調子が狂うのだ。こちらの予測を裏切るような質問や返しをしてくる。どうにもしっくり噛み合わない。
「拓斗は兄貴の他に抱かれた経験ってあるの?もしかして兄貴が初めて…」
「おい。いい加減にしとけ。拓斗が困ってる」
ようやく、修平が遮ってくれた。ちらっと横目で見ると、呆れたような顔をして苦笑している。機嫌が悪いわけではないらしい。
「困ってるの?そうなのか…。俺の質問ってやっぱり変?」
「おまえはある意味コミュ障だからな。社交的で気さくそうに見えて、他人への絡み方が斜め上を行く」
紘海は照れたように微笑んで
「それ、よく言われるんだよね。でも自分じゃさっぱり分からないな」
拓斗は唖然として、紘海の爽やかな笑顔を見つめた。
修平が、紘海には気をつけた方がいいと言っていたのは、こういうことなのか。
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