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トライアングル40

「そういうの、余計な……お世話だからっ」 声が上擦る。震えてしまう。 「勝手に俺に、触るなよ!勝手なこと、言うなっ。知りもしないくせに、勝手に、」 気持ちが昂ってきて、声が高くなる。 涙がじわ…っと滲んできた。 「拓斗、」 「呼び捨てっ、するな!あんたとか、君に、言われたくない!年下だろ!?」 ピシャリと遮ると、紘海は口を噤んだ。 「たしかに俺、振られたけど、セ…セフレっ、かもしれないけど」 ダメだ。涙が零れてくる。 「そんなこと、しょ、初対面みたいな君に、言われたくない。ふざ、ふざけるなよ」 唇を噛み締めてこちらを見ていた紘海が、きゅっと眉を寄せた。 「拓斗……さん、ごめん、俺」 どこかが痛むような顔をして、こちらに1歩近づいた。拓斗はじり…っと後ずさり 「俺と、修平のことは、2人の問題だから。俺がゲイって分かってて、変に触ってきたり、しないでよ。君は、ゲイじゃ、ないだろ?」 「ごめん……なさい」 拓斗は次々溢れてくる涙を、袖でぐいっと拭うと 「簡単に扱うな。バカにするなよ。俺は、男なら誰でもいいって、訳じゃないっ」 「違うっ。違うんだ。そうじゃないけど。……ごめんなさい。傷つけて」 拓斗はもっと叫びそうになるのを、必死に押し殺した。 ダメだ。感情的になり過ぎてる。 これ以上は言うな。 「あんた……じゃないや拓斗さん、見てるとさ、ちょっと辛くなっちゃって。うちの兄貴って、情がない人だからさ。また振り回されてるんじゃないかって、すごく心配になってきて」 拓斗は止まらない涙を袖でぐいぐい拭った。 みっともない。年下の男相手に感情的になり過ぎて、泣いてしまうなんて。 格好悪くて、自分が嫌になる。 「余計なお世話…だけど。俺、あの人の弟だからね。拓斗さん、すごく素直でいい人だし、他に、もっと幸せにしてくれる相手、いるよ」 「そういう決めつけ、やめてよ」 声が掠れてガラガラだ。拓斗はこほっと咳払いした。 「君は弟くんだから、別の目で見てると思うけど。俺は、修平が好きだし、幸せにして欲しいから好きになったんじゃ、ないし」 こちらの言葉に、紘海は目を見開いた。 「君は、恋したことないの?相手に何かして欲しいから、好きになったんじゃないよ。どうしようもなく好きだから、一緒にいたいだけ」 「……じゃあ、相手が自分を大切にしてくれなくてもいいわけ?いっぱい泣かされてもいいの?……俺はやだな。拓斗さんみたいないい人がさ。傷つくって分かってるのに、あんな薄情なやつに必死に尽くしてるの。見てていたたまれない」 拓斗は思わず乾いた笑いを漏らすと 「だったら見なきゃいい。ほっといてよ」

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